資産運用に必要な数字 その2 ~株式指標
はじめに
株式投資にあたり、どの銘柄を買うか判断するための分析方法として、損益計算書や貸借対照表等の財務諸表を分析する「ファンダメンタル分析」と、過去の株価の動きから分析する「テクニカル分析」の大きく2つの手法があります。
今回は、ファンダメンタル分析で活用される「株式指標」を取り上げます。
会社の利益について
会社の規模が違いますと、1年間の利益額(当期純利益)の規模も異なってきます。
その為、規模の違う複数の会社を比較する場合、「1株当たり当期純利益」を使って比較をします。1株当たり純利益は、英語の頭文字を取ってEPS(Earnings Per Share)と呼ばれます。
計算式は、
<1株当たり当期純利益(EPS)=当期純利益÷発行済株式数>
となります。
1株当たり当期純利益は、株式指標の「株価収益率」を計算する上でベースとなる数字になります。
株価収益率等の株式指標をみる前に、会社の利益が当期純利益に行き着くまでの流れについて、少し説明をさせていただきます。
会社の利益は、
営業利益 → 経常利益 → 当期純利益 の順番で計算されます。
「営業利益」は、その会社の本業による利益になります。
「経常利益」は、営業利益に受取利息や支払利息等営業以外に発生する損益を加減算して求めます。
「当期純利益」は、経常利益に特別利益(例:会社や工場を売却した利益)や特別損失(例:工場火災等で発生した損失)を加減算し、残った利益から法人税等を引いた利益になります。
営業利益が赤字でも特別利益の金額が大きい場合には、当期純利益は黒字になります。
1株当たり純利益を計算する際には、本業できちんと利益がでているかどうか営業利益も確認をしておきましょう。
株価の割安・割高を判断する指数
「株価収益率(PER:Price Earnings Ratio)」は、株価が1株当たり純利益の何倍になっているかを示す指数です。
計算式は、
<株価収益率(PER)=株価÷1株当たり当期純利益(EPS)>
となります。
株価収益率は、相対的にみて現在の株価が「割安か割高か」を判断する指数として活用します。比べる対象は、同業他社の現在のPERやその会社の過去のPERトレンドになります。同業他社や過去のトレンドに比べてPERが低ければ、割安と判断します。逆に高ければ、割高と判断します。
また、上の式のPERの部分を固定して、
<株価=株価収益率(PER)×これからの決算期の予想EPS>
としますと、予想(期待)される株価の目安が計算できます。
例えば、PERが15倍で過去のEPSが100円の時の株価が1,500円だった場合、予想EPSが120円なら、「15倍×120円=1,800円」となり、予想株価1,800円と計算します。
(あくまでも、目安ですのでその通りにいくとは限りません。)
経営の効率性をみる指数
経営の効率性をみる代表的な指数として「自己資本利益率(ROE:Return On Equity)」があります。自己資本を活用してどれだけの利益を生み出したかをみる指数になります。
計算式は、
<自己資本利益率(ROE)(%)=当期純利益÷自己資本×100 >
となります。
自己資本利益率(ROE)は、今年1月に算出がはじまった新しい株価指数「JPX日経400」で、算出の対象とする銘柄を選択する主な判定基準を、
- 3年平均の自己資本利益率(ROE)
- 3年累積営業利益
- 時価総額(選定基準日時点)
としたことから、日本でも注目度がアップしている指数です。
ROEで会社を比較する時の注意点は、同額の総資本、同額の当期純利益の会社を比較した場合、自己資本比率が高い会社は、自己資本比率が低い会社に比べ、ROEが低くなりますので、「総資産利益率(ROA:Return On Asset)」も併せて確認することが必要です。ROAの計算式は、
<総資産利益率(ROA)=当期純利益÷総資産 >
となります。
まとめ
ほかに、会社の純資産から株価の「割安・割高」を判断する「株価純資産倍率(PBR:Price Book-value Ratio)」という指数があります。
計算式は、
<株価純資産倍率(PBR)=株価÷1株当たり純資産(BPS)>
となります。(BPS:Book-value Per Share)
この指数は、PBRが1倍に近づくほど株価が割安と判断します。1倍以下ですと、株価が純資産を下回ることになります。これは、会社が事業を止めて純資産を売却し、株数に応じて売却した金額を株主に返還した方が、株主の利益になる可能性があることを意味します。
しかしながら、現在(2014年7月30日)、日経平均に採用されている銘柄のPBRの平均は1.3倍で、銀行等の金融株を中心にPBRが1倍以下の企業が散見されます。PBRだけで株価の「割安・割高」の判断は困難かと考えます。
そのため、今回は会社の利益に関連する指標に焦点を当てて説明をさせていただきました。
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コラム執筆者プロフィール
恩田 雅之 (オンダ マサユキ) マイアドバイザー.jp®登録 - 1959年東京生まれ。
2004年3月にCFP®資格を取得。
同年6月、札幌にて「オンダFP事務所」を開業。
資産運用をテーマとした個人向けのセミナー講師や3級、2級ファイナンシャル・プランニング技能士取得の講師やライフプラン、金融保険関連のコラムやブログの執筆など中心に活動中。
ファイナンシャルプランナー 恩田 雅之
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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