専業主婦(主夫)に生命保険は必要?入院・死亡時に必要な費用とは?
専業主婦(主夫)に生命保険は不要、という考えもあるようですが、本当でしょうか。
このコラムでは、専業主婦(主夫)に入院や死亡など万一のことがあった場合、家計にどのような影響があるのか、どのようにカバーすると良いかを解説します。
このページの目次
1 多くの専業主婦が生命保険に加入している
専業主婦の生命保険加入率は74.2%
生命保険に加入している専業主婦(主夫)の方はどれくらいの割合でしょうか。
世帯主が女性の家庭の夫を「専業主夫」と想定したデータはないため、世帯主が男性の家庭の妻を「専業主婦」と想定したデータをみてみましょう。
図1 専業主婦(無職)の生命保険加入率
※民保(かんぽ生命含む)、簡保・JA・共済のいずれかに加入している人の割合
資料:(公財)生命保険文化センター「平成30年度 生命保険に関する全国実態調査」をもとに作成
図1は、世帯主が男性で妻が無職の家庭の、妻の生命保険加入率をグラフにしたものです。
専業主婦(無職)の生命保険加入率は74.2%となっています。
収入のない専業主婦(主夫)には、例えば死亡保険金が数千万円にも及ぶ死亡保険は必要ではないかもしれませんが、万一の事態に備えられる医療保険などの生命保険に加入しておくことをおすすめします。
生命保険の必要性は家計への影響で考える
多くの人が生命保険に加入しているからといって、誰もが加入する必要があるわけではありません。
生命保険が必要かどうかは、入院や死亡など、万一のことがあった場合の「家計への影響」で判断しましょう。家計に影響が出るのであれば、生命保険への加入をおすすめします。
例えば、働き盛りの父親と、専業主婦の母親、未就学児の子、という構成の家庭であれば、父親に万一のことがあった場合に家計への影響が大きいと考えられるため、父親は死亡保険金を高額に設定した死亡保険に加入すると良いでしょう。
このように考えると、専業主婦(主夫)に万一のことがあっても、家計への影響は少ないため生命保険は必要ない、と思う方もいるかもしれません。しかし、専業主婦(主夫)に入院や死亡など万一のことがあった場合、家計に予期せぬ影響が生じるのです。
2 専業主婦(主夫)が入院・死亡した際の家計への影響
専業主婦(主夫)に入院や死亡など万一のことがあった場合、家計にどのような影響があると考えられるでしょうか。
入院費用がかかる
病気やケガなどで入院するとなると、当然のことながら入院費用がかかります。一体、入院費用はどれくらいかかるのでしょうか。
図2 入院時の1日あたりの自己負担費用と入院日数
資料:(公財)生命保険文化センター「令和元年度 生活保障に関する調査」をもとに作成
図2は、過去5年間に入院した方の、直近の入院時のデータです。
入院時の1日あたりの自己負担費用は平均23,300円となっています。
この金額には、食事代、差額ベッド代、交通費(見舞いに来る家族の交通費も含む)、衣類、日用品など、治療費以外にかかる費用を含んでいます。また、高額療養費制度を利用した場合は、利用後の金額となっています。
つまり、かなり現実的な「財布から出ていく金額」だということができるでしょう。
では、入院日数はどうでしょうか。入院が長引けば、かなりの負担となることが想定されますね。
入院日数は平均15.7日という結果が出ています。
重篤なケガや病気であれば、入院が長期にわたることもある、と考えておいた方が良いでしょう。
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専業主婦(主夫)の不在を埋める費用がかかる
図3 専業主婦(主夫)の不在を誰が埋めるのか
専業主婦(主夫)に入院や死亡など万一のことがあった場合、その人が担っていた家事や育児などの仕事を家庭内の誰かが行うことになるでしょう。
しかし、仕事の都合などにより、家庭内で対応できないこともあるかと思います。その場合、外食やクリーニング、一時預かりやベビーシッター、家事代行サービスの利用など、専業主婦(主夫)の不在を埋める費用が必要となります。
例えば、急な入院で子どもの面倒を見られる人がいない場合、一時預かりやファミリー・サポート・センター事業(ファミサポ)、ベビーシッターの利用を検討することになるでしょう。
一時預かりとは、保護者が労働や傷病などの理由により家庭で保育ができない場合、保育園などで一時的に子どもを預かる制度です。
料金は、時間で決まっているところや、日額で決まっているところなど、市区町村によって異なります。
例えば、東京都千代田区は、4時間までは1時間あたり500円、4時間を超えた場合は1時間あたり800円です。大阪市は、子どもの年齢によって異なりますが、3歳以上だと平日(月曜日~土曜日)は日額1,200円、休日(日曜日、祝日)は日額1,600円で利用できます。
利用にあたり事前登録や予約が必要な場合が多く、また、施設によって受け入れ可能人数、利用できる年齢が異なるため、利用前に確認しておきましょう。
ファミリー・サポート・センター事業(ファミサポ)とは、育児の援助を受けたい方(依頼会員)と、育児の援助を行いたい方(提供会員)が相互援助を行う組織です。
基本料金は1時間あたり600円~800円程度です。時間外や土日祝に関しては金額が異なります。
しかし、会員登録や、依頼会員・提供会員の事前打ち合わせが必要であること、依頼会員に対して提供会員の会員数が少ないことなどから、急遽子どもを預ける必要が生じた場合に必ず利用できるとは限らないのが実情です。
