医療保険の必要性
現在、生命保険、損害保険各社から多くの医療保険が発売されています。商品選択に悩む方も多いですが、そもそも医療保険に加入する必要はあるのでしょうか?まずは公的な制度を理解した上で医療保険の必要性を考えてみましょう。
1.高額療養費制度
「高額療養費制度」とは、1カ月に支払った医療費の自己負担額が、収入に応じて決められた一定額を超えた場合、その超えた分が高額療養費として還付される制度です。さらに、平成19年からは、加入する医療保険から事前に「所得区分」の認定証を発行してもらうことにより、医療機関の窓口での支払いが自己負担限度額までで済むようになり、支払いのために多額の現金を用意する負担も軽減されました。
一般的な所得の場合は、以下で計算した額が自己負担限度額になります。
1人1カ月の自己負担額:『80,100円+(医療費総額-267,000円)×1%』
例えば、この式の医療費総額に100万円を入れて計算してみると87,430円となり、医療費の支払いが大きな負担になることは少ないのがわかります。ただし、個室料や差額ベッド代、食事代および先進医療等保険外の費用は対象外ですので注意が必要です。
2.付加給付
付加給付とは、健康保険組合などが、上記の高額療養費の自己負担額にさらに上乗せをして費用を払い戻す制度です。自己負担限度額が2万円などと決められている場合が多く、自己負担額がこの金額を超えた部分は、後で還付されます。会社から支給される福利厚生ハンドブックに掲載されていることが多いので、確認するようにしましょう。なお、国民健康保険に加入する自営業の方にこの制度はありません。
3.傷病手当金
傷病手当金とは、業務以外の理由により病気やケガの療養のため休業した場合、最長1年6カ月の間、標準報酬日額(月給や諸手当等を1日あたりで計算した額)の3分の2に相当する額が支給されます。自営業の方が加入する国民健康保険では任意給付となっており、実際に実施している市町村はほとんどないようです。
4.社会保障制度
現在の日本の社会保障制度は、1.~3.のように諸外国に比べ充実した制度になっています。しかし、少子高齢化が加速的に進んでいるこの国では、現在の制度が維持できるかどうかには疑問を持たざるを得ないのが現状です。現在は、健康保険証を提示すれば医療費の3割負担で済みますが、財政状況が悪化すれば負担割合が増す可能性もゼロではありません。
5.考え方
民間の医療保険は公的な制度の上乗せ保障という位置づけになりますし、万一のとき貯蓄を取り崩しても良いと考える方は、医療保険への加入の必要性は低いでしょう。しかし、公的制度の保障だけでは心もとないと考える方は、医療保険へ加入したほうが安心でしょう。自営業の方は、公的な保障が手薄ですし、仕事を休めば収入が下がりますので、医療保険の必要性は高いと思われます。
6.まとめ
医療保険の必要性を一律に線引きすることはできませんので、働き方やお勤め先の保障および預貯金の状況等を鑑みて、加入を検討するようにしましょう。
私が相談対応をしている中で感じる傾向をお伝えすると、自営業や預貯金が少なめの方は医療保険に加入し、お勤めの方で福利厚生制度が充実し、預貯金も潤沢にある方は加入しない選択をされる方が多いです。全体的な傾向としては、医療保険に加入し、より安心したいという方が圧倒的に多いように思います。商品選択の前に医療保険の必要性について時間をつくって考えてみるようにしましょう。
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コラム執筆者プロフィール
長谷 剛史 (ハセ タケシ) マイアドバイザー.jp®登録 - 学校法人・会計事務所勤務を経て2007年1月、大阪府堺市に独立系FP事務所を開業。
ファイナンシャルプランナーはお金の専門家ではありますが、幸せな家庭を作る専門家でありたいと常々思っています。
住宅・資産運用・保険の3つの分野に強いファイナンシャルプランナーとして、ライフプランを基本とした個別相談・講演・執筆等の活動を行っています。
ファイナンシャルプランナー 長谷 剛史
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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