子どもが多い家庭、子どもをもたない家庭
少子高齢化時代といわれて久しくなりますが、夫婦の経済的な問題、医療技術向上によるもの、産業構造の変化によるもの等、いくつかの要因が考えられています。しかし、そういう社会構造の中でも、たくさんの子どもがいる家庭があれば、子どもがいない家庭もあります。今回は、自らの意思で子どもをもたないいわゆるDINKSと、子どもを多くつくる家庭を選択した場合の違いについてご案内します。
子どもにかかるお金
表1の「学校種別学習費総額の推移」より、中学卒業までの1人当たりの学習費は、約387万円(公立幼稚園3年+公立小学校6年+公立中学校3年の合計)かかります。これに公立高校+私立文系大学の7年間の学習費の約502万円(コラム「結婚すると決めたら考えておくべき事(前編)」を参照)を加えると、子ども1人当たりの教育費は約889万円になります。
一方、人事院勧告(表2:費目別、世帯人員別標準生計費 平成25年)のデータを元に子どもが1人増えた場合の生活費は年間約32万円増加します。
(計算方法:世帯人員3人と4人、および4人と5人の世帯人員別標準生計費合計の差から子どもが1人増える毎に生活費が月約2.7万円とした)
この事から、子どもが1人増えると、私立大学卒業までの「生活費+学習費」は約1,593万円増える事になります。2人兄弟だと約3,186万円、4人兄弟だと6,372万円になります。
(計算方法:生活費の増加32万円×22年+学習費889万円とした)
子どもが多い家庭にするには、経済的な側面で考えると非常に厳しいとも言えます。
子どもをもたないメリットとデメリット
子どもをもたないメリットは、やはり経済的な負担と子育てにかかる時間的な制約がない事が挙げられます。その分、自分たちへの経済的、時間的な投資が可能です。
一方、デメリットは、老後の生活をどうするのかという問題も考えられますが、子どもにかかるはずの経済的な部分を老後生活費に充てる事によって、その問題は解決できるものだと考えられます。むしろ、子どもをもたない方は老後生活も楽しむための準備をしている方が多いようです。
しかし、後継者がいないという問題は残ります。後継者のいない方の場合は、お墓の問題が大きな悩みの種になることが多いですし、最後に誰がみとってくれるかという問題もあります。
子どもが多い場合のメリットとデメリット
子どもが多い場合の最大のデメリットは、経済的な負担と言えます。4人兄弟だと子どもをもたない家庭と比べて6,372万円の負担増になります。また、手のかかる時期だと時間的に制約されます。ただ、時間的な制約については、あるママさんから「幼い子ども1人だと目が離せないけれど、2人だと一緒に遊んでいるので、逆に家事等に専念できる」という意見をいただいた事があります。つまり、子どもが1人増えたからといって、必ずしも時間的制約が比例的に増えるわけではなく、むしろ精神的には楽になる場合もあるようです。
一方、メリットとしては、にぎやかな家庭が築ける事が第一で、子どもをもたない家庭ではデメリットだった後継者や老後の不安も小さくなるでしょう。ただ、相続等で兄弟が争うような事態にならない配慮は必要になります。
ちなみに、サラリーマンが加入する健康保険や民間の家族傷害保険、個人賠償保険は、子どもが多くても保険料は変わりません。
子どもが多い家庭を応援する自治体
少子高齢化の社会問題は、国の経済発展に悪い影響を与える懸念があるので、政府としても少子化対策担当大臣を配して対策を検討、推進しています。もちろん、地方自治体もこの問題に積極的に取り組んでいて、例えば保育園に入所できない待機児童数をゼロにするための施策を進め、2013年4月に横浜市は待機児童数ゼロを達成しました(実はその年の10月、231人になってしまいましたが、横浜市は、待機児童数ゼロになったのが呼び水となって転入者が増えたのが原因としています)。
ここでは自治体の少子化対策の活動の例として、子どもの多い家庭づくりを応援している福島県矢祭町のケースをご案内いたします。
福島県東白川郡矢祭町(やまつりまち)は、福島県中通りの最南端に位置する人口約6,000人の町。住民基本台帳ネットワークシステムに接続されていない唯一の自治体として有名です。また、いわゆる「平成の大合併」といわれる市町村の統合には参加せず、自立する自治体を目指しています。
矢祭町では、「矢祭町すこやか赤ちゃん誕生祝金」と称して、出産時に祝金が支給されます。ユニークなのは、1人目、2人目はそれぞれ10万円ですが、3人目になると誕生祝金として50万円。3人目からは健全育成奨励金として2歳から11歳まで毎年5万円、合計50万円も支給されますので、2つの祝金を合わせると100万円になります。これが4人目になると誕生祝金が100万円、5人目だと150万円になります。これだと、経済的な負担も少しは軽くなりますよね。子育て以外にも色々なユニークな行政サービスを提供しています。さすが「小さくとも輝く町」というキャッチフレーズどおりの町です。
一方、老後のセカンドライフを支援する自治体もあります。今回は詳しい案内をしませんが、例えば、愛知県では「セカンドライフは農あるくらしでいきましょう!」と称して、農業塾や農業経営モデルをつくる等の就農支援をしています。また北海道栗山町等では、“セカンドライフ”だけでなく、広く就農支援を行っています。
子どもを持たない家庭のセカンドライフとして、ひとつの生き方のヒントになるのかもしれません(もちろん、子どものいる家庭も利用可能です)。
結論:2人の人生観で未来は変わる
まとめに入りたいのですが、子どもが多い家庭と子どもをもたない家庭のメリット・デメリットを比較したとしても、メリット・デメリットだけでは量れない価値観というものがあります。結局、2人の人生観や工夫によって、デメリットもメリットに変える事は可能です。重要な事は、2人の人生観のすり合わせをしっかりしておく事だと思います。
-
コラム執筆者プロフィール
松山 智彦 (マツヤマ トモヒコ) マイアドバイザー.jp®登録 - CFP®、講師業、ITコンサルタント、俳優。
1964年大阪生まれ。
証券会社・生損保のSEとして、また証券ネット取引システム立ち上げに参画。
2003年にファイナンシャルプランナーとして独立、各種資格・セミナー講師などで活躍。
また俳優ドナルド松山として、舞台、ドラマ、映画等に出演。
-
コラム監修者プロフィール
山本 俊成 (ヤマモト トシナリ) マイアドバイザー.jp®登録 - ファイナンシャルプランナー。
大学卒業後、株式会社三和銀行(現三菱UFJ銀行)入社。
2003年、外資系生命保険会社入社。
2005年、総合保険代理店株式会社ウィッシュ入社。
2010年、株式会社ファイナンシャル・マネジメント設立。
銀行と保険会社に勤めていた経験を活かし実務的なコンサルティングを行う。
ファイナンシャルプランナー 松山 智彦
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
※掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。