一時預かりやファミサポが利用できない場合には、ベビーシッターの利用を考えなくてはいけないでしょう。
利用するサービスによっても異なりますが、基本料金が1時間あたり2,000円以下のところもあれば、基本料金が1時間あたり3,000円を超えるところや、入会金や月会費がかかるところもあります。
家事代行サービスは、1時間あたり2,000円程度のところもあれば、1時間あたり5,000円以上かかるところもあり、ベビーシッターと同様に、利用するサービスによってさまざまです。
世帯収入が減る可能性がある
専業主婦(主夫)に入院や死亡など万一のことがあっても世帯収入への影響は少ない、と考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、専業主婦(主夫)でも扶養の範囲内でパートタイム労働やアルバイトをしている方もいます。
また、家事や育児などを専業主婦(主夫)が一手に担っているという家庭は、外食やクリーニング、一時預かりやベビーシッターの利用など、専業主婦(主夫)の不在を埋める費用がかかることや、家計の担い手が働き方を変えざるを得なくなることもあるでしょう。
そのため、専業主婦(主夫)に万一のことがあった場合、世帯収入が減ってしまう可能性があります。
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葬儀などでまとまったお金がかかる
図4 葬儀費用の平均金額および墓石購入価格の平均金額
※地域によっては、墓地使用料が含まれている場合があります。
資料:(一財)日本消費者協会「第11回 葬儀についてのアンケート調査」および(一社)全国優良石材店の会「2019年お墓購入者アンケート調査」をもとに作成
(一財)日本消費者協会「第11回 葬儀についてのアンケート調査」によると、葬儀費用の平均金額は195.7万円です。
昨今は安価な葬儀も増えていますが、一般的な葬儀には、やはりお金がかかってしまいます。
また、先祖代々のお墓がない場合は、新たにお墓を建てる必要もあるでしょう。(一社)全国優良石材店の会「2019年お墓購入者アンケート調査」によると、お墓購入価格の平均金額は160.7万円です。
葬儀費用、お墓購入費用はかなり大きな出費となることを認識しておく必要があります。
3 専業主婦(主夫)が加入を検討すると良い保険
では、家計を圧迫する事態を防ぐためには、どのような保険に入っておくと良いのでしょうか。
(1)医療保険
入院の際の負担はかなりのものになると考えられます。
仮に入院費用が貯蓄でまかなえたとしても、専業主婦(主夫)の不在を埋めるために出費がかさむことを考えると、医療保険には加入しておくと良いでしょう。
医療保険は、病気やケガで入院・手術をした際に受け取れる「入院給付金」「手術給付金」が設定されていることが一般的です。
また、女性の方は医療保険に女性疾病特約を追加したり、医療保険の代わりに女性保険に加入したりするのもおすすめです。
女性疾病特約や女性保険とは、通常の医療保険に加えて女性特有の病気やがんへの保障が手厚く設定されているものです。
一般的にがんは年齢が上がるごとに罹患率が高まりますが、子宮頸がんや乳がんといった女性特有のがんは早くに発症する方が多く、高齢になると発症率が下がっていく傾向にあります。
女性保険のなかには、女性特有のものに限らず、がん全般も保障の対象としている商品もあります。必要に応じて加入を検討しましょう。
なお、(公財)生命保険文化センター「平成30年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、専業主婦(無職)の疾病入院給付金の平均額は7,860円となっていますので、参考にしてみてください。
(2)がん保険
日本人の死因第1位はがんです。国立研究開発法人国立がん研究センター「がん情報サービス がん登録・統計」2015年全国推計値データによると、日本人が生涯でがんに罹患する確率は女性で48%、男性で63%にも上ります。2人に1人が罹患すると考えるとかなりの確率ですよね。
医療保険ではがんに対応できないのかと考える方もいるかもしれませんが、一度罹患すると長期にわたって治療が必要になる可能性のあるがんに特化した保険は、医療保険とは保障内容が異なります。
表1 一般的ながん保険と医療保険の違い
※スクロールで表がスライドします。
- ※特約を付けない一般的な医療保険と比較しています。
医療保険では、入院給付金が支払われる入院日数に上限が設けられているのに対して、がん保険では無制限であることが多くなっています。また、医療保険と違い、がん保険は、がんと診断されると給付金が受け取れる商品もあります。
がんだと診断されたとき、この先自分がどうなってしまうのか大変な不安を感じることでしょう。その際、診断された段階でまとまった保険金が支払われるがん保険に加入しておけば、家計的にも、心理的にも、随分楽になるはずです。
(3)死亡保険
死亡保険が必要であるかは、家庭の貯蓄額に応じて判断すると良いでしょう。
では、専業主婦(主夫)は、普通死亡保険金をどれくらいの金額に設定しているのでしょうか。
世帯主が女性の家庭の夫を「専業主夫」と想定したデータはないため、世帯主が男性の家庭の妻を「専業主婦」と想定したデータをみてみましょう。
図5 専業主婦(無職)の普通死亡保険金額
