自分に責任がない事故ってどうなるの?
どんなに安全運転を心がけて、事故に遭わないように気を付けていても、当て逃げされたり、いきなり走行中に石が飛んできてフロントガラスに傷がついたり、誰かによって自動車に10円キズのようなイタズラをされたり等は、防ぎようがありません。このような、自分に責任のない被害を被った時、自動車保険は使えるのでしょうか?
答えは、「使える」が正解です。自動車保険のうち、車両保険に入っていれば、上記のような被害によって生じた修理費を補償してもらうことができます。
車両保険とは何か
車両保険とは、基本的には、事故によって自動車に損害が生じた場合に、保険金が支払われる保険です。過失割合によっては、相手方の自動車保険の対物賠償保険から修理費用等が補償されることもありますが、相手方の過失割合が100%でなければ、修理費用等の自己負担も生じることになります。しかし、車両保険に加入しておけば、その自己負担についても補償されます。
一般的には、車両保険では、自動車同士の衝突事故や盗難、そして火災や台風等による被害について補償されます。さらに、補償範囲を自損事故や当て逃げ等の被害へ広げることもできます。
この車両保険は、保険料が他の補償に比べて割高であるため、自動車保険の保険料を節約するために、車両保険をつけていないという方も少なくありません。例えば、「あまりお金に余裕がなく、格安の中古車を購入したので、多少自動車が傷ついても構わない、修理しない」という場合なら、車両保険をつける必要性は低いと思います。しかし、新車を購入して、傷つけたとしても、修理しながら長く乗っていきたいと思うのであれば、車両保険の検討の余地はあるといえます。
保険を使うとどうなるか
通常、事故による修理費用等のために自動車保険を使った場合、次回契約更新時に等級は3等級下がることになり、保険料にも影響が生じることになります。それでは飛び石等、自分に責任のない被害を被った時も、その修理費用等に自動車保険を使ったら、3等級下がってしまうのでしょうか?
火災・台風・竜巻・洪水または高潮等の自然災害、飛び石等による窓ガラス破損、飛来・落下物による損傷、落書き・イタズラ被害といった原因で、自分に責任のない被害を自動車が被った時は、従来は「等級据え置き事故」として扱われました。つまり、等級据え置き事故を原因として生じた修理費用等を自動車保険から補償を受けても、等級が下がることはなかったということです。しかし、2012年10月にノンフリート等級別料率制度が改定され、等級据え置き事故の規定がなくなってしまいました(※制度改定の導入時期は、保険会社によって異なります)。
この規定廃止により、火災・台風・竜巻・洪水または高潮等の自然災害、飛び石等による窓ガラス破損、飛来・落下物による損傷、落書き・イタズラ被害といった、契約者にまったく非がない状況でも、自動車保険を使って自動車の修理費用等の補償を受けると、1等級下がってしまうということになります。
また、事故後1年間は事故有係数が適用されるので、無事故の同じ等級よりも割高な保険料を支払うことになります(※なお、当て逃げは、飛び石等の自分に責任のない被害理由にはあたりません。自動車保険を使うと等級が3等級下がる、一般的な事故と同様に扱われることになります。かつ、翌年から3年間、より割引率が低い「事故あり」が適用され、その後3年間無事故であれば、無事故の割引率に戻ります)。
飛び石被害等に遭ってしまったら
飛び石等、自分に責任のない理由で自動車が被害を被った時には、すぐに自動車保険を使うのではなく、自動車保険を利用した場合にどれくらい保険料が増加するかを保険代理店や保険会社のお客さま窓口、担当者に確認することが必要です。そして、次回更新時の保険料増加分以上に修理費用等が掛かるようであれば、自動車保険を使ったほうがよいでしょう。逆に、保険料増加分以下で修理費用等が収まるようであれば、自動車保険を使わずに自費で修理したほうが、保険料負担を増やさずに済むことになります。
制度改定により、従来の等級据え置き事故が含まれ、自動車保険の等級制度は事故を起こした契約者に対して、より厳しい内容へと変化しました。安全運転を心がけて、無事故であることに越したことはありません。しかし、今まで以上に、事故を起こした時に、自動車保険を使った場合の保険料負担分がどれくらいになるのか、修理費用等と比較すると自動車保険から補償を受けたほうがいいのか否か、自分自身でも考えてみるという姿勢はもっておいた方が、賢く自動車保険と付き合うことができるように思います。加入を検討している保険会社または保険代理店に、そのような状況に的確にアドバイスをしてくれる体制があるかどうかをチェックしておきたいですね。
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コラム執筆者プロフィール
キムラ ミキ (キムラ ミキ) マイアドバイザー.jp®登録 - 鳥取県立米子東高等学校卒業後、日本社会事業大学 社会福祉学部 福祉計画学科にて福祉行政を学ぶ。
大学在学中にAFP、社会福祉士を取得。大学卒業後、アフラックでの保険営業を経て、株式会社アゼル(マンションデベロッパー)にてマンション営業、マンション営業企画に携わる。その後FP会社でのスタッフ経験を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。
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コラム監修者プロフィール
山本 俊成 (ヤマモト トシナリ) マイアドバイザー.jp®登録 - ファイナンシャルプランナー。
大学卒業後、株式会社三和銀行(現三菱UFJ銀行)入社。
2003年、外資系生命保険会社入社。
2005年、総合保険代理店株式会社ウィッシュ入社。
2010年、株式会社ファイナンシャル・マネジメント設立。
銀行と保険会社に勤めていた経験を活かし実務的なコンサルティングを行う。
ファイナンシャルプランナー キムラ ミキ
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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