公的年金の基礎を学ぶ、3つの年金と受給資格期間
老齢年金は今後65歳支給に統一される
現在の日本の年金制度には、まず、20歳以上60歳未満のすべての国民が加入を義務づけられている国民年金があります。国民年金は、20歳以上の学生や自営業者などが、第1号被保険者として平成26年度は毎月15,250円の保険料を支払っています。
会社員や公務員の場合は、第2号被保険者として厚生年金や共済年金の保険料と一緒に支払っています。
そして、会社員や公務員の妻など(年収130万円未満の被扶養配偶者)は、第3号被保険者として、配偶者が加入している厚生年金や共済組合が一括して負担しているため、個別の保険料負担はありません。
国民年金に受給資格期間(原則25年以上、平成27年10月からは10年以上に短縮される予定)を満たして加入していた人は、65歳から老齢基礎年金を受け取ることができます。平成26年度価額では、満額(40年間保険料を納めた場合)が年間772,800円です。
さらに、会社員や公務員の場合は、これに厚生年金や共済年金の上乗せがあります。厚生年金や共済年金は、働いていた期間の収入に応じた年金額になるので、人によって金額の違いはありますが、原則65歳から老齢厚生年金や退職共済年金を受け取ることになります。
ちなみに、現在は一定の要件を満たしていれば、経過措置で60歳から一部の年金額(特別支給の老齢厚生年金など)を生年月日に応じて受け取れるようになっていますが、昭和36年4月2日以後に生まれた人(厚生年金加入者の女性は昭和41年4月2日以後に生まれた人)は、原則65歳にならないと年金は支給されません。
障害年金、遺族年金は公的年金の重要な保障機能
それから、年金というと、老後にお金を受け取れる「老齢」に対する給付しかないように思われている方がいるかもしれませんが、公的年金は、「障害」や「死亡」に対しても給付があります。それが障害年金や遺族年金です。
まず、障害年金には、国民年金から給付される障害基礎年金、厚生年金や共済年金から給付される障害厚生年金、障害共済年金があります。
1級、2級の障害状態になると受け取れるようになるのが、障害基礎年金です。1級で年間966,000円、2級で年間772,800円の年金が支給されます(いずれも平成26年度価額)。障害状態が一生続けば、一生受け取れることになります。
そして、厚生年金や共済年金の加入者は、それに上乗せして1級、2級の障害厚生年金や障害共済年金を受け取れます。また、厚生年金、共済年金の加入者は、程度の軽い3級の障害状態でも3級の障害厚生年金や障害共済年金が給付されるようになっています。さらに、3級よりも程度の軽い障害状態でも、一定の要件を満たしていれば、障害手当金が一時金として支給されるようになっています。
そして、遺族に対する保障として支給される遺族年金も、遺族基礎年金、遺族厚生年金、遺族共済年金があります。
遺族基礎年金は、年金制度でいう「子」がいる場合に、「子のある配偶者」または「子」に対して支給されます。年金制度における「子」とは、「18歳到達年度末までの子、または、1、2級の障害状態にある20歳未満の子」です。
子どもが1人いる配偶者には年間995,200円、子どもが2人いる配偶者には年間1,217,600円が支給されます(いずれも平成26年度価額)。ただし、子どもが18歳到達後、最初の3月31日までの給付となります。
厚生年金や共済年金の加入者が死亡した場合は、これに上乗せされるかたちで遺族厚生年金や遺族共済年金が支給されるわけです。なお、遺族厚生年金や遺族共済年金は子どもがいるかどうかは要件になっていないので、「子のない妻」でも受け取れるようになっています。ただし、「30歳未満の子のない妻」は5年間の有期給付となります。
民間の保険への加入は公的保障で足りない分を検討する
このように、公的年金から受けられる保障には、老齢、障害、死亡という3種類があり、それぞれの保障はそれなりに手厚いものとなっているのです。民間の保険への加入を検討する場合は、健康保険の制度なども含め、社会保険でカバーできない部分を備えようとするスタンスが賢い加入の仕方となるでしょう。
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コラム執筆者プロフィール
菱田 雅生 (ヒシダ マサオ) マイアドバイザー.jp®登録 - 早稲田大学法学部卒業後、大手証券会社を経て独立系ファイナンシャルプランナーに。平成20年、ライフアセットコンサルティング株式会社を設立。
資産運用や住宅ローンなどを中心に、相談業務や原稿執筆、セミナー講師等に従事している。
ファイナンシャルプランナー 菱田 雅生
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