住宅購入世代は団体信用生命保険か?収入保障保険か?ライフプランから考えよう
ファイナンシャルプランナーの中野 庸起子です。今回は、住宅購入時にローンを組んだ場合に加入する団体信用生命保険と、収入保障保険とを比べ、家族構成やライフプランの違いによってどちらに加入する方がいいのか、どう選ぶべきかについてお話しします。
消費増税を控え、少しでもお得な住宅購入を希望する、30~50歳までの働き世代が増えています。住宅購入時、自己資金でまかなえない分は住宅ローンを組みますが、その際団体信用生命保険に加入することが条件である場合が多いです。この団体信用生命保険(以下、団信とします)とは、ローンを借りた人(債務者)がローンを残したまま死亡した場合、もしくは高度障害状態になった場合に、住宅ローンが保険でまかなわれる制度をいいます。
団信には、死亡もしくは高度障害状態時にのみローンが完済される「普通団信」と、普通団信にがんと診断された場合の保障もプラスされる「がん団信」、さらに三大疾病、七大疾病、八大疾病の保障もつくもの等があります。普通団信以外は、原則、金利に0.1~0.3%上乗せで加入します。
住宅金融支援機構の「フラット」で住宅ローンを組む場合、団信は任意加入(住宅金融支援機構のフラットを住宅ローンとして選んだ場合、「機構団信」という独自のものに任意加入します)ですので、団信の保険料(これを「特約料」といいます)が別途かかります。
金融機関独自の住宅ローンの場合、団信は原則強制加入なので、その保険料は、普通団信については金融機関に支払う利息に含まれています。そのため、団信以外での住宅ローンを補填してくれる保険を考える必要はありません。
ただし、もし住宅ローンを借りる人が無保険、つまり民間の生命保険に全く入っていない人であった場合には、普通団信だけでは自分が死亡や高度障害のときにしか住宅ローンが完済されません。病気等で働けなくなった場合の不安もあるため、合わせてがん団信や三大疾病団信等を検討した方がいい場合もあります。
住宅購入時には団信ではなく民間の保険という選択肢もある
一方で、住宅金融支援機構の「フラット」で住宅ローンを組む場合は、任意の団信に入らなくても、他にもっと充実した民間の保険があればそちらに加入し、安心して住宅ローンを組むこともできます。
民間の保険の種類では「収入保障保険」が最適ですので、団信か収入保障保険か、どちらを選んだらいいのか、その選ぶポイントについて家族のライフプランから照らし合わせてお話しします。
収入保障保険がなぜ適切かというと、安い保険料で大きな死亡保障を得られること、基本保障は死亡・高度障害のみで、保険期間中にこの状態になったときには、毎年年金のように保障を受け取れる保険であること、がん・三大疾病の保険料払込免除特約をつけられることが、団信の保障のイメージと似ているからです。
では、どちらを選ぶべきかを考えるため、団信の特約料と収入保障保険の保険料額、それぞれの保障額の例を、とある家族が住宅購入をする場合から試算します。
例) 30歳で住宅購入 返済期間35年 借入額3,000万円 フラット全期間固定金利2.0% 夫が債務者 妻と子どもあり |
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機構団信を選んだ場合 | 特約料 1年目 10万7,300円 保険料総額目安 213万5,100円 |
収入保障保険を選んだ場合 | 保険料 毎月 5,670 円 保険料総額 238万1,400円 (払い込み免除特約付き 35年間支払 65歳満了 支払保証期間1年で算出) |
もしこの家庭が住宅ローン借入後1ヶ月後に債務者が死亡した場合 | |
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団信では一時払で3,000万円の住宅ローンが完済される 収入保障保険では、 ・受け取れる保険金一時払で 4,700万円 ・年金受け取りで 月額15万円 35年間で 合計6,300万円 |
もしこの家庭が住宅ローン借入後10年後に債務者が死亡した場合 | |
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団信では一時払で2,340万円の住宅ローンが完済される 収入保障保険では、 ・受け取れる保険金一時払で 3,600万円 ・年金受け取りで 月額15万円 25年間で 合計4,500万円 |
団信の場合は、2年目以降は住宅ローンの借り入れ残高に応じて特約料も減っていきます。この事例では、2年目は1年間で105,800円です。
対して、収入保障保険の場合は、保険料支払期間は毎月同一額の保険料を支払います。
よって、家計から支払う特約料もしくは保険料の負担がその家計においてどれほどの重さかは、基本生活費や教育費等の使い方、および考え方が家計によって違うため、各家庭のライフプランに照らし合わせて、それぞれ考えてください。
また、上記試算以外に、住宅購入時に団信と収入保障保険と、どちらを選ぶべきかを考えるうえでのポイントを、次に3つ挙げます。
① 年齢が若い人ほど収入保障保険の保険料が安いことを利用しましょう。住宅購入時期が若い人は、団信よりも収入保障保険を選んだ方が有利になる場合があります。非禁煙割引も活用できる保険商品もあり、女性の場合は、さらに保険料が安くなります。
② 住宅購入時にすでに持病がある場合は、団信に入れないことが多いでしょう。団信に入れない人は、民間の保険でも厳しいといえますが、引き受けてくれる保険会社が見つかる可能性もあります。
③ 団信は年齢によって支払特約料に差はないため、年齢が高い時点で住宅を購入する場合は、団信の方が有利になる場合があります。
住宅ローンを借り入れていない妻にも収入保障が必要
団信は、住宅ローンの借入者(債務者)に万一のことがあった場合、住宅ローンが完済されるという保障ですが、住宅ローンの債務者ではない妻に万一のことがあったときの保障には、気づかない人が多いです。
住宅ローンの債務者ではない妻が亡くなると、住宅ローンには全く影響がありません。もし、子どもがまだ幼いと、育児の負担がすべて夫にのしかかる場合もありますし、また共働きで、妻の収入を見込んで無理な住宅ローンを組んでいた場合は、妻に万一のことがあったとき、返済できないかも知れないという恐れがあります。よって、こういう場合にも収入保障保険で備えておく必要がありますね。
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コラム執筆者プロフィール
中野 庸起子 (ナカノ ユキコ) マイアドバイザー.jp®登録 - ひまわり法務FP事務所 代表者/有限会社向日葵総合事務所 代表取締役。
行政書士として10年、ファイナンシャルプランナーとして8年。
相続、遺言、後見、離婚、民事法務、住宅ローン、保険の見直し、確定拠出年金導入サポート、社員教育を専門とし全国各地で講演多数。
短期大学での非常勤講師。二児のママファイナンシャルプランナー。
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コラム監修者プロフィール
山本 俊成 (ヤマモト トシナリ) マイアドバイザー.jp®登録 - ファイナンシャルプランナー。
大学卒業後、株式会社三和銀行(現三菱UFJ銀行)入社。
2003年、外資系生命保険会社入社。
2005年、総合保険代理店株式会社ウィッシュ入社。
2010年、株式会社ファイナンシャル・マネジメント設立。
銀行と保険会社に勤めていた経験を活かし実務的なコンサルティングを行う。
ファイナンシャルプランナー 中野 庸起子
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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