生命保険の保障額の平均
保障は無駄なく。でも、無駄のない保険のかたちは人によって違う。
生命保険のご相談でよく聞かれることの一つに、「保障額が適正かどうか」といったことがございます。わかりやすくいえば、「無駄なく保険に入りたい」といったことです。必要とされる保障額は、仮に同じ年収であったとしても、ライフスタイルによって大きく違ってくるものです。加えて、家族構成や価値観の変化によって保障額が大きくなったり小さくなったりしていきます。
とはいうものの、「他の方はどのくらいの保障額のものに入っているのか?」というのは気になるものです。皆さまのなかにも、職場に来る生命保険会社の営業担当者から、「このくらいの保障額のものに入った方がよいですよ。」などと言われるまま、生命保険に加入された方もいらっしゃるのではないでしょうか。では、平均的な生命保険の保障額は、どのくらいなのでしょうか。
保障額の平均は意外と少ないけれど…。
生命保険文化センターの平成25年度「生活保障に関する調査」(以下「生活保障に関する調査」)によりますと、生命保険加入金額(かんぽ生命・JA共済・生協など含む。グループ保険、団体信用生命保険除く。)の平均は、男性は1,882万円、女性は876万円です。皆さまは、この金額を見て少ないと思われますか。それとも、多いと思われますか。
図1
資料:生命保険文化センター 平成25年度「生活保障に関する調査」をもとに執筆者作成
図1から、年代でみると、お子さまの教育費などで家計支出が大きくなる、30歳代から50歳代の男性の加入金額が大きくなっています。女性は年代による加入金額の差が男性に比べて少ないようです。結婚されて奥さまに万一のことがあったとしても、ご主人の収入だけでも何とかやっていけるという考えもあるのでしょうか。
注目するべきなのは、50歳代の方の加入金額が30歳代や40歳代とさほど変わらないことです。その理由について、平成25年の厚生労働省の人口動態調査による、母親の出生年齢に関する統計に着目してお話しいたします。
図2
資料:厚生労働省「平成25年(2013)人口動態統計(確定数)の概況」をもとに執筆者作成
図2は厚生労働省の調査をもとに、母の年齢・出生順位別にみた出生数をグラフ化したものです。全出生数のうち、母の年齢が30歳から34歳までが35.48%、35歳以降が26.93%となっており、合わせて62.41%となります。
初婚年齢の平均が、平成24年では男性30.8歳、女性29.2歳(内閣府作成「平成26年版 少子化社会対策白書」より)となっており、そのことも出生年齢に影響しているものと思われます。
出生数の統計から、万一のことがあってもお子さまが無事に大学まで進学できる環境をつくるため、少なくとも50歳代半ばまではある程度の死亡保障が必要である方が多いことがうかがえます。
加入金額には満足しているのか?
では、加入している生命保険の保障金額は今のままで足りているのでしょうか。57%の方が足りていないと答えています。将来について経済的な不安があっても、十分な保障が得られていないことがうかがえます(「生活保障に関する調査」より)。
では、希望する死亡保障額はというと、平均額は男性では3,172万円、女性では1,463万円となっています。生命保険の加入金額が最も多い40歳代の希望保障額は、男性は3,963万円、女性は1,604万円となっています。
図1の「生命保険加入金額の平均」の40歳代の加入金額と比較しますと、実際の加入金額に比べ、男性は1,503万円、女性は572万円の開きがあることが分かります。とはいうものの、不足する保障を準備したいかと問われると、いずれは準備するといわれる方も含めると80.9%の方が準備に対して消極的であることがうかがえます。
結びに 保険選びに迷った時は?
これまでみてきたことから、生命保険の必要性は感じながらも十分な保障額のものに加入されていないことがうかがえます。生命保険は、正しい告知と申込書類と保険料のお支払いが整えば、加入した日から必要な保障を得ることができます。保障重視か貯蓄重視かで迷った場合、貯蓄が不十分な方であればまずは保障を重視され、貯蓄は急な支出に対応できる預貯金で行うとよいでしょう。
きっちりと無駄なく保険に加入されたい場合は、ファイナンシャルプランナーと一緒にライフプランを作成され、同時に必要保障額を計算されることをおすすめします。保険とは長いお付き合いになります。万一への備えは長生きへの備えと表裏一体のものです。ご自身やご家族の夢や願いのうち、万一のことがあってもかなえたいものを加入される保険に反映されるとよいでしょう。
ファイナンシャルプランナー 上津原 章
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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