“生命保険の死亡保障”って誰にでも必要なの?加入や見直しのタイミングは?
「どこの生命保険が一番いいのですか?」「私は、いくら生命保険に入っておいたら安心ですか?」そんな質問をよくお受けします。
プロとして、ズバッとお答えできればスッキリしていただけるのでしょうが、実は、これはとても難しいご質問で、簡単にお答えすることはできません。
「生命保険(死亡保障)の必要性」は、人それぞれ違いますし、その人のそのときの状況や、生きていく中で常に変化しているからです。
【1】「生命保険(死亡保障)の必要性」に影響を与えるもの
- ①年齢
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年齢を重ねるにつれて「死亡するリスク」が高くなります。死亡のリスクだけを考えると、生命保険の必要性も加齢とともに高くなりそうですが、「死亡保険金」は、万一の際の経済的なリスクをカバーするものであって、一概にそうとは言えません。
なお、同じ死亡保障で比較すると、年齢が高くなるほど保険料が高くなります。
- ②仕事等の状況
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会社員(公務員)、自営業、専業主婦、パート勤務、リタイア後等、状況によって、「死亡保障」の必要性は異なります。
会社員(公務員)で厚生(共済)年金等に加入しており要件を満たせば、万一の際、遺族は「遺族厚生年金(遺族共済年金)」を受け取ることができます。また、企業によっては「死亡退職金」制度もあります。
パート勤務の場合も、厚生年金に加入しているかどうかで万一の保障が異なります。
一方、自営業の場合は、子どもがいる妻(夫)で要件を満たせば「遺族基礎年金」を受け取ることができますが、会社員(公務員)にある「遺族厚生年金(遺族共済年金)」ほどの手厚い遺族年金を受け取ることはできません。
- ③家族状況
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「生命保険(死亡保障)」は、本人ではなく遺された家族が暮らしていくために必要なものです。「未就学の小さい子どもがいる家庭の大黒柱であるお父さん」と「もうすぐ子どもが大学を卒業し、本人もまもなくリタイアする予定のお父さん」では、同じ「お父さん」であっても必要な保障はずいぶん異なりますね。一般的に、末子の誕生時に、大黒柱であるお父さんの必要保障額はピークに達し、子どもの成長と共に減っていきます。
逆に、単身で財産を残すべき家族等がいない場合等は、「生命保険」の必要性はほとんどありません。保険で準備するとしても「お葬式代程度の保障」で大丈夫でしょう。
- ④資産状況
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万一のことが起こったとしても、遺された家族が暮らしていくための十分な預貯金があれば、生命保険で「お金」を準備する必要はありません。また、マイホームや土地、宝石等、いざとなれば換金できる資産価値のあるものが潤沢にある場合も同様です。
【2】「生命保険の必要性」「加入や見直しが必要なタイミング」
年齢を追って「ライフイベント」ごとに、チェックしてみましょう。
下記は、生命保険の加入率を性別、年齢別に表したグラフです。20代は加入率が低く、年齢と共に増加し、40~50歳代がピークになっています。それぞれの年代でどのようなライフイベントがあるのでしょうか?
生命保険加入率(性別・年齢別)
(注)民間の生命保険会社や郵便局、JA(農協)、生協・全労済で取り扱っている生命保険や生命共済(個人年金保険やグループ保険、財形は除く)の加入率を示す。
出典:生命保険文化センター「生活保障に関する調査」/平成25年度
- ①社会人になったとき
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経済的に自立するときです。生命保険等をはじめ、自分自身の「お金との付き合い方」についてしっかり考える必要があります。グラフより、20代の生命保険の加入率が低くなっていることからも分かりますが、社会人とはいえ、この時期は扶養すべき家族等はいないという人がほとんどなので、「生命保険(死亡保障)の必要性」は低いと思われます。むしろ、病気やケガにそなえる「医療保険」を検討すべきでしょう。
- ②結婚したとき
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生命保険の必要性は「万一の際に誰かにお金を遺す必要があるかどうか」で判断します。共働きでお互い自立できる収入があれば、大きな保障は必要ありません。
一方、妻が仕事を辞めて専業主婦になる場合等は、その後の妻の生活を保障するために、夫の死亡保障をある程度準備したほうがよいと考えられますね。
- ③子どもが生まれたとき
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家族の将来のために「生命保険」について、しっかり考えなければいけないタイミングです。子どもを1人育てるには1,000万円以上かかるとも言われます。家計を支える保護者に万一のことがあった場合、子どもの将来に大きな影響を与えます。今後の家族の生活にかかるお金で預貯金や年金で賄えない部分を「生命保険」で準備します。
なお、子どもの成長と共に「子どもが自立するまでにかかるお金」は減っていきますので、それに伴って「保護者の保障の必要性」も下がっていきます。子どもがいる世帯の場合、数年毎に見直しをする必要があります。
- ④マイホームを購入したとき
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住宅ローンを組む際、大半の人は「団体信用生命保険(以後、団信)」に加入します。「団信」は生命保険の一種で、契約者に万一のことがあった場合、以後のローンを返済することなく、遺族はマイホームを手に入れることができます。「団信」に加入することにより、生命保険で備えるべき必要保障額を減らせる可能性があります。「加入している生命保険」の見直しをしましょう。
- ⑤転職したとき
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会社員から自営業に転職したとき、また、逆の場合も、必要保障額は変わります。【1】②を参考に「必要保障額の見直し」を行いましょう。
- ⑥退職するとき
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セカンドライフをどう過ごしていきたいか、リタイア後のライフプランについて考えるべきときです。年金等の収支状況や、退職金を含めた貯蓄額等から、今後の生活に必要なお金を試算します。同時に、生命保険でどれだけのお金を家族に遺すべきかを考えてみましょう。グラフより60歳以降は、生命保険の加入率が下がっていることからも読み取れるように、リタイア後は子どもも独立しているケースが多く、一般的に「家族にお金を遺さなければいけない」という必要性は減ります。
年齢を追って「ライフイベントと保険との関係」について見てきました。人生の中で「保険の必要性」は、どんどん変化してくことが分かりますね。
「しっかり考えて加入すればОK」と安心せず、ライフイベントごとに、また、大きなイベントがなかったとしても、数年に一度は見直しをしながら、最も良い形で「生命保険」と付き合っていけるようにしたいですね。
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コラム執筆者プロフィール
合田 菜実子 (ゴウダ ナミコ) マイアドバイザー.jp®登録 - ファイナンシャルプランナー、キャリアカウンセラー。
消費者向けの家計セミナーやFP資格取得講座等の講師業の他、フリーペーパーやWEBコラム等の執筆や個人相談業務等も行っています。
“お金の知識を分かりやすく楽しく伝える”をモットーに、出会った人々に安心感を与えられるようなファイナンシャルプランナーを目指しています。
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コラム監修者プロフィール
山本 俊成 (ヤマモト トシナリ) マイアドバイザー.jp®登録 - ファイナンシャルプランナー。
大学卒業後、株式会社三和銀行(現三菱UFJ銀行)入社。
2003年、外資系生命保険会社入社。
2005年、総合保険代理店株式会社ウィッシュ入社。
2010年、株式会社ファイナンシャル・マネジメント設立。
銀行と保険会社に勤めていた経験を活かし実務的なコンサルティングを行う。
ファイナンシャルプランナー 合田 菜実子
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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