働き世代が生前給付型保障を大いに活用して、楽しく安心に生きるには②
前回のコラムでは、「生きるために保険を使う」という考えで加入する生前給付型保障の種類と、ニーズの高まりについてお伝えしました。今回はその続きとして、30代から50代の働き盛りの男女が、生前給付型保障を選ぶ場合に考えるべき点と、生前給付型の保険に加入する場合に保障される保険金の金額をいくらで設定したらいいのか、また、特約はどのように選ぶべきかについて、メリットとデメリットを押さえたうえで、ライフスタイルから考えてみましょう。
楽しく生きるための保険としてメリットとデメリットを把握したうえで活用する
生前給付型保障のメリットは、生きている間に保険金を受け取ることができ、それを病気にかかった本人の治療費や、本人と家族の生活費に使うことができるという点です。
では、生前給付型保障の保険金をいくらで設定するのがいいのかを考えるうえで、知っておくべき知識をお伝えします。
- ①働けない期間の保障を考慮する
- 病気にかかり、仕事を休まなければならない期間の公的な保障は、病気にかかった本人の働き方によってそれぞれ違いますので、まず確認しましょう。
- 病気にかかった人が厚生年金加入の会社員である場合は、会社の健康保険組合、もしくは、全国健康保険協会(協会けんぽ)の健康保険に加入しています。その場合、休業中に傷病手当金が支給されます。傷病手当金とは、病気やケガで仕事を休み、会社から給料が支払われない場合に支給されるものです。支給される傷病手当金は、標準報酬月額(簡単に計算する場合は毎月の給与額)の3分の2に相当する額です。4日以上連続して休んだ場合に、4日目以降の休業期間で、かつ、1年6ヶ月間を上限として支給されます。
- ②治療にどれくらいの期間がかかるのか
- 病気にかかった場合の治療期間がどれくらいなのかを把握しておかないと、病気になった後にどれくらい仕事ができないかの目安がわかりません。昨今は、病気での治療は、入院から通院へと治療方針が変化しています。三大疾病の平均入院日数をみてみると、がんでは、胃がん22.6日、肺がん21.7日、心疾患は21.9日、脳血管疾患は93.0日となっています(厚生労働省2011年患者調査より 平成23年9月調べ)。
- がんでの手術を伴う入院では、20日程度の入院となり、手術後は自宅療養しながら抗がん剤治療を受けるために通院する治療法や、手術をせずに通院治療のみという治療法もあります。
- いずれにせよ、病気にかかった場合の治療期間は、年単位を想定しましょう。その期間、仕事に復帰できる場合もあれば、そうでない場合もあります。この治療期間を知ることによって、生きるための生前給付型の保険でいくら準備すれば、安心して生活し、治療を受けられるのかを計算する目安になります。
- ③治療費に対してもらえるお金や補助はあるか
- 会社員の場合、健康保険は健康保険組合か協会けんぽで、自営業者等の場合は、国民健康保険に加入していますが、その健康保険には高額療養費制度があります。高額療養費制度とは、自己負担額が高額となった場合に、一定の自己負担額を超えた医療費が払い戻される制度です。たとえば、がん治療を受け、1ヶ月の保険適用医療費が100万円だった場合に、病院で支払う自己負担額は30万円(自己負担3割)と簡易的に計算すると、高額療養費見込額として212,570円が返還されます(一般所得者の場合)。
- この金額は後日払い戻されるか、事前の申請をしておけば、差し引いた金額のみ病院の窓口で支払えばいいのです。保険適用される治療であれば、この高額療養費制度が適用されるおかげで、1ヶ月の医療費の上限の検討がつきます。ただし、差額ベッド代や保険がきかない治療の場合は、全額自己負担ですので、注意しましょう。
- また、健康保険の付加給付についても知っておきましょう。付加給付とは、大手企業の健康保険組合において、病気が長引いた場合に、医療費の自己負担額が一定の金額を超えた部分が払い戻される制度で、高額療養費制度に上乗せして給付されます。これは、国民健康保険にはない制度です。
- ④家族がいる場合、休業中の家族の生活費はいくら必要か
- 一家の大黒柱が治療中に働けない場合、前述の傷病手当金が支給されるといっても、元気だったときの収入と比べると減ります。その場合でも、最低限必要な家族の生活費を把握しておきましょう。
- 食費・住居費・教育費・通信費・水道光熱費・自動車にかかる費用・消耗品費等はいくらかかるのか、その金額は傷病手当金や他に加入している医療保険でまかなえるのか、を考えておきましょう。働けない間には賞与が支給されない会社が多いため、勤務先の就業規則も確認しておきましょう。傷病手当金は、最大でも1年6ヶ月間までしか受け取れませんので、1年6ヶ月後に無収入になるケースがあることも留意しましょう。家族の中で他に収入を得ることができる人がいるのかどうか、その金額は月いくらなのかも重要です。
