20代~30代前半の医療保険 支払った保険料が戻る保険について
はじめに
このコラムでは、20代~30代前半の世代に適した医療保障について、いくつかの医療保険を参考にみていきます。今回は、支払った保険料が戻る終身タイプの医療保険2商品と掛け捨ての終身医療保険1商品を参考にしました。
支払った保険料が戻る(以下:還付)終身タイプの医療保険は、契約年齢によって保険料払込期間と還付時期が決まっている商品(以下:A保険)と保険料の払い込みは終身で契約年齢によって還付時期が決まっている商品(以下:B保険)になります。掛け捨ての商品は(以下:C保険)とします。
まずは、各保険の特徴について、もう少し詳しくみていきます。
A保険について
A保険は、契約年齢によって保険料払込期間と還付時期が決まっています。
例えば、20歳~30歳の方ですと保険料払込期間が60歳満了、還付時期が60歳になります。31歳~40歳ですと、それぞれ65歳満了、還付時期が65歳になります。契約年齢が上がるほど保険料払込期間の歳満了、還付時期も遅くなります。
保険期間5年ごとに、5日以上の継続入院が無い等の要件を満たすと「健康祝金」が受け取れます。また、死亡保険金の設定があります。1入院支払限度日数は60日です。
還付金を式で表しますと、
「還付金=払込保険料相当額-入院・手術給付金(お受け取りがあった場合)-健康祝金」となります。
*保険料払込期間(還付時期)以降に入院・手術給付金を受け取った場合は、払込保険相当額より受取金額が多くなります。
B保険について
B保険の契約年齢は、0歳~60歳です。還付時期は契約年齢により70歳、75歳、80歳に分かれます。A保険のような健康祝金はありません。1入院支払限度日数は60日です。
還付金を式で表しますと、
「還付金=払込保険料相当額-入院・手術・放射線治療給付金(お受け取りがあった場合)」となります。
*保険料は終身払のため、還付時期以降も保険料の支払いが発生します(特約を付加しない場合には、前納もできます)。
死亡した場合は、解約返戻金と同額の返戻金の支払いになります。
C保険について
掛け捨ての終身タイプの医療保険になります。保険料の支払いは、60歳払済と終身払などのタイプが用意されています。死亡した場合は、解約返戻金と同額の返戻金の支払いになります。1入院支払限度日数は基本60日ですが、七大生活習慣病の場合は120日、三大疾病(がん・心疾患・脳血管疾患)の場合は無制限になります。また、基本プランに先進医療給付金が含まれています。
3つの保険を比較してみます
それでは、3つの商品の保険料をベースにしながら比較していきます。
入院給付金等の支払いがなかった場合の、トータル保険料・還付金・差引保険料を計算したのが、<表1>になります。比較する条件は以下のとおりです。
- 男性30歳/入院給付金日額10,000円/主契約または基本プランのみ
- 比較の時期は30歳時の平均余命の50.69年にあわせた、81歳時
<B保険、C保険(終身払)の保険料払込月数51年(81歳-30歳=51歳)> - 還付受取年齢はA保険60歳(5年ごと健康祝金あり)、B保険70歳
*差引保険料については、A保険の死亡保険金、B保険、C保険の返戻金は考慮せず。
表1 保険料と還付金について
資料:各保険のホームページをもとに執筆者作成
月額保険料で比較しますと、A保険は、C保険終身払(以下:C保険終身)に比べて約6.3倍(約19,000÷約3,000円)、C保険60歳払済(以下:C保険60歳)、B保険に比べても約3.8倍(約19,000円÷約5,000円)と割高になります。
しかし、トータルの保険料から還付金を引いた差引保険料の部分でみた場合は、B保険(約660,000円)、C保険終身(約1,840,000円)、C保険 60歳(1,800,000円)になりますが、A保険の差引保険料は、満60歳で(0円)となります。また、A保険の場合、60歳以降の入院・手術給付金や死亡保険金をプラスしますと、支払った保険料より多く給付金等を受け取ることになります。
以上、3つの保険を単純に差引保険料で比べた場合、A保険が最も魅力的に思えます。
期間と利回りを考慮してみる
次にA保険とC保険60歳の期間と利回りを考慮してみてみます。
仮に、払済年齢が同じA保険の月額保険料(約19,000円)とC保険60歳(約5,000円)の差額を積み立てにより複利運用した場合を考えてみましょう。
A保険とC保険60歳の月額保険料の差は、約14,000円(約19,000円-約5,000円)になります。年間で計算しますと、約16.8万円(約14,000×12カ月)になります。これを年1%、1.5%、2%、3%でそれぞれ10年、20年、30年と複利運用した場合の金額が<表2>の金額になります。計算式は、「16.8万円×年金終価係数=将来の総積立額」です。使用した年金終価係数の値は<表3>です。
表2 将来の総積立額推移
1% | 1.5% | 2% | 3% | |
---|---|---|---|---|
10年 | 約176万円 | 約180万円 | 約184万円 | 約193万円 |
20年 | 約370万円 | 約388万円 | 約408万円 | 約451万円 |
30年 | 約584万円 | 約631万円 | 約682万円 | 約799万円 |
資料:執筆者作成
表3 年金終価係数表
1% | 1.5% | 2% | 3% | |
---|---|---|---|---|
10年 | 10.4622 | 10.7027 | 10.9497 | 11.4639 |
20年 | 22.0190 | 23.1237 | 24.2974 | 26.8704 |
30年 | 34.7849 | 37.5387 | 40.5681 | 47.5754 |
資料:年金終価係数表をもとに執筆者作成
B保険とA保険、C終身とA保険の保険料の差額分を積立で運用した場合、30年(60歳)間の積立額は<表3>の係数を使うと求めることができます。
まとめ
既に支払った保険料が、一定期間後に還付されるA保険やB保険は、保障を受けながら保険料を資産として積み立てる保険と考えることができるかと思います。
また、<表2>のA保険とC保険の保険料差額分を積立運用して資産形成を図る方法も、1つの考え方かと思います。
20代~30代前半は、本人やご家族に様々なライフイベントが発生する時期だと思います。将来のライフイベントの時期や資金も考えて、「還付金で選ぶのか」「お金の自由度を重視するのか」について、慎重に検討してみてはいかがでしょうか。
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コラム執筆者プロフィール
恩田 雅之 (オンダ マサユキ) マイアドバイザー.jp®登録 - 1959年東京生まれ。
2004年3月にCFP®資格を取得。
同年6月、札幌にて「オンダFP事務所」を開業。
資産運用をテーマとした個人向けのセミナー講師や3級、2級ファイナンシャル・プランニング技能士取得の講師やライフプラン、金融保険関連のコラムやブログの執筆など中心に活動中。
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コラム監修者プロフィール
山本 俊成 (ヤマモト トシナリ) マイアドバイザー.jp®登録 - ファイナンシャルプランナー。
大学卒業後、株式会社三和銀行(現三菱UFJ銀行)入社。
2003年、外資系生命保険会社入社。
2005年、総合保険代理店株式会社ウィッシュ入社。
2010年、株式会社ファイナンシャル・マネジメント設立。
銀行と保険会社に勤めていた経験を活かし実務的なコンサルティングを行う。
ファイナンシャルプランナー 恩田 雅之
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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