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自転車保険の加入義務化と罰則

自転車保険の加入義務化と罰則のイメージ

更新日:

近年、自転車損害賠償責任保険等への加入を義務付ける自治体が増えてきていることはご存じでしょうか?

このコラムでは、自転車損害賠償責任保険等の加入について、お住まいの自治体は義務化されているのか、どんな保険に加入すれば良いのか、加入しないと罰則はあるのかなどについて、ご紹介します。

どうして義務化されたの?

警察庁「令和5年中の交通事故の発生状況」[1]によると、2023年の自転車関連事故の件数は72,339件です。

また、自転車による歩行者の死亡事故も毎年起きており、重大なケガを負った被害者が経済的な補填を受け取れるように、自転車の運転者に対して高額の損害賠償を命じる判決が出ています。

表1 自転車での加害事故例
※スクロールで表がスライドします。

判決認容額(※) 事故の概要
9,521万円 男子小学生(11歳)が夜間、帰宅途中に自転車で走行中、歩道と車道の区別のない道路において歩行中の女性(62歳)と正面衝突。女性は頭蓋骨骨折等の傷害を負い、意識が戻らない状態となった。(神戸地方裁判所、平成25(2013)年7月4日判決)
9,330万円 男子高校生が夜間、イヤホンで音楽を聞きながら無灯火で自転車を運転中に、パトカーの追跡を受けて逃走し、職務質問中の警察官(25歳)と衝突。警察官は、頭蓋骨骨折等で約2か月後に死亡した。(高松高等裁判所、令和2(2020)年7月22日判決)
9,266万円 男子高校生が昼間、自転車横断帯のかなり手前の歩道から車道を斜めに横断し、対向車線を自転車で直進してきた男性会社員(24歳)と衝突。男性会社員に重大な障害(言語機能の喪失等)が残った。(東京地方裁判所、平成20(2008)年6月5日判決)
6,779万円 男性が夕方、ペットボトルを片手に下り坂をスピードを落とさず走行し交差点に進入、横断歩道を横断中の女性(38歳)と衝突。女性は脳挫傷等で3日後に死亡した。(東京地方裁判所、平成15(2003)年9月30日判決)
5,438万円 男性が昼間、信号表示を無視して高速度で交差点に進入、青信号で横断歩道を横断中の女性(55歳)と衝突。女性は頭蓋内損傷等で11日後に死亡した。(東京地方裁判所、平成19(2007)年4月11日判決)

(※)判決認容額とは、上記裁判における判決文で加害者が支払いを命じられた金額です(金額は概算額)。上記裁判後の上訴等により、加害者が実際に支払う金額とは異なる可能性があります。

出典:(一社)日本損害保険協会「自転車での加害事故例」[2]

高額な損害賠償は加害者にとって大きな負担となりますし、未成年の子どもが加害者の事故もあります。

高額な賠償例を背景に2015年10月に全国で初めて、兵庫県で自転車損害賠償責任保険等の加入を義務化する「自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」の改正を行いました。それ以降、他の自治体にも同じように加入義務化の動きが広がっています。

お住まいの自治体は自転車損害賠償責任保険等の加入を義務化している?

国土交通省によると、2023年4月時点で自転車損害賠償責任保険等の加入を義務としているのは32都府県です。さらに10道県は努力義務が規定されています。残りの5県では条例で制定していませんが、市で加入を推進している自治体もあります。

表2 地方公共団体の条例の制定状況(2023年4月時点)
※スクロールで表がスライドします。

義務化している自治体 宮城県、秋田県、山形県、福島県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県、長野県、新潟県、静岡県、岐阜県、愛知県、三重県、石川県、福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、広島県、香川県、愛媛県、福岡県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県
努力義務としている自治体 北海道、青森県、岩手県、茨城県、富山県、和歌山県、鳥取県、徳島県、高知県、佐賀県
条例で制定していない自治体 岡山県、島根県、山口県、長崎県、沖縄県

資料:国土交通省「自転車損害賠償責任保険等への加入促進について」[3]をもとに作成

加入を義務としている自治体では、自転車利用者に対し自転車事故による損害を補償する保険等に「加入しなければならない」と定めています。他方、努力義務とする自治体では、「加入するよう努めなければならない」となっています。

自転車損害賠償責任保険等を加入義務化とする自治体は、ますます広がっています。

加入しなければならない自転車保険とはどんなもの?

自転車損害賠償責任保険等の加入義務化がある中で、加入しないといけない自転車保険の内容を確認していきましょう。

図 自転車保険の補償内容

図 自転車保険の補償内容のイメージ

(1)加入の義務があるのは他人にケガを負わせた場合の補償

自転車保険の加入が義務付けられているのは、自転車で他人にケガを負わせてしまった場合に損害を補償することができる保険です。つまり、他人のケガ・物に対する損害賠償に対応できる「個人賠償責任保険」に加入すれば加入義務は果たしていると言えます。

個人賠償責任保険は、自動車保険・火災保険・傷害保険の特約、学校によってPTAで加入する保険の賠償責任補償、自転車店などで自転車安全整備士による点検整備(有料)を受けた際に貼ってもらうTSマークに付帯する賠償責任保険など、さまざまな形で加入している場合があります。まずは、既に加入している保険の内容を確認しましょう。

(2)自転車保険の補償内容

一般的な自転車保険には、この個人賠償責任保険が含まれていて、他人にケガをさせた場合の高額な損害賠償の事例を踏まえて保険金額は最大1億円~3億円が多いです。さらに、自転車事故では自分が大きなケガをする場合もありますので、自転車運転者本人のケガ・死亡の補償もセットになっています。

他にも、過失割合や損害額について相手方と話し合いをうまく進めるための示談交渉サービスや、相手への損害賠償請求を弁護士に委任する場合の弁護士費用補償、自転車の故障などにより自力で動けなくなってしまった場合に駆けつけてくれるロードサービスを付帯できる商品もあります。

自転車損害賠償責任保険等の加入を義務化している自治体で罰則はあるの?

自転車保険への加入に違反した場合の罰則があるかというと、義務付けられている自治体でも罰則は定めていません。

自転車は自動車のように番号で管理されておらず、1台ずつ加入の有無を確認して管理するのが難しいことや、自転車事故の補償をする保険は、さまざまな種類があるうえ、加入者が自転車を利用する本人ではなく家族が契約していることもあり、利用者ごとに確認することも難しいためです。

自転車事故のリスクに備えよう

既に述べたとおり、自転車損害賠償責任保険等の加入義務化を実施している自治体でも、加入していなくても罰則はありませんし、お住まいの自治体によっては義務もありません。

しかし、身近な乗り物である自転車も、万一のことがあれば重大な結果を招きかねません。

自転車損害賠償責任保険等の加入義務化が条例で決まっている地域か否かにかかわらず、安全運転を心がけ、自転車を利用する家族全員が自転車事故に備えておきましょう。

出典
  • ※ 掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
  • ※ 掲載日は2023年4月10日です。
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