対物賠償保険とは?
物損事故でも賠償金額が高額になることも
対物賠償保険とは、任意の自動車保険における補償の種類のうち、対人賠償保険と並んで重要度が高いとされるものです。一般的な任意の自動車保険商品では、対人賠償保険と対物賠償保険は基本的な契約として加入するように決められています。対物賠償保険からは、自動車事故で他人の財物(自動車、建物など)に損害を与え、法律上の損害賠償責任を負ったときに保険金が支払われます。ちなみに、対物賠償保険は対人賠償保険同様、無免許運転や飲酒運転の場合も補償対象となります。ただし、被害者が配偶者、父母、子の場合は補償対象となりません。
車対車の自動車事故の場合、程度の違いはあっても、お互いの車がそれなりの損傷を被るはずです。双方の車の損害額を計算し、合計したものを過失割合で按分して、賠償金額の負担額を計算する流れになります。その際、自賠責保険は対人賠償のみを補償対象としていますので、車に対する損害賠償には使えません。対物賠償保険が必要だといわれるのはこのためです。
もちろん、このときの賠償金額を現金や預貯金などの手持ちの資産を取り崩すことで支払えるのであれば、対物賠償保険は必要ないといえますが、対人事故における死亡や後遺障害の場合ほどではないにしても、対物事故における高額判決の例をみると、なかなか貯蓄などでは対応しきれない場合もあることが想像できます。
物損事故による高額判決の例としては、近年では平成6年の2億6,135万円というのが最高額となっています。トラックの積荷である呉服や洋服、毛皮などが焼失したことによる損害額のようです。他にも、平成8年には、パチンコ店に大型トラックが突っ込んだことによる損害額が1億3,580万円、最近だと平成23年にトレーラーへの損害額が1億1,798万円などといった高額判決が出されています。
交通事故は想像以上に頻繁に起きている?
当然ながら、このような高額判決が出るような事故に遭遇する確率は非常に低いと思われますが、どんなに確率が低いとはいえ、そのような事故に遭ってしまった人にとっては確率が100%だったのと同じことになりますので、そのような事態に備えておく必要性は誰にでもあると考えることもできます。
したがって、自賠責保険、対人賠償保険、対物賠償保険という自動車保険における基礎的な補償についての考え方をまとめると、法律上、加入が義務づけられている自賠責保険は選択の余地がなく加入するとしても、補償内容は対人賠償のみとなっているうえ、その補償金額は死亡で3,000万円、後遺障害で最高4,000万円と、十分な補償がついているとはいえない状況です。だからこそ、それを補完する任意の自動車保険への加入の必要性は高く、なかでも対人賠償保険は保険金額を「無制限」でつけておくべきだと考えられます。また、自賠責保険や任意保険の対人賠償保険は、いずれも対人賠償のみを対象としているので、対物賠償には対応できません。対物賠償を補償するためには、対物賠償保険が欠かせないわけです。したがって、対物賠償保険も保険金額を「無制限」でつけておくべきだと考えられます。
年間の交通事故件数(平成25年で約63万件)で計算すると、約50秒に1件の割合で事故が起きているというだけでなく、日本の人口約1億2,730万人で計算すると、日本の人口の約202人に1人は1年の間に交通事故に遭うことを意味しているのです。宝くじなどと比較すると、圧倒的に高い確率で交通事故に遭ってしまうことがわかります。人それぞれで価値観は異なりますが、自分の価値観で冷静に万一の備えについて検討することが重要でしょう。
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コラム執筆者プロフィール
菱田 雅生 (ヒシダ マサオ) マイアドバイザー.jp®登録 - 早稲田大学法学部卒業後、大手証券会社を経て独立系ファイナンシャルプランナーに。平成20年、ライフアセットコンサルティング株式会社を設立。
資産運用や住宅ローンなどを中心に、相談業務や原稿執筆、セミナー講師等に従事している。
ファイナンシャルプランナー 菱田 雅生
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