2020.08.14
労災保険の年金って、どんな種類があるの?
前回は、労災保険は仕事中や通勤中に負った病気やケガ・死亡に対して給付が行われることや、給付が受けられる具体的な事例などをお伝えしました。
今回はそのなかでも「給付される労災年金にはどんな種類があるのか」を、国民年金・厚生年金と比較しながらみていきましょう。
労災年金とは?
労災保険には「傷病(補償)年金」・「障害(補償)年金」・「遺族(補償)年金」の3種類の年金があります。
図1 労災保険で受けられる給付
- 傷病(補償)年金
- 障害(補償)年金
- 遺族(補償)年金
資料:執筆者作成
給付の名称についてですが、業務災害のときには“補償”という言葉が加わり傷病補償年金・障害補償年金・遺族補償年金といいますが、通勤災害のときには“補償”という言葉は付きません。
以下に挙げる年金については“補償”を省略しています。
(1)傷病年金とは?
仕事中や通勤中の病気やケガで療養を開始して1年6カ月が経過した日、またはその日以降に受給要件に該当した場合に受給できます。
受給要件は、その病気やケガが治っていないことと、傷病等級第1級~第3級に該当することです。
なお、傷病年金は国民年金や厚生年金にはない年金です。
(2)障害年金とは?
労災保険では、仕事中や通勤中に病気やケガが起こり、それが治ったあと身体に一定の障がいが残った場合に、その障がいの程度に応じて障害年金または一時金を受給できます。
障がいの程度については障害等級第1級~第14級に分けられ、第1級~第7級に該当するときには年金、第8級~第14級では一時金の受給になります。
一方の障害基礎年金(国民年金)・障害厚生年金(厚生年金)は、保険料の納付要件を満たしていれば、年金の受給に、病気やケガの原因が業務上か否かは問われません。
障害基礎年金・障害厚生年金では、障がいの程度が第1級~第3級に分けられます。
会社員などの方であれば、第1級・第2級に該当したときには障害基礎年金と障害厚生年金の両方、第3級に該当したときは障害厚生年金のみの受給となります。
また、これらの等級に該当しない軽い障がいが残ったときにも、障害手当金(一時金)が受給できます。
労災保険と国民年金・厚生年金の障害年金の等級については別々に設定されているため、例えば同じ「第1級」といっても、障がいの状態が異なることがあります。
年金制度には違いがあることに注意しておきましょう。
表1 年金制度による障害年金の違い
※スクロールで表がスライドします。
資料:厚生労働省「障害(補償)給付の請求手続」ならびに日本年金機構ホームページをもとに執筆者作成
(3)遺族年金とは?
仕事中や通勤中に亡くなった労働者の遺族に対して支給されます。
労災保険の遺族年金の場合、受給資格がある遺族の範囲は、年齢要件などはありますが配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹となります。
年齢などにより権利の順位が定められており、受給の最先順位者が死亡・再婚などで受給権を失うと、その次の順位者が受給権を引き継ぎ受給権者となります。
なお、遺族基礎年金(国民年金)での受給資格がある遺族の範囲は、子のある配偶者と子です。遺族厚生年金(厚生年金)の場合は、配偶者・子・父母・孫・祖父母となります。いずれも年齢要件などが付くことがあります。
受給資格者の範囲はそれぞれが異なりますが、兄弟姉妹が含まれるのは労災保険の遺族年金だけです。
表2 年金制度による遺族年金の受給権利者の違い
※スクロールで表がスライドします。
※受給権利者にはそれぞれに年齢要件などが付く場合があります。
資料:厚生労働省「遺族(補償)給付・葬祭料(葬祭給付)の請求手続」ならびに日本年金機構ホームページをもとに執筆者作成
なお、労災保険と厚生年金の両方から障害(補償)年金や遺族(補償)年金を受給する場合には、厚生年金は全額受給できますが、労災年金は調整されるため全額を受給することができない場合があります。
労災保険の詳細について知りたいときは、厚生労働省のホームページで調べる方法や、労働基準監督署に相談をする方法などがありますので、気になる方は確認してみましょう。
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