解約返戻金と満期金
生命保険に対する価値観の変化
生命保険は、昔は満期まで加入することが前提とされていました。「解約をするのは損だ」という認識が強かったように思います。私も大学に進学する際には学資保険の満期金で授業料を支払いました。皆さまのなかにも、同じようなご経験をされた方が少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。
現在はというと、大学の学費を目的とした保険にも、学資保険だけでなく、いろいろな選択肢があることに気付かされます。例えば、終身保険や満期までの期間が長い定期保険に加入して、学資が必要な時期に解約し、これまで支払った保険料よりも多い解約返戻金を得ることで教育資金として活用する方法もあります。
解約返戻金と満期金との違いについて
まずは、満期金についてお話しします。満期金とは、保険を契約してから満期まで継続した時に支払われるお金です。満期金がある保険商品は、養老保険や学資保険といったいわゆる貯蓄性の高い保険が例に挙げられます。これに対して、満期金がない保険商品は、保障重視で加入する定期保険が挙げられます。保険料でみた場合、満期金がないものが満期金のあるものよりお手頃とされます。
次に、解約返戻金についてお話しします。解約返戻金とは、保険の契約期間の途中で解約した場合に戻ってくるお金です。加入してから最初の数年間は、返戻金が全くないか、もしくは少ないのが一般的です。満期や保険料払込満了期間に近づくほど、支払保険料総額に対する返戻率(※1)が高くなります。
※1返戻率=解約返戻金÷払込保険料累計
終身保険は、満期という概念がないため、資金が必要なときは保険を解約して解約返戻金を手に入れます。この場合、解約以後の保障がなくなります。
解約返戻金が低く抑えられた保険の利点
近年は、低解約返戻金型の終身保険や満期までの期間が長い定期保険があります。これらの保険は加入してから払込満了期間(もしくは保険会社が指定した期間)までは本来の金額より解約返戻金を少なくする代わりに、お手頃な保険料で加入することができます。保険会社・商品・保険金額が同じであれば、払込期間満了後の解約返戻金は低解約返戻金型でないものと変わらないため、保険料が低く抑えられている分、結果的に貯蓄性が高まります。
定期保険や医療保険では、加入当初から満期まで(または一生涯)解約返戻金がないものもあります。同様の契約であれば、解約返戻金があるものに比べて保険料がお手頃になります。
解約返戻金や満期金にかかる税金
解約返戻金や満期金には、一時所得として税金がかかります。
一時所得の金額=満期保険金(または解約返戻金)-(支払保険料総額-剰余金)-50万円(50万円に満たない場合にはその金額)
課税の対象となる金額=(一時所得の金額)×1/2
よって、支払保険料総額に対する差益が50万円以下、もしくは課税対象となる金額が20万円以下(給与以外のその他の所得も含む)であれば、確定申告は不要となります。支払保険料に対する差益が大きい方の場合は、保険のプロであるファイナンシャルプランナーと相談しながら、一部を中途解約するのも一つの選択肢になるでしょう。
結び 貯蓄性が高い保険を活かすために
保険商品を活用して貯蓄性を高めようとするには、払込期間を短くするか、解約返戻金の返戻率が低い期間を長くするかのいずれかを選ぶことになります。いずれの場合も、決められた期間までは必ず保険料を払い続ける必要があります。どんなに貯蓄性が高い保険商品であっても、保険料を払い続けることができなければ意味はありません。保険の損得を考える前に、保険料を将来にわたって支払い続けることができるか慎重に検討し、その上で満期金や解約返戻金の使いみちや、日々の家計管理の見直しについて考えられてはいかがでしょうか。
ファイナンシャルプランナー 上津原 章
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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