2021.01.22
第1号被保険者が亡くなったときの独自給付
国民年金第1号被保険者である個人事業主・自営業の方が亡くなったとき、各種の要件を満たしていれば遺族基礎年金が支給されます。しかしそれ以外にも、国民年金の独自給付が受けられる可能性があることをご存じでしょうか。
今回は、国民年金の独自給付である「寡婦年金」と「死亡一時金」について詳しくご紹介します。
寡婦年金の支給要件・年金額・注意点
寡婦年金とは、夫を亡くした妻に対して支給される年金です。詳しい内容を見てみましょう。
(1)寡婦年金の支給要件と年金額
死亡日の前日において国民年金第1号被保険者(任意加入被保険者を含む)として保険料納付済期間と保険料免除期間を合わせて10年以上ある夫が亡くなったときに、10年以上継続して婚姻関係(事実婚含む)にあり、生計を維持されていた妻が、60歳から65歳になるまで支給を受けることができます。
寡婦年金の年金額は、夫の死亡日前日までの国民年金第1号被保険者(任意加入被保険者を含む)期間から、老齢基礎年金の計算方法により算出した額の4分の3になります。
図1 寡婦年金の年金額
- 「亡くなった夫が受給することができた老齢基礎年金額」×4分の3
資料:執筆者作成
(2)寡婦年金の注意点
寡婦年金は、夫を亡くした妻に支給される年金ですので、妻を亡くした夫などには支給されません。
また、夫を亡くした妻であっても、亡くなった夫や妻本人が下記に該当する場合は請求できないことに気を付けましょう。
図2 寡婦年金を請求できない場合
- 夫が障害基礎年金の受給権を有していた場合
- 夫が老齢基礎年金を受給したことがある場合
- 妻が繰上げ受給の老齢基礎年金を受給している場合
資料:日本年金機構「遺族年金ガイド(令和2年度版)」をもとに執筆者作成
もしご遺族である妻が、遺族基礎年金と寡婦年金、両方の支給要件を満たしている場合、両方を受け取ることはできず、どちらか一方を選択します。
なお、よく似ている「中高齢寡婦加算」という制度もありますが、こちらは遺族厚生年金だけの制度です。混同しやすいので、区別して覚えておきましょう。
死亡一時金の支給要件・金額・注意点
死亡一時金とは、亡くなった方が年金を受給していなかった場合に、ご遺族に支給される一時金です。
(1)死亡一時金の支給要件と金額
国民年金第1号被保険者(任意加入被保険者を含む)として保険料納付済期間と保険料一部免除期間が合わせて36月(3年)以上ある方が、老齢基礎年金・障害基礎年金を受給しないまま亡くなったときに、ご遺族に支給されます。
死亡一時金が支給されるご遺族は、亡くなった方の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順番で、亡くなったときに生計を同一にしていた方が対象になります。
死亡一時金の額は、保険料を支払った月数に応じて12万円~32万円です。
また、亡くなった月の前月までに付加保険料納付済期間が36月(3年)以上ある場合は、下記の表の金額に8,500円が加算されます。
表 死亡一時金の金額
保険料納付済期間の月数 | 死亡一時金の額 |
---|---|
36月以上180月未満 | 120,000円 |
180月以上240月未満 | 145,000円 |
240月以上300月未満 | 170,000円 |
300月以上360月未満 | 220,000円 |
360月以上420月未満 | 270,000円 |
420月以上 | 320,000円 |
資料:日本年金機構「遺族年金ガイド(令和2年度版)」をもとに執筆者作成
(2)死亡一時金の注意点
保険料一部免除期間があった場合、保険料4分の1納付期間は4分の1、半額納付期間は2分の1、4分の3納付期間は4分の3に相当する月数として数えられますので、月数を確認する際には注意してください。
また、遺族基礎年金が支給されるご遺族がいる場合には、死亡一時金の支給を受けることはできません。
そして、死亡一時金は、死亡日の翌日から2年を経過した場合は請求できなくなる点や、寡婦年金と死亡一時金両方の支給要件を満たしている場合でも、どちらか一方を選択することとなる点にも注意しておきましょう。
もしものときに必要な準備を
今回まで3回にわたって国民年金第1号被保険者である個人事業主・自営業の方が亡くなったときのことをご説明しました。
国民年金は、想定外のリスクに備える国の保険ではありますが、遺族基礎年金・国民年金の独自給付のどれにも支給要件があり、生涯にわたって支給されるものではありません。
公的年金の制度を理解した上で、ご遺族に対してどのような準備が必要か、よくご検討されることをおすすめします。
- ※ この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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