医療保険 掛け捨て
「掛け捨て」と聞くとみなさんはどのようなイメージを持ちますか?「掛け捨て=損」と感じる人も多いのではないでしょうか?「掛け捨て」とは支払った保険料が戻ってこないということです。掛け捨ての医療保険とは満期金がなく、途中で解約しても解約返戻金が無いか、あってもごく少額の医療保険のことです。支払った保険料は「それまでの保障を買っていた」ということで役割を果たします。
1.掛け捨ては保険料が安い
では掛け捨ては無駄なのでしょうか?掛け捨ての保険は保険料が安いということが最大のメリットです。割安で病気やケガへの経済的準備をすることができます。医療保険には、「〇年まで」「〇歳まで」という保障期間のある定期タイプと、一生涯保障される終身タイプがあります。定期タイプのほうが保障期間が短い分、終身タイプより保険料は安くなっています。下記の表は医療保険の保険料例です。保障期間別に年齢ごとに並べてみました。
<保険料例> 男性、日額5,000円(60日型)、手術、通院5,000円、先進医療付
掛け捨て 定期タイプ(10年) | 掛け捨て 終身タイプ(終身払い) | |
---|---|---|
20歳 | 1,102円 | 1,727円 |
30歳 | 1,332円 | 2,267円 |
40歳 | 1,757円 | 3,002円 |
50歳 | 2,827円 | 4,172円 |
60歳 | 4,312円 | 5,887円 |
70歳 | 7,122円 | 8,302円 |
2.保険料の累計額を比較してみる
ここで支払う保険料の累計額を考えてみましょう。80歳まで医療保障を付ける場合で上記の表から単純計算してみると、下記の表の通りになります。
<80歳までの保険料の累計>
定期タイプ | 終身タイプ | |
---|---|---|
20歳~80歳まで | 221万4,240円 | 124万3,440円 |
30歳~80歳まで | 208万2,000円 | 136万200円 |
40歳~80歳まで | 192万2,160円 | 144万960円 |
50歳~80歳まで | 171万1,320円 | 150万1,920円 |
60歳~80歳まで | 137万2,080円 | 141万2,880円 |
70歳~80歳まで | 85万4,640円 | 99万6,240円 |
つまりこの金額は、何も給付がなければ戻ってこない金額ということになります。
3.入院時にかかる費用を知っておく
生命保険文化センターの調べで、入院時の自己負担費用のデータがあります。一生のうちに何回入院することになるかはわかりませんが、入院1回当たりにどのくらいの費用がかかるのかというおおよその目安がわかります。
入院時の自己負担費用
- ※治療費・食事代・差額ベッド代等を含む。高額療養費制度を利用した場合は利用後の金額。
- ※集計ベース:過去5年間に入院し、自己負担を支払った人。
以上の点から、医療保険を考えるときには、
- ・病気・ケガによる経済リスクはどれくらいあるのか
- ・費用準備としてどれくらいを医療保険で準備するか
- ・医療保険にかかるコストはどれくらいか
ということがポイントになると思います。
たとえば、
- 「10万円~30万円の医療費支出を何回まで貯蓄で準備できるのか」
- 「50万円の医療費支出を何回まで貯蓄で準備できるのか」
- 「100万円の医療費支出を何回まで貯蓄で準備できるのか」
等をイメージしてみましょう。
その上で、保険料の累計額と照らし合わせて有効な方法を検討してみるのが良いのではないでしょうか。
掛け捨ての医療保険は、コストを少なく抑えて安心を買うことができるのがやはりメリットになると思います。
そのため、保険料と保障のバランスをしっかり考えることが大切ですね。
4.掛け捨て保険のもうひとつの特長
コストでみると、若いうちに定期タイプを選んだ場合、一番保険料の累計額がかさんでしまうため、若いうちは終身保険を選んだほうが保険料累計額は抑えられます。掛け捨てのメリットは「安さ」でしたが、ただ「安さ」だけで保険は決められないものです。
掛け捨てのもうひとつの特長は、解約時のデメリットがないところです。貯蓄性のある保険は、一定期間がたたないうちに解約すると解約返戻金が少なくなってしまい、損をしてしまう可能性があります。その点、掛け捨ての保険はそもそも戻ってくるお金がまったくないか、あっても非常に少ないため、比較的気軽に切り替えることができます。また保険料が安いということは、新しい保険に切り替えるときに、既に支払った保険料が少ないためダメージが少ないということもいえます。
若いうちに健康であれば、この先、保険の見直しを何回か行うことも充分考えられるため、必ずしも終身タイプのほうがいいとは言い切れません。また高齢になるほど定期タイプのほうが保険料の累計額が少なくなっていますが、健康状態によっては割増になったり加入できなくなったりするリスクもあります。
大事なのは、安心できる最適な保障内容の保険であることです。その上で、少しでも自分に合った保険を選んでみることです。掛け捨ての医療保険は「安く」「見直しがし易く」「安心を求められる」という面では有効です。
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コラム執筆者プロフィール
宮一 幸子 (ミヤイチ サチコ) マイアドバイザー.jp®登録 - CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、キャリアコンサルティング技能士2級、DCアドバイザー、住宅ローンアドバイザー。
3歳と0歳の子育てと保険会社勤務をしながらファイナンシャルプランナー取得。
1998年独立。以来ファイナンシャルプランナーとしての仕事を続けてきました。
人とのつながりの上の自分があることを忘れずに出会いを大切に仕事をしていきたいと思っています。
ファイナンシャルプランナー 宮一 幸子
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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