資料:(公財)生命保険文化センター「平成30年度 生命保険に関する全国実態調査」をもとに作成
図5は、世帯主が男性で妻が無職の家庭の、妻の普通死亡保険金の調査結果から、「その他」の回答を除いて集計したものです。
最も多いのは「200万~500万円未満」で32.5%となっています。
特別な事情がなければ、葬儀費用約200万円に加えて、専業主婦(主夫)の不在を埋める当面の資金があれば十分だと考えられます。最も多くの方が設定している200万~500万円という金額は妥当なものだといえるのではないでしょうか。
「子どもがまだ目を離せないほど小さい」「要介護者がいる」など、専業主婦(主夫)の不在を埋める費用がかさんだり、家計の担い手が働き方を変える必要があったりする家庭は、それに応じた保険金額を設定するようにしましょう。
なお、18歳以下の子どもがいる家庭では、遺族年金の受給対象となる可能性があるため、あらかじめ調べておくことをおすすめします。
4 遺族年金が受給できるか確認しておこう
子どもがいる家庭では、母親または父親が亡くなった場合、遺された配偶者に遺族年金が受給できる可能性があります。
かつて遺族年金は母子家庭のみに支給されるものでしたが、2014年から、父子家庭にも支給されるように制度変更がなされました。
遺族年金には遺族基礎年金と遺族厚生年金がありますが、遺族厚生年金は死亡者が働いていた年数と収入によって決定されるため、専業主婦(主夫)の死亡によって受給できる可能性があるのは基本的に遺族基礎年金のみだと考えられます。
それでは、遺族基礎年金の受給要件を確認してみましょう。
表2 遺族基礎年金の受給要件・対象者・年金額
受給要件 |
国民年金の被保険者または老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上ある者が死亡したとき(ただし、死亡した者の保険料納付済期間が保険料免除期間を含んで加入期間の3分の2以上あること)。 ※2026年4月1日前の場合は死亡日に65歳未満であれば、死亡日の属する月の前々月までの1年間の保険料を納付しなければならない期間のうちに、保険料の滞納がなければ受けられます。 |
---|---|
対象者 |
死亡した者によって生計を維持されていた、子のある配偶者または子 「子」とは次の者に限る
|
年金額 (2020年 4月分から) |
781,700円+子の加算 子の加算 ※子が遺族基礎年金を受給する場合の加算は第2子以降について行い、子1人あたりの年金額は、上記による年金額を子どもの数で除した額。 |
資料:日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)をもとに作成
「死亡した者によって生計を維持されていた」とは、原則として以下の要件を満たす場合をいいます。
- 死亡した者と同居していたこと(別居していても、仕送りをしている、健康保険の扶養親族である等の事項があれば認められます)。
- 前年の収入が850万円未満であること。または、所得が655万5,000円未満であること。
基本額781,700円に、子の加算額を合わせた金額が支給される仕組みです。子どもが1人の場合には年間1,006,600円、2人の場合には年間1,231,500円、3人の場合には年間1,306,500円が支給されます。
年間これだけの支給があれば、かなり心強い家計の支えになってくれそうですね。専業主婦(主夫)の不在を補う費用としても、十分にあると考えられます。
ただし、子どもが18歳到達年度の末日(3月31日)を過ぎると、遺族基礎年金は受給できなくなります(子どもが障害等級1級または2級の場合は、19歳まで支給が延長されます)。
また、遺族基礎年金の支給対象であったとしても、亡くなった後すぐに支給されるわけではなく、請求手続きが必要となり、初回の支給までおよそ2~3カ月かかります。葬儀費用など、亡くなった直後に必要となる大きな出費には充てられないことを把握しておきましょう。
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5 まとめ
専業主婦(無職)の74.2%が生命保険に加入しており、多くの方が、専業主婦(主夫)にも生命保険は必要だと判断しているようです。
専業主婦(主夫)は家庭内で大きな役割を果たしており、家族の生活を支えています。
専業主婦(主夫)に入院や死亡など万一のことがあった場合、入院費用や葬儀費用だけでなく、家庭の状況に応じてその不在を埋める費用が必要となります。
また、家計を担っている配偶者が働き方を変える必要が発生し、世帯所得が減ってしまう可能性もあります。
専業主婦(主夫)に万一のことがあった場合は家計に影響があるものと考えて、事前に備えておくようにしましょう。
生命保険は、そのような事態に家計の助けとなる手段のひとつです。特に、入院時の心強い味方となる医療保険や、日本人の2人に1人が罹患するというがんになった際にサポートしてくれるがん保険、女性特有の病気に対応できる女性保険がおすすめです。
また、死亡保険は必要に応じて、葬儀代+αの保険金が受け取れるものを選んでおくと良いでしょう。
- ※ 掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
- ※ 掲載日は2020年4月23日です。
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