終活と生命保険その1~エンディングノートの活用
「エンディングノート」をご存じでしょうか?「終活」の一つとして、このエンディングノートを活用する人が増えているようです。
「終活」とは、「人生の終わりをよりよいものにするために準備をすること」というような意味で、「就活」「婚活」と同じような造語です。保険は、自分のためのリスクに備えておくものと、家族のためのリスクに備えておくものとがあります。それをエンディングノートに記しておくことは、本人のためはもちろん、家族のためでもあるのです。
本コラムでは、保険とエンディングノートの活用についてみていきます。
終活とエンディングノート
終活とはどのようなことをするのかというと、主なものとして、エンディングノートの作成、遺言書の作成、あるいは財産や相続内容をまとめておく、葬儀を決め手配をしておく、お墓を決め手配をしておく、荷物を整理しておくなどの活動のことをいいます。
その中でも、エンディングノートを作成することは、ご自身にとっても家族にとっても、人生最後の準備として有益と考えます。
では、エンディングノートにはどのようなことを記すのでしょう。
様々なエンディングノートが市販されていますので、記す内容はそれぞれ違うのですが、押さえておきたい事柄は、
- ご自身の生い立ち
- 財産や保険の状況
- 交友関係
- 家系図
- 終末医療について
などです。
ご自身の生い立ちは、一見家族にとっては必要のないことかもしれませんが、意外と知らないこともあったりします。エンディングノートは、本人の死亡後だけに役立つものではありません。生きている間でも必要なものです。認知症になってしまったときなどに、本人の生い立ちが非常に役に立ちます。
こんな例があります。認知症が進み自宅での介護が難しくなったため、グループホームに入所したところ、自宅と違うところに連れてこられたことによる混乱で、職員の言うことが聞けず、お風呂に入ることを完全に拒否していた方がいらっしゃいました。どの施設でも手に負えず、施設を転々とし、家族も困り果てていたところ、「学校で音楽の先生をしていた」という本人の歩んできた人生を家族が職員に何気なく話したことがきっかけで、職員がその方を「先生」と呼び、歌を歌いながらその方と接したところ、お風呂に入ってくれるようになったそうです。
認知症の方は、近い過去より遠い過去のことをよく覚えているケースが多いらしく、生い立ちやその人の歩んできた人生を知ることにより、コミュニケーションがよくとれるようになることがあるようです。
エンディングノートに書き込む内容
エンディングノートに書き込む内容で、自分の生い立ち以外の上記2~5については、早めに書き込んでおきましょう。
財産や保険については、本人が亡くなった後は、相続の遺産分割の際に役に立ちます。生きている間は、認知症になって、判断能力がなくなり財産管理が難しくなったとき、成年後見人が財産を管理することになります。成年後見人には家族などの親族がなれますし、不動産など多くの財産を保有していて管理が親族では難しい場合は、弁護士や司法書士などの専門家に成年後見人になってもらうこともできます。
交友関係は、葬儀の際に役に立ちます。
また、家系図は、相続の際に役に立ちます。離婚、事実婚などの記載も重要です。亡くなった後、家族も知らない相続人が現れる、というドラマみたいなことも現実にはあります。
そして、終末医療についての本人の希望を記しておくことにより、家族の覚悟もできます。ただ、エンディングノートに終末医療についての本人の意思が書かれていても、病院によっては効力がないケースもあります。延命治療はしないなどの強い意志がある場合は、いざというときに効力のあるものを残しておきましょう。
保険もエンディングノートを活用する
生命保険や医療保険の保障内容なども、エンディングノートに記しておきましょう。
人生の最期を迎える場所として、圧倒的に多いのが病院です。医療保険は生きている間に保障してもらう、本人のための保険です。
医療保険に加入していたことが亡くなった後に分かったのでは、本人が保険料を払っていたにもかかわらず、本人のために活用せずに終わってしまいます。
医療保険の請求は原則本人がするものですが、病状によってはできない場合がありますので、家族が請求できる指定代理人請求特約が付いているか確認しておくとよいでしょう。
生命保険や年金保険などは、本人が亡くなった後、家族が請求手続きをします。家族の今後の生活のために残したものですので、もれなく請求できるように明細をしっかりエンディングノートに記しておきましょう。
家族とのコミュニケーションを大事に
エンディングノートが出来上がったら、まずは夫婦で確認してみましょう。
もれているものがあるかもしれませんし、これも書いておいてほしいというものもあるかもしれません。そして、お子さまや、お子さまがいない方なら相続人にあたる親族などにもエンディングノートの存在を知らせ、できれば、ご自身の想いを語ってコミュニケーションを図っておくのがベストです。ただ、家族には様々な形態があり、必ずしも家族同士のコミュニケーションがとりやすい状態とは限りません。そのような場合にも、エンディングノートは役に立つのかもしれませんね。
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