乳幼児の備えはまず医療費助成の内容を確認してから
全国の自治体には、子どもの医療費を助成してくれる制度があります。子育て世代にとってとても有難い制度ですが、実は、自治体によって助成内容がかなり異なります。子どもの病気やケガに対する備えを考える際は、まず医療費助成の内容を確認し、足りない部分があれば、そこを民間の医療保険等に加入して補うことで、効率よく備えることができます。そこで、今回は各自治体が未就学児(小学校に就学するまで)に対してどのような医療費助成を行っているか、各自治体のホームページで確認してみました。
自治体による助成内容の違い
各自治体で、独自に助成内容をグレードアップさせていることから、乳幼児(未就学児)の医療費助成は自治体によって異なる内容になっています。助成内容の違いは、主に以下の点です。
- 入院時の助成を何歳まで対象にしているか?
- 通院時の助成を何歳まで対象にしているか?
- 助成範囲は医療費の自己負担分か、それとも患者に一部を負担させるか?
- 医療費助成の対象者に、親等の所得制限を設けているか?(※)
※所得制限について、詳しくは各自治体にお問い合わせください。
今回は、乳幼児の医療費助成について取り上げていますが、最も恵まれた内容だと「親等の所得制限がなく、入院・通院ともに全年齢で自己負担分を助成(一部負担なし)する」というものです。しかし、子育て支援は重要と理解していても、財源確保が難しい自治体や、患者に一部負担させて医療費を抑制させようと考えている自治体等では、独自に制約を設けています。
政令指定都市同士でも助成内容はかなり異なる
東京23区はそれぞれの区で助成内容を決めていますが、乳幼児に関しては、所得制限なく入院も通院も自己負担分を助成(一部負担なし)する内容に、ほぼ統一されています。では、全国の政令指定都市の乳幼児の助成内容を、北から順にみていきましょう。
※下記の表は各市のホームページを参考に、概要をまとめたものです。詳細につきましては、各市にお問い合わせください。
政令指定都市の医療費助成内容(東日本)
都市名 | 乳幼児の医療費助成内容 |
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札幌市 | 入院・通院ともに自己負担を助成してもらえる。一部負担は初診時に医科580円、歯科510円。0歳から所得制限有り。 |
仙台市 | 入院・通院ともに自己負担を助成してもらえる。一部負担は3歳の通院から初診時500円。0歳から所得制限有り。 |
さいたま市 | 入院・通院ともに自己負担分を助成してもらえる。一部負担なし。 |
千葉市 | 入院・通院ともに一部負担を除く自己負担分を助成してもらえる。一部負担は入院1日につきに300円、通院1回につき300円。 |
横浜市 | 入院・通院ともに自己負担を助成してもらえる。一部負担なし。1歳から親(保護者)の所得制限有り。 |
川崎市 | 入院・通院ともに自己負担を助成してもらえる。一部負担なし。1歳から親(保護者)の所得制限有り。 |
相模原市 | 入院・通院ともに自己負担を助成してもらえる。一部負担なし。1歳から養育者(父母のうち所得の高い人)の所得制限有り。 |
資料:各自治体ホームページを参照に執筆者作成
札幌市や仙台市では一部負担も所得制限も設けていますが、関東地方では一部負担を設定している都市の方が珍しい存在となっています。神奈川県の3市は、足並みをそろえているようです。
政令指定都市の医療費助成内容(中部・北陸)
都市名 | 乳幼児の医療費助成内容 |
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新潟市 | 入院・通院ともに一部負担を除く自己負担分を助成してもらえる。一部負担は入院1日につきに1,200円、通院1回につき530円(医療機関ごと月4回まで)。所得制限なし。 |
静岡市 | 入院・通院ともに一部負担を除く自己負担分を助成してもらえる。一部負担は通院のみ1歳から受診のたびに1回500円(500円に満たない場合はその額)。 |
浜松市 | 入院・通院ともに一部負担を除く自己負担分を助成してもらえる。一部負担は入院1日につきに500円、通院1回につき500円(500円に満たない場合はその額)。 |
名古屋市 | 入院・通院ともに一部負担を除く自己負担分を助成してもらえる。一部負担なし。所得制限なし。 |
資料:各自治体ホームページを参照に執筆者作成
