子どもができたら考えるお金&保険 家族が増えた時の家計2 ~子育て支援制度編
子育てには、お金がかかりますが、国の制度として出産から進学までさまざまな支援制度があります。今回は、出産から高校卒業までに、どのような支援を受けられるのかを見てみましょう。
1.出産費用と出産育児一時金(家族出産育児一時金)
出産にかかる費用は、「第78回社会保障審議会医療保険部会」資料(平成26年 厚生労働省保険局作成)によれば、平成24年度の全国平均額で、486,376円となっています。妊娠・出産は、病気ではないので、異常分娩(帝王切開)等の場合を除くと、検査や分娩費用は全額自己負担になります。
また、出産費用以外にも新生児の衣類、育児に必要なものを揃えるのであれば、その費用も必要になります。
一方、加入している健康保険等から、「出産育児一時金」または「家族出産育児一時金」として、1児につき42万円が支給されます。実際に出産にかかる平均的金額と比較すると、支給される金額の方が少ないことになりますが、このような場合は、出産にかかった費用を、他にかかった医療費と合算し、医療費控除として(健康保険等からの給付金額を引いて)確定申告すると、所得税等が還付される場合があります。
2.働き続けるのなら ―出産手当金と育児休業給付金―
本人(母親)が働いていて、健康保険に加入していれば、産前産後の休業期間中、給与が支給されない場合、「出産手当金」が支給されます。支給期間は、出産予定日以前42日から、出産の翌日以後56日までの間(予定日が遅れた場合はその分がプラス)で、支給額は健康保険により異なる場合がありますが、1日につき標準報酬日額(標準報酬月額÷30日)の3分の2になっているところが多いです。
また、雇用保険に原則1年以上加入している人が、1歳未満(保育園への入所ができない場合は1歳6カ月未満)の子を養育するために育児休業し、給与が一定水準を下回った場合には、「育児休業給付金」が支給されます。支給額は、休業開始前の賃金の50%です(平成26年4月1日以降に育児休業を開始した人は、開始から180日目までは67%)。
この育児休業は、男女を問わず取得することができ、育児休業の特例制度である「パパ・ママ育休プラス」を利用して、両親がともに育児休業する場合、原則1歳2カ月まで延長が可能になっています。
ただし、育児休業給付金の支給期間は最大1年間です(保育園への入所ができない場合等は1歳6カ月未満まで支給対象になります)。
3.子育て支援策
国の支援策としての子育て関連手当は、支給される金額や条件がたびたび変更・改正されていて、ここで紹介する現制度も平成24年に改定されたもので、親の所得条件が設けられています。
また、子育て支援の一方で、16歳未満の扶養控除が廃止されたので、税金面では負担が重くなっているともいえます。
① 児童手当
0歳から中学校を卒業するまでの子ども1人に対して「児童手当」が支給されます。金額は、子どもの年齢、子どもを扶養している親の収入によって違いがありますが、親の収入を見る場合、共働きでは、収入の高い方を受給者として考えます。
親(受給者)が所得制限額未満の場合 | 3歳未満 | 月額15,000円 |
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3歳以上小学校修了前(第1子、第2子) | 月額10,000円 | |
同上 (第3子以降) | 月額15,000円 | |
中学生 | 月額10,000円 | |
親(受給者)が所得制限額以上の場合 | (特例給付) 月額5,000円 |
※所得制限:扶養親族 1人(660万円)、2人(698万円)、3人(736万円)
② 高等学校等就学支援金制度(平成26年4月入学者からの新制度)
支援金は、生徒や保護者が直接受け取るのではなく、学校が受け取り、授業料等にあてるもので、生徒(保護者)は支援金額分の授業料負担が減ることになります。
所得要件:市町村民税 所得割額が304,200円(年収910万円程度)未満
両親の所得割額を合算
支給限度額は、
全日制 月額9,900円、私立定時制・通信制 月額9,900円、
公立定時制 月額2,700円、公立通信制 月額520円。
私立高校生等の世帯の方には以下の加算があります。
非課税(年収250万円未満程度) | 2.5倍(全日制の場合24,750円/月) | |
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市町村民税 | 所得割額が51,300円未満(年収250万円~350万円程度) | 2倍(全日制の場合19,800円/月) |
所得割額が154,500円未満(年収350万円~590万円程度) | 1.5倍(全日制の場合14,850円/月) |
今、誕生したばかりの第1子が、現制度のもとに受けられる児童手当は、中学卒業までの合計で約200万円になります。一方、第1子が産まれて、大学を卒業させるまでにかかる費用は、すべて公立に進学したとしても700万円以上、私立文系では2,000万円以上、私立医歯大など進学先によっては3,000万円以上になることもあります。ただし、子育て費用で、最も大きな割合を占める教育費は、大学以降、本格的にかかってくるともいえますので、将来の教育費のために、早いうちから準備にとりかかることも可能です。親のライフプランの中で、どのように教育費を備えていけばよいかについては、次回、取り上げてみたいと思います。
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コラム執筆者プロフィール
浅川 陽子 (アサカワ ヨウコ) マイアドバイザー.jp®登録 - 大学卒業後、銀行に勤務。専業主婦を経て、2000年にCFPを取得。
相談業務・執筆の他、FP養成講座、市民講座、DC講習会、小学校・高校での金銭教育授業等、講師としての活動も多い。
得意分野は、ライフプラン、リタイアメントプラン、介護、確定拠出年金、金銭教育。
現在、日本FP協会神奈川支部副支部長。
ファイナンシャルプランナー 浅川 陽子
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