次に、生前給付型保障保険に加入するうえでのポイントについてお伝えします。
- ①「終身保険」か「定期保険」か
- 生前給付型の保障を、生涯にかけて付けておくのが終身保険、60歳まで等のように、期間を決めてかけておくのが定期保険です。加入しようとする人の老後の仕事や生活をどう考えるのかによって、いつまで生前給付型保障が必要か、が違ってきます。
- ②払い込み免除特約を付けることができるか
- 払い込み免除特約を付けることによって、所定の病気にかかった場合、その後の保険料の支払いはしなくてもよくなります。これは、病気になった後の家計の支出に影響しますので、加入しようと考えている保険にこの特約を付けることができるのかどうかを確認しましょう。
- ③リビングニーズ特約を活用すること
- リビングニーズ特約とは、余命6ヶ月以内の宣告を医師から受けた場合に、契約している死亡保険金の一部、または全部を生前に受け取ることができるという、死亡保険に付けることのできる特約のことをいいます。この特約は、保険料増額なしで付けることができますが、受け取ることができる金額は死亡保険金(一部または全部)と同額ではなく、利息と主契約保険料相当額が差し引かれる等のため、少なくなります。
さらに、生前給付型保障保険のデメリットや注意点についてお伝えします。
- ①保険金を請求し、受け取った時点で契約は消滅する
- 保険金を受け取った後で死亡した場合には、保険金が受け取れません。また、給付事由のうち、がんについては、初めて罹患したときに限って給付金を受け取れるという保険もあり、再発後には保険金がないということもあり得ます。この点を理解したうえで、生前給付型保険へ加入することが重要です。
- ②リビングニーズ特約を付ける場合の注意点
- リビングニーズ特約を付けた場合、実際に請求する場面では、被保険者本人が保険金を請求することができるかどうかわかりません。なぜならば、自身の余命を知ったうえで、治療費に活用するために、この特約の請求手続きをしなければならないからです。そこで、本人に特別の事情、つまり余命6ヶ月以内になった等、本人に真実を知らせることができないような事情のときに、本人に代わって代理人が請求手続きをすることができる「指定代理請求制度」も活用しましょう。この制度は、事前に代理人を指定しておく必要がありますので、注意しましょう。
- ③足りない保障は医療保険を
- 三大疾病以外の疾病にかかった場合の保障にも備えたい場合は、入院や通院の費用を保障する「医療保険」を活用しましょう。医療保険での保障を考える際にも、以上の生前給付型保障保険を選ぶポイントを参考にしてください。また、一家の大黒柱が万一亡くなった後の遺族の保障は、死亡保険を活用することも忘れないでおきましょう。
前回と今回のコラムでお伝えしました内容を踏まえて、生命保険を「楽しく生きるための保険」として活用し、より良い医療を受け、治療後の人生に役立てましょう。
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コラム執筆者プロフィール
中野 庸起子 (ナカノ ユキコ) マイアドバイザー.jp®登録 - ひまわり法務FP事務所 代表者/有限会社向日葵総合事務所 代表取締役。
行政書士として10年、ファイナンシャルプランナーとして8年。
相続、遺言、後見、離婚、民事法務、住宅ローン、保険の見直し、確定拠出年金導入サポート、社員教育を専門とし全国各地で講演多数。
短期大学での非常勤講師。二児のママファイナンシャルプランナー。
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コラム監修者プロフィール
山本 俊成 (ヤマモト トシナリ) マイアドバイザー.jp®登録 - ファイナンシャルプランナー。
大学卒業後、株式会社三和銀行(現三菱UFJ銀行)入社。
2003年、外資系生命保険会社入社。
2005年、総合保険代理店株式会社ウィッシュ入社。
2010年、株式会社ファイナンシャル・マネジメント設立。
銀行と保険会社に勤めていた経験を活かし実務的なコンサルティングを行う。
ファイナンシャルプランナー 中野 庸起子
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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