名古屋以外の3市で一部負担を設けています。名古屋市は、東京23区のように「一部負担もなければ所得制限もない」、とてもわかりやすい助成内容になっています。
政令指定都市の医療費助成内容(近畿)
都市名 | 乳幼児の医療費助成内容 |
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京都市 | 入院・通院ともに一部負担を除く自己負担分を助成してもらえる。一部負担は入院と2歳までの通院が1医療機関ごとに月200円、3歳からの通院は1医療機関ごとに月3000円。 |
大阪市 | 入院・通院ともに一部負担を除く自己負担分を助成してもらえる。一部負担は1医療機関ごとに1日あたり最大500円(月2日限度)。3歳から所得制限有り。 |
堺市 | 入院・通院ともに一部負担を除く自己負担分を助成してもらえる。一部負担は1医療機関ごとに(同一医療機関でも入院・通院・歯科は別医療機関とみなす)1日あたり最大500円(月2日限度)。所得制限なし。 |
神戸市 | 入院は自己負担を助成、通院は一部負担を除く自己負担分を助成してもらえる。一部負担は通院の3歳から1医療機関・薬局等ごとに月2回まで1日800円を限度(3回目以降無料)。1歳から所得制限有り。 |
資料:各自治体ホームページを参照に執筆者作成
関西の4市では、一部負担や所得制限が細かく設定されています。東京23区と比べると、もう少し手厚くしてほしいと思う人もいるのではないでしょうか。
政令指定都市の医療費助成内容(中国・九州)
都市名 | 乳幼児の医療費助成内容 |
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岡山市 | 入院・通院ともに自己負担を助成してもらえる。一部負担なし。 |
広島市 | 入院は自己負担を助成、通院は一部負担を除く自己負担分を助成してもらえる。一部負担は通院が0歳から医療機関ごとに初診料算定時1日500円負担(月4日限度)。※1 |
北九州市 | 入院・通院ともに自己負担を助成してもらえる。一部負担なし。3歳から所得制限があるが2人以上の子どもがいる世帯は申請により所得制限を免除。 |
福岡市 | 入院・通院ともに自己負担を助成してもらえる。一部負担なし。所得制限なし。 |
熊本市 | 入院・通院ともに一部負担を除く自己負担分を助成してもらえる。一部負担は医科3歳から、歯科5歳から1医療機関ごとに月500円(入院・通院別)。 |
※1 乳児健康相談等を0歳児の間に受診していない場合は、1歳から入院・通院の一部負担の額が異なる
資料:各自治体ホームページを参照に執筆者作成
政令指定都市同士であっても、乳幼児の医療費助成の内容はかなり異なっていることがわかります。ただ、乳幼児(小学校就学まで)の医療費助成に関しては、全ての都市で入院も通院も助成対象になっています。東京23区とさいたま市、名古屋市、岡山市、福岡市は一部負担も所得制限もありません。
医療費助成制度を子どもの保障プランに活かす
公的な医療費助成制度が充実していれば、子どもが病気やケガをした時でも経済的な心配をすることなく、治療に専念できるはずです。ただ、子どもの医療費助成は保険診療の対象となっている医療費の自己負担分を助成するので、例えば、先進医療や交通費等の費用は助成されません。これらの費用くらいは手持ち金で対応するという人もいれば、生命保険等に頼りたい人もいるでしょう。
もし生命保険商品で備えるなら、子供(学資)保険に特約で付加することが可能な医療保障を付けたり、子供保険とは別の医療保険に加入したりすることを検討してみると良いです。手持ち金で対応するなら、うっかり使ってしまうことのないよう、別口座に大切に保管しておきましょう。
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コラム監修者プロフィール
山本 俊成 (ヤマモト トシナリ) マイアドバイザー.jp®登録 - ファイナンシャルプランナー。
大学卒業後、株式会社三和銀行(現三菱UFJ銀行)入社。
2003年、外資系生命保険会社入社。
2005年、総合保険代理店株式会社ウィッシュ入社。
2010年、株式会社ファイナンシャル・マネジメント設立。
銀行と保険会社に勤めていた経験を活かし実務的なコンサルティングを行う。
ファイナンシャルプランナー 松浦 建二
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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