相続に活かせるエンディングノートのすすめ
人生の最期を迎えるために行う活動を称した「終活」という言葉が広まり、高齢者を中心に自分自身の終末期に向けて準備をすることへの関心が高まるなか、「エンディングノート」を書こうと思われる方も増えてきているようです。相続においても役立つエンディングノートの効用についてみていきましょう。
エンディングノートとは
エンディングノートとは、一般的に、人生の終末期に起こりうる事態に備えて、自分の希望や家族への伝言などを記しておくものです。さまざまなタイプのエンディングノートが書店で販売されており、自治体やNPO等で無料配布されていることもありますが、いずれも主に次のような内容が書けるものになっています。
・延命治療等についての希望 ・介護についての希望 ・葬儀に対する希望、埋葬、墓碑や祭祀について ・自分自身について(生い立ち、プロフィール、家系図) ・相続に際しての考え(財産の内容、所在、処分方法、遺言の有無) ・親族や知人へのメッセージ ・連絡先リスト など |
病気等で判断能力や意思疎通能力をなくしたり、自分の想いや考えを伝えることができないまま死亡してしまったりすることもあるため、元気なうちにエンディングノート等に自分の考え方を書き残しておきたいものです。
そうすることによって、本人のためにどうしたらいいかを家族が迷って思い悩むことが減り、本人の希望に沿った対応をすることができます。エンディングノートは、自分はもとより、大切な家族のためにも大いに役立つものなのです。
相続において役立つポイント
では、エンディングノートが相続においてはどのように役立つのか、ポイントをみていきましょう。
・生い立ちや家系図・親族関係図の記入
自分の相続人が誰になるのか確認できます。疎遠になっていて見落としがちな、離婚した配偶者との子どもや、異父母の兄弟姉妹等、兄弟姉妹の代襲相続人(甥や姪)の存在にも気づきます。相続の際に相続人の関係が複雑になりそうであれば、あわせて遺言を書くようにしましょう。家系図の記入にあたっては、一度ご自分の出生からの戸籍謄本を揃えてみることもおすすめします。
・財産の内容、所在の記入
財産がどこにどれくらいあるのかを自身で整理、把握でき、相続の際に想定される諸問題を回避するための対策を検討することができます。
- 相続税がかかりそう →税軽減、納税資金準備のために今からできることは?
- 分割でもめそうな財産がある →生前贈与しておくか?遺言を書いておくか?
- 生命保険契約がある →死亡保険金の受取人を変更する必要はないか?
- 生前に処分しておくべき財産がある →いつどのように処分するか?
不動産は登記事項証明書で権利関係も確認しましょう。代々受け継がれている土地等の場合、名義が先代のままになっていたり、抵当権が抹消されていなかったりということもあります。名義変更や抵当権抹消登記をしておきましょう。
貸付金も負債も相続財産です。連帯債務者、連帯保証人となっていないかも含め、契約書や証書類の整理をして相手先や残高を明確にしておくことで、相続人の調査の負担が減り、相続の承認・放棄の判断も早めにできます。
・遺言について記入
財産の分割方法の希望については、法律に定める方式に従って遺言を作成して指定する以外に法的効力を持たせることができません。エンディングノートに書いておくだけでは法的効力がないため、別途遺言を作成するようにしましょう。
遺言を作成しているか、どこの公証役場で作成したかなどを記入しておくと、相続人が遺言書を探す手間が省けたり、最終的に見つけられなかったりといったことが防げます。
・親族や知人へのメッセージの記入
遺言で法定相続分と違う分割の指定や、相続人以外への遺贈を行うといった場合、「付言事項」として、どうしてそのような遺言にしたか、理由や気持ちを書いておくことができます。付言事項を残すことで相続人たちの理解が得られ、遺言内容をめぐっての争い防止につながりますが、この付言事項に代わるものとして、感謝の気持ちと共に分割にあたってのメッセージを記しておくこともできます。
エンディングノートで充実した人生を
エンディングノートは高齢で余命わずかになって書くものと考えている方も多いようですが、元気でないと書けませんし、もしものことはいつ起こるかわからないので、今すぐにでも書いておきたいもの。書いて準備して安心することで、これからの人生がより楽しく充実したものになっていくでしょう。
相続に活かせるだけでなく、これからのライフプランにもつながるエンディングノートをさっそく書きませんか。
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コラム執筆者プロフィール
平川 すみこ (ヒラカワ スミコ) マイアドバイザー.jp®登録 - CFP®、相続アドバイザー協議会認定上級相続アドバイザー、相続診断士。
「お金の不安を解決して、みんなでHAPPYに!」とフリーのファイナンシャルプランナーとして、相続やライフプランに関することを中心に、個別相談、セミナー、執筆等を通じて幅広く活動中。
エンディングノートの普及にも力を入れている。
ファイナンシャルプランナー 平川 すみこ
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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