結婚すると決めたら考えておくべき事(後編)~未来予想図を作ろう~結婚契約書についても考えてみよう
前編では、結婚後の生活についてデータを中心にご案内してきましたが、後半はいよいよ2人の未来予想図を作るお話です。少々細かい話も出てきますが、婚約直後での今だから、それもまた楽しいものだと思います。
未来への歩き方をすり合わせよう
婚約直後の楽しい時期だと「子どもは何人つくる」という話まではしていることでしょう。きっと夢いっぱいの状態で未来像を語り合っていると思いますが、少し現実に戻って、2人が歩む未来への歩き方をすり合わせておきましょう。例えば、居住環境について、住宅を購入するのか、一生賃貸で過ごすか、社宅が利用できるのであれば、いつまで社宅を利用するか等。子どもをいつつくり、その時の養育をどのように行うか?育児休暇制度の確認も必要です。
表では、過去の相談事例等から私がまとめた、すり合わせておきたい項目を一覧にしましたので、参考にしていただければと思います。
項目 | 例 |
---|---|
・家事分担 | 分担範囲、役割は? |
・収入形態 | 妻(夫)は家事専業?パートタイム?ダブルインカム? |
・キャリアプラン | 脱サラ、転職、定年まで同じ会社 |
・万一の時の生活費 | 保険?貯蓄?・・・保険ならば定期保険?終身保険? 双方で加入する? |
・教育資金の確保 | 学資保険?定期積立?投資信託? |
・子どもの教育方針 | 大学まで出す?習い事は? |
・子どもの数 | 何人にする?どれぐらいの間隔で? |
・子どもが生まれたら | 妻は退職?育児休業する?夫の育児休業は? |
・養育分担 | 夫婦で分担?妻(夫)にお任せする? |
・子どものリスク | 病気・ケガへの備え、いたずら等による賠償リスク |
・日常生活におけるリスク管理 | 病気・ケガへの備え、賠償への備え (医療保険、火災保険、自動車保険・・・保険以外で準備する?) |
・居住環境 | 住宅購入(一戸建て、分譲住宅)、一生賃貸、社宅の利用等 |
・親の世話 | 同居?実家暮らし?老人ホームに入居? |
・老後の生活 | 田舎暮らし?老人ホーム?実家に戻る? 生活費確保は個人年金?貯蓄? |
・お墓 | 新規で作る?それぞれで作る?そもそも作らない? |
・独身時代の趣味等 | 共有できる?個別で管理?やめる? |
資料:執筆者作成
離婚の事も考えておくべきか?
さて、最近は「結婚契約書」というものを作成するカップルが現れています。契約内容は先ほどのすり合わせておきたい項目等が記載されているのですが、契約書なので違反をした場合のペナルティーについても記載されているようです。この「結婚契約書」には、離婚時の財産分与や親権について記載するケースもあるようです。
これから結婚するのに離婚を考えるカップルなんているのか?と考えてしまいますが、平成25年における離婚件数は235,796件で、平成8年以降、20万件を超える状態が続いています(厚生労働省 人口動態統計速報平成25年12月)。約2.2分に1組の離婚が成立している事になります。平成24年では、家庭裁判所における調停・審判による離婚件数は27,478件(内訳は参考データ参照)になり、同年の離婚件数の約11.7%にのぼります。
- 調停離婚件数:27,018件
- 協議離婚届出数:376件
- (24条の)審判:84件
離婚のときに最も問題になるのが、子どもの養育権と財産分与、慰謝料です。どれも協議が必要なものばかりですが、実際には顔をつき合わせて話し合えるという状況は困難なようなので、その場合は、弁護士や調停員等の仲介者を通じて協議することになり、時間的にも精神的にも負担を強いられることになります。何より子どもや周りの人々にも、迷惑をかけることにもなりかねません。
だから、結婚前に離婚について準備しておきたいという考え方にもうなずけます。離婚する事態になった時の問題という視点ではなく、2人が揉めた時に、その揉めごとの解決策に、2人の婚姻生活を続けていくための理念を記載した「結婚契約書」を作っておくのも、一つの方法だとは思います。
ちなみに「結婚契約書」は、公正証書にしておくと公文書に当たるので、法的効力があります。但し、民法第754条では「夫婦間の契約については、第三者の権利を害さない限り、一方的に取り消す事ができる」ことを覚えておきましょう。
まとめ
ここでは結婚前に決めておくべきことをお話ししましたが、婚姻生活は当初描いたような薔薇色の人生が続くとは限りません。むしろ思い通りにいかないことがほとんどだと思って、覚悟を決めておいた方が良いでしょう。「夫婦間の契約は一方的に取り消す事ができる」と民法には定めていますが、夫婦生活を長く続けている人は、思い通りにいかない場合や2人が揉めた場合に、法律やデータでは計れない一定の暗黙のルールを持っているものです。それは息の合った相棒、戦友ともいえるものかもしれません。でも、そこに至るまでには、2人で暗黙的、明示的にすり合わせ、決めごととして作り上げてきた歴史があったことでしょう。
愛があれば、軌道修正はいくらでもできるのです。
どうしても上手くいかない場合には、結婚の先輩である両親にアドバイスを貰うのも一つの手です。親は子どもの歴史を見ていた一番のアドバイザーなのですから。
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コラム執筆者プロフィール
松山 智彦 (マツヤマ トモヒコ) マイアドバイザー.jp®登録 - CFP®、講師業、ITコンサルタント、俳優。
1964年大阪生まれ。
証券会社・生損保のSEとして、また証券ネット取引システム立ち上げに参画。
2003年にファイナンシャルプランナーとして独立、各種資格・セミナー講師などで活躍。
また俳優ドナルド松山として、舞台、ドラマ、映画等に出演。
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コラム監修者プロフィール
山本 俊成 (ヤマモト トシナリ) マイアドバイザー.jp®登録 - ファイナンシャルプランナー。
大学卒業後、株式会社三和銀行(現三菱UFJ銀行)入社。
2003年、外資系生命保険会社入社。
2005年、総合保険代理店株式会社ウィッシュ入社。
2010年、株式会社ファイナンシャル・マネジメント設立。
銀行と保険会社に勤めていた経験を活かし実務的なコンサルティングを行う。
ファイナンシャルプランナー 松山 智彦
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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