自動車保険
2018.06.26
自分の運転で家族にケガを…そんなときのための「人身傷害保険」
買い物から帰ってきたA子さんが駐車場に自動車を入れようとしたとき、子どもが「トイレに行きたい!」と叫びました。いつもは子どもだけを先に降ろすことはしないA子さんですが、トイレコールには勝てませんでした。子どもが自動車から離れたことを確認し、自動車をバックさせようとしたところ、バックミラーに子どもの姿が!自動車におもちゃを忘れたことに気づいた子どもが戻ってきたのでした。A子さんは間一髪のところで気づきましたが、もしも自分の運転で家族にケガを負わせてしまったとき、自動車保険では補償されるのでしょうか。
被害者が家族のとき、任意自動車保険の対人賠償保険は支払われる?
A子さんは直前に気づきましたが、もしも家族にケガを負わせてしまい、「運転者:A子さん」「被害者:A子さんの子ども」となったとき、任意自動車保険の対人賠償保険では、補償の対象になるのでしょうか?
答えは、「NO」です。
保険には、補償内容等を定めた「約款」というものがあります。損害保険料率算出機構発行の「自動車保険標準約款」によると「保険金を支払わない場合‐その2 対人賠償」には以下のように書かれています。
表1:対人賠償保険で保険金が支払われない場合
※スクロールで表がスライドします。
資料:損害保険料率算出機構「自動車保険標準約款」をもとに作成
運転者であるA子さんの子どもが被害者のときは、表1の(2)に該当しますので、対人賠償保険では保険金は支払われないのです。
それでは、自賠責保険ではどうなのでしょうか。
自分の運転で家族にケガを負わせてしまったとき、自賠責保険では支払われる?
もしもA子さんが戻ってきた我が子に気づかずひいてしまった場合、自賠責保険では支払いの対象になります。自賠責保険も自動車事故で「他人」をケガまたは死亡させてしまったことへの補償という意味では対人賠償保険と同じですが、ひとつ、大きく違うところがあります。対人賠償保険では家族は他人に含めませんが、自賠責保険では家族も他人に含まれるのです。
しかし自賠責保険には、死亡3,000万円、後遺障害75万円~4,000万円、傷害120万円という限度額があり、十分な補償額とはいえないでしょう。
自賠責保険の場合、もう一つ注意点があります。それは、自動車事故でケガまたは死亡させてしまった相手が、その自動車の所有者だった場合には、保険金支払いの対象とはならないということです。
つまり、夫が所有する自動車を妻が運転していて夫にケガを負わせてしまった場合には、「家族も他人」の自賠責保険でも保険金は支払われないのです。この場合、「家族は他人ではない」任意保険の対人賠償保険でも保険金の支払い対象ではありません。
それでは、万一、自分の運転で家族をケガまたは死亡させてしまったときの補償は何で備えたらよいのでしょうか。
頼れる保険、人身傷害保険
万一、自動車事故で家族をケガまたは死亡させてしまったときに頼れる保険、それは、任意保険の人身傷害保険です。
人身傷害保険は、自動車事故によるケガまたは死亡させてしまったときに保険金が支払われる保険です。「車内(契約自動車に搭乗中の人)のみ補償」と「車内・車外ともに補償」のタイプがあり、自分や配偶者・同居の親族・過去に婚姻歴のない別居の未婚の子も補償範囲に含まれます。車内・車外ともに補償されるタイプにしておくと、契約の自動車に搭乗中だけでなく、車外にいる家族にケガを負わせてしまったときにも補償されるので、より安心ですね。
表2:家族にケガを負わせてしまったときの補償の範囲
※スクロールで表がスライドします。
※運転者の状況等により、「○」でも保険金が支払われない場合もあります。
資料:執筆者作成
自動車事故はケガをした人もさせた人も辛い出来事です。まして愛する家族にケガを負わせてしまったとしたら……。せめて経済的な負担だけでも軽減できるよう、備えておくことをおすすめします。
- 監修者 柳澤 美由紀 やなぎさわ みゆき
- CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
- 関西大学社会学部卒。大学時代に心理学を学び、リクルートグループに入社。求人広告制作業務に携わった後、1997年ファイナンシャルプランナー(FP)に転身する。
相談件数は800件以上。家計の見直し、保険相談、資産づくり(お金を増やす仕組みづくり)が得意で、ライフプランシミュレーションや実行支援も行っている。
家計アイデア工房 代表
- ※ この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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