100万円のポートフォリオを考えてみよう
万一に備えるためにもポートフォリオ運用が欠かせない
ポートフォリオとは、紙ばさみや書類カバンといった意味から転じて、さまざまな資産(金融商品)を組み合わせた1つのまとまりのことを指します。例えば、ある人の全財産が、預貯金と株式と投資信託の場合、その人のポートフォリオは預貯金と株式と投資信託で構成されている、と言えるわけです。
そして、資産運用を考える場合は、特定の資産に集中投資をするのではなく、さまざまな資産に分散投資したポートフォリオ運用を考えることが重要だと言われます。
では、「100万円のポートフォリオ」を考える前に、そもそもポートフォリオ運用がなぜ重要なのかをしっかりと理解しておきましょう。
ポートフォリオ運用が重要な理由の1つは、将来のことを正確に見通すことは誰にもできないからです。5年後、10年後、20年後など、遠い将来に至るまで、世の中がどう変化し、株価や金利、為替などがどう動くのかを正確に予測できる人は、まずいません。今後の株価や金利、為替の動向は、将来になってみないとわからないのです。
将来がわからないからこそ、さまざまな事態に備えて資産を分散しておくのが無難だと考えられるわけです。有利か不利かは将来になってみないとわかりません。有利な運用法だから分散投資をするのではなく、分散投資の方が無難だからなのです。
預貯金は非常に安全な商品ではありますが、あくまでも見た目の金額が安全なだけであって、実質的または相対的には日々変化しているものと考えることができます。例えば、平成26年6月の消費者物価指数は、前年同月比で3.6%の上昇を記録しました。一方、預貯金金利は依然として0.02%や0.03%といった水準。つまり、預貯金でお金が増える度合いよりも、モノの値段のほうが上がってしまったので、預貯金は実質的に目減りしたことを意味しているのです。
昔から、このような物価上昇(インフレ)に備えるには、株式や投資信託、不動産、金などが有効だといわれます。もちろん、それらの資産なら必ずインフレに備えられると断言できるわけではありませんが、備えられる可能性があるという意味でも、多少なりともポートフォリオにそれらの資産を加えておく必要があると考えられるのです。
将来のインフレだけでなく円安にも備えておくべき
さらに、為替相場が円安になることによる相対的なお金の価値の目減りにも備えたいところ。例えば、平成24年7月末の為替相場は、1ドル=78円、1ユーロ=97円でしたが、平成26年7月末には、1ドル=103円、1ユーロ=138円になっています(数字は概数)。それだけ円安が進み、円の価値が目減りしたのです。今後も円安が続くかどうかはわかりませんが、円安が続けば輸入品の値段が上昇し、海外旅行もたくさんのお金を支払わないと行けなくなります。それは、さらに円の価値が減ってしまったということになります。将来の円安に備えるには、外貨建ての商品を持っておくことが重要になります。どの通貨が上がるか下がるかはわからないので、通貨も分散して保有することが無難だと言えます。
このように考えるだけでも、国内外の債券や株式、不動産、金など、さまざまな資産を保有しておいた方が、将来起こりうるさまざまな事態に備えられる可能性が高くなることが理解できます。ポートフォリオにどの資産を選んで入れるのかではなく、できる限り多くの資産、特に値動きの異なる資産を組み合わせていくことが重要なのです。
では、あらためて100万円のポートフォリオを考えてみます。どの程度リスクを取ることができるか、値動きの大きさを許容できるかにもよりますが、国内債券、国内株式、外国債券、外国株式などといった代表的な資産は、基本として組み入れておくべきではないかと思われます。投資信託(ファンド)であれば、1万円程度から購入できるものが大半なので、代表的な資産を中心にさまざまな資産を組み合わせて持つのが無難でしょう。
例えば、100万円のうち50万円を預貯金に置いておくなら、残りの50万円のうち、20万円を値動きの小さい国内債券のファンド、10万円を国内株式のファンド、10万円を外国債券のファンド、5万円を外国株式のファンド、残り5万円を不動産や金などで運用されているファンドにするなど、さまざまな資産を組み合わせたポートフォリオにするのです。
値動きの異なるさまざまな資産を組み合わせると、必ず何かが上がって何かが下がる状態が繰り返されます。その結果、ポートフォリオ全体の値動きは多少なりとも小さくなり、無難な運用をしていくことができると考えられるのです。将来のさまざまな事態に備えるためにも、少しずつでも実践してみましょう。
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コラム執筆者プロフィール
菱田 雅生 (ヒシダ マサオ) マイアドバイザー.jp®登録 - 早稲田大学法学部卒業後、大手証券会社を経て独立系ファイナンシャルプランナーに。平成20年、ライフアセットコンサルティング株式会社を設立。
資産運用や住宅ローンなどを中心に、相談業務や原稿執筆、セミナー講師等に従事している。
ファイナンシャルプランナー 菱田 雅生
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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