自動車保険
2018.05.22
自動車保険の加入率、実は74%
警察庁交通局「平成29年中の交通事故の発生状況」によると、平成29年に発生した交通事故は約47万件となっています。事故を起こしてしまったとき、大きな力になってくれるのが自動車保険です。ところが、損害保険料率算出機構の「2017年度自動車保険の概況」によると、任意の自動車保険の対人賠償・対物賠償の加入率は、全国平均で約74%との結果が出ています。保険未加入車が事故を起こしてしまったら、どのようなことが待ち受けているのでしょうか。
人身事故での賠償額はどのくらい?
交通事故で他人を死亡させてしまったり、ケガを負わせてしまったりしたとき、その加害者は被害者に対し、次のような費用を支払うことになります。
- <相手がけがをしたとき>
-
- ・治療関係費…診察費・入院費・手術費・通院費など
- ・休業損害…事故で負ったケガによって発生した収入の減少分
- ・慰謝料…精神的および肉体的苦痛に対する賠償
- <相手に後遺障害が残ったとき>
-
- ・逸失利益…身体に障害が残ったことが原因で労働力が低下したため、将来発生するだろう収入の減少分
- ・慰謝料…本人の精神的および肉体的苦痛に対する賠償
- <相手が死亡したとき>
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- ・葬儀費…葬儀・埋葬・墓石などの費用
- ・逸失利益…被害者が生きていたら将来得ることができたであろう収入額から、本人の生活費を差し引いたもの
- ・慰謝料…被害者本人や遺族の精神的苦痛に対する賠償
実際にかかった費用だけでなく、将来的な損失分についても賠償責任を負うことになりますので、高収入の方や今後長く働くことができたであろう若者が被害者の場合に、高額になりがちです。
実際に、どの程度の賠償判決があるのか見てみましょう。
表1:人身事故高額賠償判決例
※スクロールで表がスライドします。
※上記判例は、判例掲載誌等に掲載されている事例
資料:損害保険料率算出機構「2017年度自動車保険の概況」をもとに執筆者作成
表1は高額な賠償判決例ですが、人身事故を起こした場合、自分がその責務を負うことになるかもしれないのです。3億を超える賠償金、あなたはご自身の経済力だけで支払うことができますか?
物損事故の賠償額はどのくらい?
それでは次に、相手の自動車や物を破損してしまった場合の賠償例を見てみましょう。
表2:物件事故高額賠償判決例
認定総損害額 | 被害物件 |
---|---|
2億6,135万円 | 積荷(呉服・洋服・毛皮) |
1億3,580万円 | 店舗(パチンコ店) |
1億2,036万円 | 電車・線路・家屋 |
1億1,798万円 | トレーラー |
1億1,347万円 | 電車 |
※上記判例は、判例掲載誌等に掲載されている事例
資料:損害保険料率算出機構「2017年度自動車保険の概況」をもとに執筆者作成
高額な商品を積んでいるトラックや電車、建物などに被害が及ぶと、賠償金額も高額になりますね。また近年は、「安全運転サポート車」と呼ばれる、「衝突被害軽減ブレーキ」や「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」等を搭載した自動車が増えてきました。使用している部品が増え、事故時の修理費がかさむ可能性がありますが、事故そのものの減少や被害が軽くなることが期待できますね。
自賠責保険に加入しているから大丈夫?
「任意保険に加入していなくても、自賠責保険には加入しているから、それでいいのでは?」と思っている方、本当にそう言えるのでしょうか。自賠責保険だけで、高額な損害賠償に対応できるのでしょうか。
自賠責保険と任意自動車保険の補償内容を表にまとめました。
表3:自賠責保険と任意自動車保険の補償範囲の違い
※スクロールで表がスライドします。
○:補償される、×:補償されない
資料:執筆者作成
表3のとおり、自賠責保険では、相手の自動車・物に対しては補償されません。相手のケガ・死亡に対してのみの補償になりますが、それも十分な金額とはいえないことがお分かりいただけたと思います。
任意保険加入率が74%というのは、あくまでも自動車保険の加入率です。自動車共済の加入状況を加味すると、任意自動車保険および自動車共済に加入していない割合は約12%になります。平成29年3月末の自動車保有車両数は約8,126万台ですから、約1,000万台もの無保険車が日本の道路を走っているかもしれないということです。平成16年にピークを迎えて以降は年々減少傾向にあるとはいえ、1日あたり1,300件もの交通事故が発生しているのです。いつ当事者になっても不思議ではない数字ですね。
自分自身、そして愛する家族を守るためにも、任意の自動車保険には、加入しておきたいものです。
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- 監修者 柳澤 美由紀 やなぎさわ みゆき
- CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
- 関西大学社会学部卒。大学時代に心理学を学び、リクルートグループに入社。求人広告制作業務に携わった後、1997年ファイナンシャルプランナー(FP)に転身する。
相談件数は800件以上。家計の見直し、保険相談、資産づくり(お金を増やす仕組みづくり)が得意で、ライフプランシミュレーションや実行支援も行っている。
家計アイデア工房 代表
- ※ この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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