介護保険は必要?長生きリスクに備えよう!
介護保険は必要?
高齢化が進み介護人口が増えていくなかで、介護への備えも気になるところです。
このコラムに目が留まった方は、「介護の経験がある」または「現在介護をしている等で介護の大変さを感じている」という方が多いのではないでしょうか?
実は、私自身が親の介護を現在進行形で経験しているところです。「介護には、お金も使うけど、それ以上に時間や体力を使うなあ。」と実感しています。
介護で使うお金・時間・体力の3つのうちどれか一つでも欠けてしまうと、家族が介護を継続することは困難になってしまいます。お金という点で不足分を補うことができるのならば、民間の介護保険の契約は大変有効になるでしょう。
人生100年時代、長生きのリスクとして介護について真剣に考えなくてはいけない時代が来ているのです。
増える要介護認定者
図1 要介護(要支援)状態区分別認定者数の推移
資料:厚生労働省「令和2年度 介護保険事業状況報告(年報)」[1]をもとに執筆者作成
図1を見て分かるように、令和2年度末の要介護(要支援)認定者数は約682万人となり、令和元年度末に比べて約13万人の増加となっています。
公的介護保険制度がスタートした平成12年度末の約256万人と比べると、認定者数は約2.7倍に増えており、高齢化に伴い要介護(要支援)認定者数が増加していることがよく分かります。
介護に要する期間は?
次に、介護を心配する年齢や期間を考えてみましょう。平均寿命と健康寿命の差から年数を計算してみます。
図2 介護が必要な期間
資料:厚生労働省「令和元年簡易生命表の概況」[2]および厚生労働科学研究成果データベース「厚生労働行政推進調査事業費補助金(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業)分担研究報告書 健康寿命の算定・評価と延伸可能性の予測に関する研究 藤田医科大学医学部衛生学講座・教授 橋本 修二教授 令和3年度」[3]をもとに執筆者作成
健康寿命が「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義されているので、平均寿命と健康寿命との差を「日常生活に何らかの制限のある期間=介護が必要な期間」と考えた場合、2019年の数値では、男性が72歳過ぎから8.73年、女性が75歳過ぎから12.06年ということが分かりました。
健康寿命は延伸傾向にあり、100歳以上の人口は90,000人を超えています。将来的には介護期間はさらに長くなるかもしれません。
介護にはどのくらいの費用がかかる?民間介護保険は必要?
では、実際に介護にはどれくらいの費用・期間がかかるのでしょうか?
図3 介護費用
※「掛かった費用はない」「支払った費用はない」を0円として平均を算出
資料:(公財)生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」[4]をもとに執筆者作成
図4 介護期間
※介護中の場合は経過期間
資料:(公財)生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」[4]をもとに執筆者作成
月々の介護費用は平均8.3万円、介護期間は平均5年1カ月という結果になっています。
不明という回答を除くと、月々の介護費用は、「15万円以上」が16.3%と最も多くなっています。これは、自宅で介護をするか、有料老人ホームなどで過ごすかによって大きく変わってくるところです。夫婦二人が介護対象だと、単純計算で2倍の出費になります。
「貯蓄は介護以外の老後の生活費」という方は、介護保険などで準備すると良いでしょう。
民間介護保険の種類
介護の備えを保険で準備しようと考え始めた方も多いと思います。
民間の介護保険は介護人口の増加に伴い商品内容が変化しており、要介護2から給付対象となるものが多いです。
また、介護保険単体ではなく医療保険の特約として保障が上乗せできるタイプも増えてきました。医療保険の見直しをする際に特約でプラスするというのも良いでしょう。
保険料の払い方で見ると、掛け捨てタイプの他に貯蓄性のある終身タイプも選ぶことができます。最近では要介護状態にならなければ保険料が戻ってくるタイプも登場しました。払い方によって生命保険料控除の枠も変わりますので、契約時には忘れずに確認しておきましょう。
注目の認知症保険
近年、介護の中でも「認知症」の話題が多くなりました。
内閣府「令和4年版高齢社会白書(全体版)」[5]によると、介護が必要となった主な原因のうち、1位が「認知症」の18.1%となっています。
図5 介護が必要となった主な原因(65歳以上の要介護者等の性別)
資料:内閣府「令和4年版高齢社会白書(全体版)」[5]をもとに執筆者作成
厚生労働科学研究成果データベース「厚生労働科学研究費補助金(厚生労働科学特別研究事業)日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究 総括研究報告書 九州大学 二宮 利治教授 平成26(2014)年度」[6]によると、65歳以上の認知症高齢者の人数は、2025年には約700万人となると推定されています。(※)
※各年齢層の認知症有病率が2012年以降も上昇すると仮定した場合。
※平成25年筑波大学発表の研究報告による2012年における認知症の有病者数462万人にあてはめた場合。
認知症が進んでくると、身体は元気でも身の回りのことができなくなり介護が必要になってきます。費用面では、歩行や日常の動きを補う介護用品を購入することや、家のリフォームなども考えられます。
これらの自己負担をカバーするために有効な商品が認知症保険です。認知症と診断されれば給付金が受け取れる商品が多く、介護の備えも選べる時代になったと感じます。
老後のライフプランを考えるときはぜひ、介護の対策も検討してください。
執筆者プロフィール
梅田 雅美ウメダ マサミ
CFP、防災士
証券会社、都市銀行、生命保険会社などを経てライフ&ビジネス・デザイン合同会社を設立、代表社員を務める。2020年現在、目黒区議会議員としても活動し、行政にFPの視点から改革を起こすために奮闘中。リスク管理を得意とし、現実的なアドバイスを行う。また高齢社会へ向けて健康維持、予防活動にも力を注いでいる。
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- ※ 掲載日は2023年1月12日です。