最低限身に付けておきたい「金融リテラシー」
金融リテラシーとは
「リテラシー」(literacy)とは、もともと「読み書きできる力」などを意味する言葉ですが、「金融リテラシー」という場合は、特に、人生にかかわるお金全般についての基礎的な知識や判断力のことを指すのが一般的です。人それぞれのライフプラン上の目標(夢や希望)を達成していき、幸せな生活を送るためには、上手にお金を貯めて上手に使っていくことが重要になります。そのためには、金融や経済の仕組み、金融商品などに関する知識が多少なりとも必要になってきます。そのような「金融リテラシー」を少しずつでも高めていくことが重要なのです。
金融庁の「金融経済教育研究会・報告書の概要(平成25年4月30日)」では、「最低限身に付けるべき金融リテラシーの4分野・15項目」について報告されています。
分野1.家計管理(1)適切な家計の収支管理(赤字解消・黒字確保)を習慣化する 分野2.生活設計(2)ライフプランの明確化およびライフプランを踏まえた資金の確保の必要性を理解する 分野3.金融知識および金融経済事情の理解と適切な金融商品の利用選択【金融取引の基本としての素養】(3)契約にかかる基本的な姿勢を習慣化する(契約書をよく読み、相手方や日付・金額・支払条件などが明記されているかなどをチェックし、不明点があれば確認するなど) 【金融分野共通】(6)金融と経済の基礎となる重要な事項(単利・複利などの金利、インフレ、デフレ、為替、リスク・リターンなど)や金融経済情勢に応じた金融商品の利用選択について理解する 【保険商品】(8)自分にとって保険でカバーしたいリスク(死亡、病気、火災など)が何かを理解する 【ローン・クレジット】(10)住宅ローンを組む際の留意点を理解する
(11)無計画・無謀なカードローンやクレジットカードなどの利用を行わないことを習慣化する 【資産形成商品】(12)人によってリスク許容度は異なるが、仮に高いリターンを得ようとする場合には、より高いリスクを伴うことを理解する 分野4.外部の知見の適切な活用(15)金融商品を利用するにあたり、外部の知識やアドバイスを適切に活用する必要性を理解する |
資料:金融庁「金融経済教育研究会・報告書の概要(平成25年4月30日)」をもとに執筆者作成
分野1の「家計管理」や、分野2の「生活設計」のところは、多くの人がなんとなく重要であることはわかっていると思いますが、中学校や高校、大学などで教わるものではないため、具体的にどのように考え、何から取り組むべきかがわかりにくい項目だといえるでしょう。また、こうすれば家計管理や生活設計が上手にできるという明確な方法、特に、全ての人に通用する確実な方法があるかというと、人それぞれの価値観の違いや置かれた環境の違いなどがあるため、普遍的な方法を導き出すのが困難であるということも実際問題としていえます。
さらに、分野3の「金融知識および金融経済事情の理解と適切な金融商品の利用選択」については、取り引きの経験を積んだり、商品知識を勉強したりしていくことが重要であることをいっているわけですが、なかなか一朝一夕に身に付けられるものではありません。特に、資産形成や資産運用については、その道のプロとされるアナリストや経済評論家、ファイナンシャルプランナーなどであっても、その人それぞれの考え方があって、誰の意見が一番正しいとは一概にいえない世界でもあります。結局のところ、10年後、20年後、30年後の世の中を正確に見通せない限り、どのような運用方法がベストかはわからないのです。つまり、将来のことを正確に見通すことは誰にもできないということは、本当に有利な運用方法は正確には誰にもわからないわけです。
専門家の意見でも比較検討が重要
とはいえ、経済や金融に関することや、株式市場などのマーケットに関すること、さまざまな金融商品の商品内容に関することなどを知っておくことはとても重要です。金融商品や保険商品、ローン商品のなかには、相対的にコスト負担の重い商品があったり、確率論上不利だと思えるような商品があったりもします。そのような商品を自分の目で見分けられるようになることが重要ですので、少しずつでも学んでいく姿勢が欠かせないといえるでしょう。
また、最後の分野4の「外部の知見の適切な活用」としては、ファイナンシャルプランナーなどの専門家を有効活用することで、足りない部分をカバーできるようになることを知っておくべきだということです。専門家自体もそれぞれで考え方が違う場合があるので、専門家の言ったことをうのみにするのではなく、複数の意見を比較検討することが重要であることも知っておくとよいでしょう。
これらのことは、日常生活を送っていくなかで、少しずつでも意識していくことが重要です。世の中、知らないと損をすることがたくさんあります。知らずに損をすることのないように、自分と家族を守るためにも、金融リテラシーを身に付けていくようにしましょう。
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コラム執筆者プロフィール
菱田 雅生 (ヒシダ マサオ) マイアドバイザー.jp®登録 - 早稲田大学法学部卒業後、大手証券会社を経て独立系ファイナンシャルプランナーに。平成20年、ライフアセットコンサルティング株式会社を設立。
資産運用や住宅ローンなどを中心に、相談業務や原稿執筆、セミナー講師等に従事している。
ファイナンシャルプランナー 菱田 雅生
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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