資産運用に必要な数字 その1 ~経済指標
はじめに
総務省が毎月発表する「消費者物価指数」(表1)によると、確実に物価が上昇してきています。今年の4月、5月の上昇幅が大きい理由は、消費税増税の影響によるところが大きいと思われます。政府等では、消費税増税分と物価上昇分を分けて公表していますが、生活者からみた場合には、支出が増加していることに変わりはありません。
表1:平成26年5月分 消費者物価指数 全国(平成22年基準)
年平均(前年比 %) | 月次(前年同月比 %) | |||||||
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2011年 | 2012年 | 2013年 | 2014年2月 | 3月 | 4月 | 5月 | ||
総合 | ▲0.3 | 0.0 | 0.4 | 1.5 | 1.6 | 3.4 | 3.7 | |
生鮮食品を除く総合 | ▲0.3 | ▲0.1 | 0.4 | 1.3 | 1.3 | 3.2 | 3.4 | |
食料及びエネルギーを除く総合* | ▲1.0 | ▲0.6 | ▲0.2 | 0.8 | 0.7 | 2.3 | 2.2 |
*食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合
出典:総務省統計局
また、安全性の高い金融商品の利回りは、2014年7月15日現在の定期預金(大手都市銀行・1年定期)で0.025%前後、10年固定利付国債の利回りは0.52%前後で、上記の物価上昇に備えるには、心もとない利回りになります。今後の物価上昇に備えるには、ある程度リスクを取った資産運用が必要かもしれません。
このコラムでは、リスクを取った資産運用を考える上で押さえておきたい数字について、「経済指標」、「株式指標」、「為替」という視点からみていきます。第1回は、「経済指標」について解説します。
企業経営者などが考えている景気見通しを知る
まず、企業経営者や購買担当役員等にアンケート調査を行い、今後の景気見通しを判断する経済指標があります。
日本では、日銀が四半期ごとに公表している「全国企業短期経済観測調査」(以下:短観)の中の「業況判断DI」(以下:業況DI)がその指標にあたります。
業況DIによって、企業経営者が現在の状況と3カ月先の業績見通しをどのように考えているかを知ることができます。資産運用を考える上では、3カ月先の見通しが現在の状況より重要になります。
業況DIのアンケート調査は、対象になる企業に現在と今後の景気について「良い」「さほど良くない」「悪い」の3つから選択してもらい、「良い」と回答した企業数から「悪い」と回答した企業数を引いて算出します。
今後の景気見通しに関して楽観している企業が多ければ、業況DIはプラスに、悲観している企業が多ければマイナスになります。業況DIは、大企業、中堅企業、中小企業を、それぞれ製造業、非製造業に分けて発表されます。資産運用を考える上で注目する数字は、東証一部上場企業の比率が高い大企業製造業と大企業非製造業の業況DIかと考えます。
一方米国には、業況DIに似た指数として、「ISM製造業景況指数」(翌月第1営業日に発表)と「ISM非製造業景況指数」(翌月第3営業日に発表)があります。
調査方法は、全米供給管理協会(ISM)が、300社以上の購買担当役員に対して、生産、新規受注、在庫、雇用などについて前月と今月を比較したアンケートを行い、「良い」「変わらず」「悪い」から選択してもらった結果をパーセンテージで表します。50%を上回ると景気が良いと判断され、50%を下回ると景気が下降気味と判断されます。
こちらの指数の発表内容は、インターネットや新聞などで確認することができます。
世界の投資家に最も注目されている経済指標は
2012年の世界のGDPのうち、米国の比率は約22%でした。同年の中国は11.4%、日本は8.2%です。また、米国ではGDPの約70%が個人消費といわれています。すると、世界のGDPの約15%(22%×70%)を米国個人消費が占めていることになり、米国個人消費の大きさがわかります。
その米国個人消費の今後の動向を判断する上で、「米国雇用統計」(毎月第1金曜日に発表)が注目されています。発表内容として、「失業率」や「非農業部門雇用者数」、「週平均労働時間」などがあります。その中で、「非農業部門雇用者数」の増減が、FRB(連邦準備制度理事会:米国の中央銀行にあたる機関)の金融政策の方向性を判断する材料として使われることもあり、最も注目されています。
現在の目安としては、前月に比べて非農業部門雇用者数が15万人以上増えれば、景気は上向き、下回れば停滞気味と考えられています。
まとめ
今回は、上記3つの経済指標に絞って解説しました。
日本の経済指標として選択した「短観」は、日本企業のグローバル化の進展により、海外の景気指標やFRB、ECB(欧州中央銀行)の金融政策等へ投資家の関心が高まっている分、以前に比べ株式市場等への影響度が薄れているように感じます。海外の金融資産を含めたグローバルな資産運用を検討する上では、毎月発表される米国の経済指標が参考になると考え、「ISM製造業(非製造業)景況指数」、「米国雇用統計」を選択しました。
今回解説しました「短観」「ISM製造業(非製造業)景況指数」「米国雇用統計」は、日本経済新聞の「景気指標欄」に表形式で時系列に掲載されています(原則月曜日の朝刊)ので、過去の推移を確認することができます。
次回は「株式指標」についてみていきます。
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コラム執筆者プロフィール
恩田 雅之 (オンダ マサユキ) マイアドバイザー.jp®登録 - 1959年東京生まれ。
2004年3月にCFP®資格を取得。
同年6月、札幌にて「オンダFP事務所」を開業。
資産運用をテーマとした個人向けのセミナー講師や3級、2級ファイナンシャル・プランニング技能士取得の講師やライフプラン、金融保険関連のコラムやブログの執筆など中心に活動中。
ファイナンシャルプランナー 恩田 雅之
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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