消費税増税後の住宅価格はどうなる?~後編
4.地価の動向は?
図3 住宅地価変動率(%):(国土交通省地価公示)
資料:国土交通省「平成26年地価公示」(2014年1月1日時点)をもとに執筆者作成
図3は国土交通省が公表した2013年と2014年の住宅地地価公示の都道府県別の対前年変動率です。2013年は宮城県と愛知県を除き地価が下落しています。2014年になると、上昇地区が宮城、愛知2県のほか、福島県、埼玉県、東京都、神奈川県、沖縄県へと拡大しています。その他の全ての道府県についても下落幅が縮小しています。ここから見る限り、地価は上昇傾向に転じる過程とも見て取れます。
ただしバブル期のように全国的な地価上昇に結び付くかということには疑問があります。私の感覚では、都市部では地価が上昇する可能性が高いですが、地方は下落傾向を脱することはできず、せいぜい下落幅が縮小するぐらいのところも多いかと思います。
地価上昇の原因は、住宅価格上昇の原因として前編でも述べましたが、金融緩和による投資の活性化、それと特に首都圏に言えることですが、公共投資によるインフラの拡充が挙げられるでしょう。
5.今後の住宅価格は?
個別の政策ごとに住宅価格に対する影響をみてみましょう。
(1)金融政策
金融緩和そのものは、地価と住宅価格を引き上げる効果があります。金余り現象が生じれば、住宅価格よりも地価への影響の方が大きいでしょう。
一方、円安は外資が日本の土地を求めやすくなりますので地価の上昇を招き、また、輸入資材価格の上昇によって住宅価格が値上がりする影響があります。
(2)財政政策
財政政策による公共投資は地価を引き上げる効果があります。ただしそれは都市部などの一部に限られるでしょう。少子化のため地方では土地需要が細っています。公共投資では地方の都市を全体的に引き上げる効果は少ないでしょう。その地方の経済構造にもよりますが、交通の利便性が高まれば、地方に入ってくる人よりも出ていく人の方が多い、いわゆるストロー現象により、さらに衰退するところが出てくる可能性も考えられます。
住宅価格への影響は、人手不足による人件費の高騰、これは全国的に影響を及ぼします。
(3)その他の政策
アベノミクスの第3の矢に相当する部分です。規制緩和や民間投資の喚起は景気に持続的にプラスの作用を及ぼします。地価にも上昇圧力が生じます。デフレを脱却できれば住宅価格も緩やかに上昇を続けるでしょう。
6.まとめ
税込みの住宅価格に対する消費税の影響は無視できないでしょう。それよりも景気の変動による税引き前の住宅価格の変動の方が大きくなる可能性もあります。しかし、これはなかなか予想できるものではありません。これからの資金計画は、ある程度の住宅価格の上昇を見据えた上で、検討されても良いのではないかと思います。
これだけは押さえておいていただきたいのですが、価格が上がりそうだからと言って資金計画が不十分なままで、慌てて購入するのは禁物です。住宅購入は何よりもしっかりとした資金計画が最優先です。
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コラム執筆者プロフィール
有田 宏 (アリタ ヒロシ) マイアドバイザー.jp®登録 - 北海道金融広報アドバイザー、NPO法人北海道未来ネット専務理事、一般社団法人札幌消費者協会監事。CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。
金融機関勤務を経て、現在ファイナンシャルプランナー。
専門は金融分野。
経済動向等を含めた幅広い観点から、コンサルティング、セミナー講師、執筆等を行っております。
ファイナンシャルプランナー 有田 宏
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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