掲載日:2020年10月30日
「年金」は、老後の生活に大事なお金です。年金について、現役世代はまだまだ先の話と真剣に考える機会が少ないかもしれません。ですが、実は年金について考えたり、年金の知識を得たりすることは、現役世代にとても「大事なこと」です。
今回は、年金のそもそもの話と、年金の知識の大切さをお伝えします。
私たちの老後は、何歳まで生きるか分からない上に、将来の物価水準がどうなるのかも予想できない、不確実なことばかりで、「お金が本当にいくらいるのか?」「貯金できたとしても将来の価値はどうなるのか?」を正確に計ることはできません。
公的年金は、生涯給付が受けられ、人生100年といわれる不確実で長い人生に対応できる「保険」の機能を持っています。
公的年金制度(厚生年金保険および国民年金)は、会社員や自営業者などの現役世代が保険料を出しあい、高齢者世代の年金を負担するという「世代間扶養」の仕組みです。
財源となる、税金(国庫負担)や年金積立金(保険料のうち年金の支払い等に充てられなかった分を積み立てたもの)を合わせたお金を固定し、長期的な年金の給付と負担のバランスをとるようになっています。
今の年金受給者が若いころは、年金制度が不十分だったため、医療も教育も不十分ななか多くの方が自分の収入だけで親を養ってきました。今では、医療や教育が充実し、便利な暮らしができるようになりましたが、時代とともに親と別居する方が増えたことから、個々人で高齢の親世代を支えることが困難となり、社会全体で支えていく仕組みとなりました。
ただ現在は、少子高齢化の進展により、受給する側が増え、負担する側が減るという現象が起こり、公的年金のバランスが崩れてきています。公的年金は本当に大丈夫なの?という不安に駆られる方もいることでしょう。
図1 少子高齢化による年金保険料負担者と受給者のバランス変化
保険料(現役)
年金(高齢者)
釣り合っている同じ年金の水準のまま
高齢化が進むと……
高齢者が増え、現役世代の
一人当たりの保険料負担が増える
保険料(現役)
年金(高齢者)
高齢者が増え、現役世代の
一人当たりの保険料負担が増える
資料:厚生労働省のホームページをもとに執筆者作成
厚生労働省のホームページによると、公的年金制度の財政のバランスをとるために、国は4つの施策を講じています。
これらは(1)~(3)の3点を決めることで年金の財源を固定し、(4)で支出を抑えようという施策です。
図2 国の4つの施策による年金財源と支出のバランス
資料:厚生労働省のホームページをもとに執筆者作成
また、国は今後の年金制度における課題の検討材料として、年金受給年齢を変更した場合や、厚生年金保険加入者を増やした場合などの試算をしています。
このように公的年金は、多くの国庫負担や、国民一人ひとりの支えあいで成り立っている保険の機能を持つと理解しましょう。
公的年金は、誰でも同じように受給できるわけではないので、年金給付におけるルールを知識として得ることは重要です。それは、現役期間の働き方や暮らしに密接にかかわることなので、現役世代にこそ必要な知識なのです。
最低限必要な知識を絞ると、以下の2点になります。
公的年金は、老後の生活を支えるだけでなく、年齢を問わず、万一の事態にも対応するセーフティネットの役割もあります。事故や病気などで障害を負ったときに給付される障害年金や、万一のことが起こったときに給付される遺族年金も、忘れてはならない年金のひとつです。これらの年金は現役世代でも受け取れるため、どの年齢においても、受給できる権利を得ておくことが大事です。
受給する権利は、基本的に保険料を滞納せず納めることで得られます。
国民年金の加入と保険料の支払いは20歳以上の国民の義務ですが、皆がちゃんと保険料を支払えるわけではないため、条件によっては支払わなくてもよい「免除」や、支払いを先送りできる「猶予」という制度があります。これらの制度を利用する際は手続きが必要なので、注意してください。
この手続きを怠り保険料を滞納していると、いざというときに給付を受けられなくなることがあります。保険料の納付が難しいときは、必ず手続きをして、さまざまな年金を受給できる権利を得ておきましょう。
給付される年金の額は、人によって違います。その違いは、受給を開始するまでの間に納めた保険料の額や期間などによります。従って、現役時代にどのような納め方をしたのかが大きく影響するのです。納付の記録は、毎年誕生月ごろに送付される「ねんきん定期便」で確認できます。
一般的に年金額が多くなるのは、「厚生年金保険」に加入している期間が長いケース(会社員や公務員)です。厚生年金保険の保険料は収入によって決まり、多く納めた場合は、そのぶん年金受給額に反映されるので、個人差が出やすくなっています。
終身雇用が難しくなり、働き方が多様化したことなどにより転職をしたり会社を興したりと、保険料を納める40年間は、働き方の大きな変化がある可能性もあります。
働き方を変える際には、年金についても意識する必要があります。一般的に厚生年金保険に加入している期間が短くなるほど、受給できる老齢厚生年金額が少なくなるので、転職時の退職と入社のタイミングは、年金の視点でも重要なポイントです。また、会社員から独立して自営業となる場合は、厚生年金保険から国民年金へと変更することになり、厚生年金保険加入期間が短くなりますので、開業時点から公的年金以外の方法で老後に備えるという「強い意識」が大切です。
生涯受け取れる年金の額は、老後が長い「人生100年」といわれる時代において、現役時代にどう納めるかによって、大きな差となります。上記2点は、基本的な知識ではありますが、忙しさや手続きの面倒さから、考えることを先送りしがちです。後で後悔しないよう、しっかり押さえておきましょう。
受給できる年金のベースが見えてくると、老後のお金の計画も具体化できます。
公的年金に加え、自分自身の蓄えを合わせて考える老後の資金計画もできるでしょう。
最終回は、「自分自身で蓄える老後資金」について解説します。
佐藤 益弘サトウ ヨシヒロ
株式会社優益FPオフィス 代表取締役
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、住宅ローンアドバイザー
Yahoo!Japanなど主要Webサイトや5大新聞社への寄稿・取材・講演会を通じた情報提供、ライフプラン相談&実行サポートをするライフプランFP®として活動している。NHK「クローズアップ現代」「ゆうどきネットワーク」などテレビ番組への出演も行い、産業能率大学兼任講師(主査)、日本FP協会評議員も務める。
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