リタイア準備-「60歳既婚者」の場合
はじめに
このコラムでは、リタイア準備期間に入り始める51歳からリタイア開始の65歳までの方の生命保険の活用法を<表1>のタイプ別に検討しています。前回までは、51歳既婚者のA~Dまでのタイプに対して、それぞれみてきました。今回は、51歳の既婚者に比べて多様性が少ないと考え「60歳既婚者(夫婦、子ども(1人)は独立(社会人)、孫1人」のFタイプを中心に、Eタイプ、Gタイプも併せてみていきます。
家族構成のタイプ
51~60歳までの方をタイプA~Iに分けたものが<表1>になります。
大分類 | 小分類 | タイプ |
---|---|---|
51歳既婚者 (夫51歳、妻45歳) 収入の8割が夫の給与 |
夫婦、10歳の子ども1人 | A |
夫婦、20歳(大学生)の子ども1人 | B | |
夫婦、子ども(1人)は独立(社会人) | C | |
夫婦、子どもなし | D | |
60歳既婚者 (夫婦とも60歳) 収入の8割が夫の給与 |
夫婦、子どもは独立 | E |
夫婦、子どもは独立、孫1人 | F | |
夫婦、子どもなし | G | |
51歳独身 | 51歳独身 | H |
60歳独身 | 60歳独身 | I |
資料:執筆者作成
60歳既婚者 3タイプ<E,F,G>の今後
<表2>は、登場人物が一番多い<タイプF>の今後になります。子の下の「妻」は、子の配偶者になります。
タイプFの検討事項として、
- 現在加入している生命保険の見直し
- 葬儀費用等の確保
- 子どもの妻や孫への資金援助と相続方法
の3点に焦点を合わせみていきます。
これからの生命保険の見直しと追加加入について
1.現在加入している生命保険の見直しのポイントは、現在の保障に合った保険金額を算出し、保険料を安くすることになります。夫婦で満額の年金が受け取れるまで11年間あります。また、夫65歳以降妻が65歳になるまでの6年間は収入減が見込まれます。預貯金や退職金を取り崩す生活をする前に、保険の見直しにより浮いた保険料を生活費に充てることを考えてみましょう。
夫の健康状態が良く、新たに生命保険に加入できるのであれば、掛け金の安い定期保険に加入し直すのも一案です。終身保険に加入している場合は、定期部分の見直しを行うことで保険料を抑える方法や、解約することによって解約返戻金を受け取り、リタイア後の現金資産を増やすことも検討してみましょう。
2.葬儀費用等を確保するためには、掛け捨ての定期保険や少額短期保険の1年更新型死亡保障保険に加入するのも1つの方法になります。
2009年にメモリアルアートの大野屋が「葬儀に関するアンケート調査」(関東地方の312名(40~60代の)に対して実施)をしています。葬儀費用は、<表3>のように100万円~300万円を目安している方が多いのがわかります。夫婦で葬儀の相談をされる時の参考にされては、いかがでしょうか。
50万円未満 | 5.5% |
50万円以上~100万円未満 | 14.8% |
---|---|
100万円以上~200万円未満 | 21.9% |
200万円以上~300万円未満 | 21.1% |
300万円以上 | 10.9% |
わからない | 25.8% |
資料:メモリアルアートの大野屋「葬儀に関するアンケート調査」をもとに執筆者作成
3.子どもの妻や孫は、夫や妻の法定相続人ではありません。法定相続による遺産分割では、遺産を相続する権利がありません。遺言書を用意することにより遺産相続をさせることは可能ですが、より確実な方法として生命保険を活用する方法があります。生命保険の受取人を複数人記載して保険金を分ける方法や、子どもの妻や孫を保険金受取人とする生命保険に加入することで確実に保険金を受け取れるようになります。
但し、法定相続人ではありませんので、相続時の非課税枠(500万円×法定相続人の数)の活用はできません。ここまで、<タイプF>について考えてきました。
ここからは、<タイプE><タイプG>について上記1.2.の項目を考えてみます。
1.の保険の見直しは、両タイプとも必要になります。
<タイプE>は、子どもの結婚や住宅資金への援助等を考慮した保険金の見直しになります。
<タイプG>は、リタイア後の生活を豊かにする資金を作るための保険金の見直しになります。<タイプE>に比べると保険金額は、子どもへの援助がない分、保険金額を減らすことができると思います。また、保険金額を考える時には、夫婦それぞれの年金支給額を確認し、妻の年金支給額が少ないようでしたら、その部分を夫の保険金でカバーすることも考えておきましょう。
2.の葬儀費用については、<タイプE>と<タイプG>では、墓所選び、埋葬方法等により異なるかと思います。<タイプG>は、合同墓を選択することで葬儀費用全般を抑えることを検討してもよろしいでしょう。
<タイプE>も子どもに負担を掛けないように、合同墓を選択することも一案です。
最後に
今回は、<E、F、G>3タイプの「60歳既婚者」についてみてきました。
60歳になりますと50代に比べて、子どもや妻に対する必要保障額は、かなり減少すると思われます。万一の時の備えよりも、可能であればリタイア後の資金確保に焦点をあてた保険の見直しを行いましょう。
次回は、「51歳独身者」、「60歳独身者」の生命保険の活用法についてみていきます。
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コラム執筆者プロフィール
恩田 雅之 (オンダ マサユキ) マイアドバイザー.jp®登録 - 1959年東京生まれ。
2004年3月にCFP®資格を取得。
同年6月、札幌にて「オンダFP事務所」を開業。
資産運用をテーマとした個人向けのセミナー講師や3級、2級ファイナンシャル・プランニング技能士取得の講師やライフプラン、金融保険関連のコラムやブログの執筆など中心に活動中。
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コラム監修者プロフィール
山本 俊成 (ヤマモト トシナリ) マイアドバイザー.jp®登録 - ファイナンシャルプランナー。
大学卒業後、株式会社三和銀行(現三菱UFJ銀行)入社。
2003年、外資系生命保険会社入社。
2005年、総合保険代理店株式会社ウィッシュ入社。
2010年、株式会社ファイナンシャル・マネジメント設立。
銀行と保険会社に勤めていた経験を活かし実務的なコンサルティングを行う。
ファイナンシャルプランナー 恩田 雅之
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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