収入保障保険の選び方
最近、テレビCMなどで耳にすることが多くなった「収入保障保険」。どのような保険なのかご存知でしょうか?
収入保障保険の特長から、検討する際、どのようなことを知っておけばよいのか、収入保障保険について詳しく解説いたします。まずは、他の保険との違いをみていきましょう。
収入保障保険と所得補償保険と就業不能保険の違い
万一のときや病気やケガで入院したときのために、保険金・給付金を受け取れる死亡保険・医療保険に加入されている方は多いと思います。しかし、万一のときや入院しているときに、今まで入ってきていた収入が途絶えるということの意味をどこまで考えていらっしゃるでしょうか。ご自身の年齢が低いときに亡くなったり、長期的に働けなくなったりした場合は、その保障だけで生活していけますか?
途絶えた収入を補うための保険として「収入保障保険」「所得補償保険」「就業不能保険」が複数の生命保険会社・損害保険会社から発売されています。ただ、名称が紛らわしいこともあり、それぞれがどのような保険なのかをご存じの方は少ないかもしれません。そこで、その違いを、被保険者がどんなときに・誰が・どのような形で保険金を受け取れるのかを比べてみました。
<表1:保険金の受け取り方>
保険の種類 | どんなときに | 誰が | どのような形で |
---|---|---|---|
収入保障保険 (生命保険) |
死亡したとき または約款所定の高度障害状態になられたとき |
遺族 本人 |
年金形式 (一括受け取りまたは、一括受け取り+年金形式) |
所得補償保険 (損害保険) |
ケガや病気で働けなくなったとき | 本人 | 年金形式 |
就業不能保険 (生命保険) |
ケガや病気で働けなくなったとき | 本人 | 年金形式 |
資料:執筆者作成
ここでは、一家の収入を支える方が死亡または約款所定の高度障害状態になられたとき、家族が毎月の生活に困らない保障を準備できる「収入保障保険」の特長と選び方をお伝えします。
収入保障保険の特長
収入保障保険は、死亡または約款所定の高度障害状態になられた場合の保険なので定期保険の保障と同じですが、大きな違いは保険料です。死亡保障額が契約期間中ずっと一定のため「四角の保険」といわれる定期保険に対して、収入保障保険は契約期間満了に向かって、死亡保障額が減っていく「三角の保険」といわれています。通常であれば、被保険者の年齢があがる老後には死亡や高度障害状態のリスクが大きくなるので、一般的には保険料は高くなっていきます。しかし、三角の保険は、老後のリスクが大きくなるときの必要保障額を小さくすること、満期保険金や解約返戻金のない掛け捨てタイプにすることで、保険料を低く抑えることが可能となっています。
「保障が減っていく保険なんて、意味がない!」とお思いの方、少しお待ちください。
なんと、この三角形の保険の保障額の推移(図1)は、お子さまの成長やローンの返済とともに減少してくる毎月の生活資金の推移(図2)とリンクするのです。したがって、お財布に優しい合理的な保険といえます。
<図1:年金受取総額の推移(イメージ)>
- 【契約例】
- 30歳男性/年金月額:20万円/保険期間・保険料払込期間:60歳まで/支払保証期間:5年
<図2:生活資金の推移(イメージ)>
収入保障を選ぶときの3つのポイント
1.保険金を受け取る金額を見極める
受け取る金額が多いに越したことはありませんが、そうなると保険料が高くなる場合があります。ご家庭の収入と支出に見合った、損益分岐点をみつけましょう。
それをみつけるためには、毎月の家計の収支と、公的な保障(遺族年金)でいくらまでカバーされるのか必要保障額を把握しておくことが大切です。
<図3:公的保障の例>
- ※1 厚生労働省「平成27年度厚生年金保険・国民年金事業の概況について」より 平成27年度平均標準報酬月(男子)は349,144円。
- ※2 公的遺族年金の金額は加入状況や子どもの数など諸条件により異なります。記載の金額は一例ですので、ご自身の年金額については十分にご確認ください。
- ※3 公益財団法人生命保険文化センターホームページより 標準報酬月額35万円で子ども2人のサラリーマン世帯(厚生年金)の場合、遺族年金額の目安は年額1,742,155円。これを当社にて1カ月あたり145,180円と換算。
毎月35万円の収入で生活していたご家庭のご主人さまが亡くなり、収入が途絶えた場合は、上記の条件により遺族年金を月に約15万円受け取ることができます。ただし、図3の例のように、遺族年金(公的保障)だけでは20万円足りないことになります。その不足部分を、貯蓄で補填したり、ご遺族が収入を増やしたりすることで補うのが難しいようであれば、収入保障保険で毎月一定の金額を備えることも有効といえるでしょう。
2.保険金を受け取る方法を見極める
収入保障保険の保険金の受取方法は、年金形式、一括受け取り、一括受け取り+年金形式と3つの方法があります。特に気をつけないといけないのは、収入保障保険の税金です。被保険者の死亡時と、実際の年金受取時によっても異なってきますし、契約者・被保険者・年金受取人の契約形態別によっても、相続税や所得税、贈与税の課税になったりします。その時の状況に応じてご検討ください。
3.保障期間は、いつまでがよいかを見極める
収入保障保険の魅力は、それぞれ保険会社によって異なりますが保険の契約期間や年金の保障期間を自由に設定できるところがあげられます。例えば、お子さまが大学に進学するまで、お子さまが独立するまで、配偶者の方が年金を受給するまでなど、それ以降の家計への負担が少なくなる時期を考えると、おのずと保障期間の目処が見えてくるはずです。
まとめ
遺族の生活費を保障するための保険なので、一般的に収入が多いであろうご主人さまを被保険者に契約されるケースが大半ですが、奥さまを被保険者とする商品も発売されています。お子さまが小さい場合、ベビーシッターに子育てを補助してもらえる特約が付帯できる商品もあり、共働き世帯には心強い保険だといえます。また、たばこを吸わない方には非喫煙者割引が、BMIや血圧が規定範囲内の方には健康体割引が適用される商品も発売されています。保険料を抑えるためにも、該当される方はぜひチェックしてみてください。
収入保障保険は、遺されたご家族が路頭に迷わないための保険であり、ご家族を大切に思う気持ちを毎月伝えていきたいというご主人さまの愛情表現のための保険でもあります。適正な保険金額と支払える保険料とのバランスを考慮し、ライフプランと照らし合わせながらご家族で検討されることをおすすめします。
- ※本記事は、2017年11月20日に掲載された記事です。そのため、記事内容は掲載日のものであり、現在と情報内容が異なっている場合がございますので、本記事の閲覧・利用等に際しては、ご注意ください。
相談件数は800件超!保険はもちろん、家計簿診断など家計の見直しや資産づくりを得意とするファイナンシャルプランナー柳澤 美由紀が、収入保障保険と定期保険の違いを分かりやすく解説いたします。
プロフィール
柳澤 美由紀(やなぎさわ みゆき)家計アイデア工房 代表/CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
関西大学社会学部卒。大学時代に心理学を学び、リクルートグループに入社。求人広告制作業務に携わった後、1997年ファイナンシャルプランナー(FP)に転身する。相談件数は800件以上。家計の見直し、保険相談、資産づくり(お金を増やす仕組みづくり)が得意で、ライフプランシミュレーションや実行支援も行っている。