自動車保険
2018.07.10
どうなる?自動車保険(任意保険)未加入の車と事故を起こしたら
買い替えたばかりの自動車で家族とドライブを楽しんだB太さんが、自宅近くの交差点で信号待ちをしていたところ、かなりのスピードで近づいてくる後続車に気づきました。「危ない!」と叫んだ直後に大きな衝撃が!赤信号に気づかなかった後続車に追突され、命に別状はなかったものの一家4人ケガを負ってしまい、お気に入りの新車も後部が大きく破損してしまいました。そんなB太さんにさらなるショッキングな事実が判明しました。後続車は任意保険に加入していなかったのです。
相手自動車が無保険だったとき、補償はどうなる?
「自動車保険の加入率、実は74%」でも書きましたが、損害保険料率算出機構の「2017年度自動車保険の概況」によると、任意保険の対人賠償・対物賠償の未加入率は全国で26%、自動車共済も加味すると未加入の自動車の割合は約12%になります。2017年3月末の自動車保有車両数は約8,126万台ですから、約1,000万台もの無保険自動車が存在することになります。
さて、治療費や仕事を休んだ分の休業補償、新車の修理代など、B太さん一家が被った損害に対する賠償金は事故の相手から受け取ることができるのでしょうか。
答えは「相手の財力によります」
事故の相手に、「B太さん一家が被った損害」+「慰謝料」を支払うことのできる財力がある場合は支払ってもらえますが、無保険の加害者側にその財力がなければ、損害賠償金や慰謝料等を支払ってもらうことは現実問題として難しいですよね。
では、事故の相手に賠償金支払い能力がない場合、B太さんは損害額を自分で負担するしかないのでしょうか?
自分の保険が役に立つ!
事故相手からの賠償が望めない場合、自分の保険を使うことで、経済的な損失をカバーすることができます。
表:B太さんの自動車保険でカバーできる内容
※スクロールで表がスライドします。
資料:執筆者作成
痛い思いをして、新車は壊れ、弁償をしてもらえないうえに、自分の保険を使うことで、更新時の等級が下がって保険料が高くなってしまうことを考えると、踏んだり蹴ったりですね。しかし、心配する必要はありません。次のような場合は、保険金を受け取っても、「ノーカウント事故」として、等級をダウンさせずにすむ場合があります。
「車両無過失事故に関する特約」などにより、自分に過失がない場合は車両保険金を受け取っても一般的にはノーカウントとなります。多くの保険会社では車両保険に加入すると自動的に特約も付帯されますが、そもそも特約自体が無いこともありますので、よくご確認ください。
なお、人身傷害保険、搭乗者傷害保険、無保険車事故傷害特約等、主に自分自身や家族のケガに対する保険金を受け取った場合も、一般的にノーカウント事故となります。
B太さんは、経済的負担を最小限に抑えることができそうですね。
事故相手から賠償金の支払いを望めない場合の話をしましたが、支払いに関することなどの示談交渉は誰が行うのでしょうか。
自分に過失がないときは、保険会社は示談交渉をしてくれない!
自動車保険の対人賠償保険や対物賠償保険では、被保険者に代わって保険会社が示談交渉を行ってくれるサービスがあります。事故相手は任意保険に加入していないので、自分で交渉を行うか、自分の負担で弁護士を依頼しなければなりません。実は上記のように、自分に過失がない場合には、B太さんも自分で交渉を行わなければいけないのです。
なぜなら、B太さんの保険会社が示談交渉を行ってくれるのは、自分の自動車保険の対人賠償や対物賠償を使うときだけなのです。赤信号で停車しているところを追突されたB太さんのように本人に全く過失がない事故のことを「もらい事故」といい、追突してきた相手への賠償責任は生じません。「もらい事故」では対人賠償や対物賠償の責任が生じませんので、保険会社の示談交渉サービスを受けられないのです。
しかしB太さんは、ある特約を付帯していたので、依頼した弁護士の費用を自分の保険で賄うことができました。B太さんが付帯していた特約は「弁護士費用特約」です。弁護士費用特約を付帯していれば、自動車事故の相手に法律上の損害賠償請求をするために依頼した弁護士の費用や法律相談の費用等を補償してもらえます。ただし、事前に保険会社に報告するなどの注意点があります。
保険はイザというときのために加入するものです。頼りたいときに「示談交渉は行えません」などと言われたら辛いですよね。自分が契約している保険の内容がどのようなときに役立つものなのか、一度しっかりと確認しておきましょう。
- 監修者 柳澤 美由紀 やなぎさわ みゆき
- CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
- 関西大学社会学部卒。大学時代に心理学を学び、リクルートグループに入社。求人広告制作業務に携わった後、1997年ファイナンシャルプランナー(FP)に転身する。
相談件数は800件以上。家計の見直し、保険相談、資産づくり(お金を増やす仕組みづくり)が得意で、ライフプランシミュレーションや実行支援も行っている。
家計アイデア工房 代表
- ※ この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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