保険で相続税に備える
先日、75歳と73歳のご夫婦が相続のことでご相談に来られました。相続税の仕組みが変わるというニュースを耳にして、自分たちの相続のことが心配になったそうです。
このように、平成25年度の税制改正で相続に不安を持たれる方が少なくありません。「できれば相続税を抑えたい」「家族の間で争いが起こってほしくない」といった思いは様々です。
今回は、相続税の対策としての保険の活用方法をみていきます。
相続税の基礎控除の引き下げ
相続税の基礎控除額は、相続財産から控除される金額のことです。相続税法で定められた相続する人を「法定相続人」といいますが、その人数によって控除額が変わります。例えば、今までは、法定相続人が妻と子ども2人の合計3人だった場合、8,000万円が基礎控除額でした。したがって8,000万円以下の財産であれば、相続税を支払わなくてよかったのです。
基礎控除額の計算例
(5,000万+1,000万×法定相続人の数)
今回、引き下げられる基礎控除額は同条件の場合、4,800万円になります。税制改正されると、4,800万円以下の財産であれば無税となり、それ以上だと課税の対象となります。計算式にすると、(3,000万円+600万円×法定相続人の数)になります。
ネックになるのは不動産財産
相続の対象となる財産の中でも大きな割合を占めるのは、不動産です。
地価の高い場所に一戸建てで住んでいると、その不動産の評価だけでも基礎控除を超えてしまうケースがあり、相続税が発生することになります。
分割することが難しい不動産が財産の大部分を占めると、相続税を払うための納税資金対策、つまり現金が必要となってきます。相続税は、原則として現金で一括納付しなくてはなりません。相続した不動産を売却したくても、なかなか売却できない場合もあります。
納税資金を保険で用意する
そういった場合に備えて、保険を納税資金対策に活用してはいかがでしょうか。つまり被相続人が死亡したときに支払われる保険金を、相続税の納税資金にあてるのです。
被相続人の生命保険の保険金も相続資産の対象に含まれますが、これには非課税枠があります。
現行においては、(500万円×法定相続人の数)の方が非課税限度額となります。
妻、子ども2人の3人が相続人の場合、1,500万円までが非課税限度額となります。
保険金はこの非課税枠が使えるので、納税資金としては金融資産で残しておくよりも有効といえます。金融資産は、全額課税の対象になるからです。
また、保険金はすぐに現金化できるのも利点です。
銀行の預貯金等は、相続の協議が完了するまでは凍結され引き出すことができないからです。
このようなことから、保険の活用は納税資金対策として節税の意味合いも含めてすぐれているといえるでしょう。
もちろん、ご相談にみえた方の年代においては、ご自身の医療や介護にお金がかかることも予想されます。保険は預貯金ではありませんので、必要なときにすぐ使えるとは限りません。相続のことばかりに目が行き、ご自身にとって必要なお金が不足してしまったのでは意味がありません。
今回ご相談にみえた75歳と73歳のご夫婦のように、お元気なうちに相続のことを考えて準備してくのは、素晴らしいことですが、同時に自分が生きていくための備えとの兼ね合いもしっかり考える必要があります。
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