ワーホリ保険
2018.08.14
海外の医療保険事情~韓国編~
日本とよく似た保険制度と注意点
ワーキング・ホリデー協定国である韓国は、日本と医療保険制度がよく似ていることで知られています。今回は、韓国の医療保険制度概要と、ワーキング・ホリデーや長期留学で韓国に滞在する場合における注意点をお伝えします。
韓国と日本 医療保険制度における共通点と相違点
[被用者の保険料は会社と従業員が折半する]
日本の医療保険制度は、自営業者や学生などが加入する「国民健康保険」と、会社員や公務員など雇用されている人が加入する「被用者保険」(協会けんぽ・健康保険組合・共済組合等)、75歳以上の人が加入する「後期高齢者医療制度」の3つに大別されています。韓国には75歳以上が対象というような高齢者の医療保険制度はありませんが、全国民に加入が義務付けられている国民健康保険制度があり、日本とよく似ているといわれます。運営者(保険者)は「国民健康保険公団」のみで、被用者は「職場加入者」として、それ以外は「地域加入者」として加入します。
日本では、協会けんぽや健康保険組合など被用者保険の場合、保険料は会社と従業員が折半しますが、韓国の職場加入者についても同様であり、会社と従業員が50%ずつ負担します。地域加入者については日本の国民健康保険と同様、所得などに応じた保険料を毎月期日までに納付することになります。前年の所得がない場合は、前年度末の地域加入者世帯当たりの平均保険料が適用されます。
表1:日本と韓国の医療保険制度比較
※スクロールで表がスライドします。
- ※1 2018年度から財政運営主体が市区町村から都道府県に移管されました
- ※2 所得が把握できない場合は前年度末の地域加入世帯当たりの平均保険料を適用
資料:厚生労働省ホームページをもとに執筆者作成
[自己負担の割合が3割]
日本における医療費の自己負担割合は、年齢によって異なります。小学校就学前の6歳までは2割、小学校就学後70歳未満までは3割、そして70歳から74歳は2割(現役並み所得者は3割)、後期高齢者となる75歳以降は1割(現役並み所得者は3割)です。
表2:日本の医療保険制度における自己負担割合
年齢 | 一般・低所得者 | 現役並み所得者 |
---|---|---|
75歳以上 | 1割負担 | 3割負担 |
70歳以上75歳未満 | 2割負担 | |
6歳以上70歳未満 | 3割負担 | |
0歳以上義務教育就学前 | 2割負担 |
資料:厚生労働省ホームページをもとに執筆者作成
一方韓国でも、一般的な「医院」にて治療した場合の自己負担割合は3割と、日本における現役世代の割合と同じです。ただし日本と大きく違うのは、入院の場合は一律2割であることや、医療機関の規模や種類、所在地によって負担割合が異なることがあげられます。
表3:韓国の医療保険制度における自己負担割合
治療を受ける場所 | 本人負担割合 | |
---|---|---|
入院 | 総診療費の20% | |
外来 | 上級総合病院 | 診察料総額+残りの診療費の60% |
総合病院 | 療養給付費用総額の45~50%(※) | |
病院 | 療養給付費用総額の35~40%(※) | |
医院 | 療養給付費用総額の30% | |
薬局 |
- ※ 施設の所在地によって負担割合は異なる
資料:厚生労働省ホームページをもとに執筆者作成
最もグレードの高い上級総合病院の場合は、診察料は全額自己負担となるようです。日本と同じ3割負担となるのは、薬局や医院だけのようです。
ちなみに保険診療については、日本の高額療養費制度と同じように、韓国でも一定の金額以上の負担は生じないよう「自己負担額上限制」が設けられています。
[韓国では混合診療が許容されている]
日本と韓国の大きな違いがこの「混合診療」の取り扱いです。混合診療とは、保険診療と自由診療を併用することを指すのですが、どう異なるのでしょうか。
日本では、混合診療は原則禁止とされており、もし保険で認められている治療法と保険で認められていない治療法が併用された場合、保険診療も含めて全額自己負担となります。禁止されている理由の一つとして厚生労働省は、「本来は、保険診療により一定の自己負担額において必要な医療が提供されるにもかかわらず、患者に対して保険外の負担を求めることが一般化されてしまうと、患者の負担が不当に拡大するおそれがあるから」としています。
一方韓国では混合診療が認められており、保険診療については自己負担金を、保険が適用されない自由診療については全額を負担する仕組みとなっています。
韓国では外国人も現地の医療保険制度に加入できる
一定の要件を満たせば、外国人も医療保険制度に加入できるため、現地で病気やケガの治療を受けた際、保険診療で受診が可能です。一定の要件とは、
- 被用者として外国人登録をしている人
- 被用者でなくても3カ月以上居住することが明らかで外国人登録をした人
です。
ワーキング・ホリデーで3カ月以上の長期滞在する場合は外国人登録をしないと罰せられるため、医療保険制度にも加入できます。また、ビザの滞在資格が「留学」の場合は保険料が50%軽減されます。これはうれしいですね。
医療保険制度に加入できるなら留学保険やワーホリ保険は不要?
公的な医療保険制度がない国や、あっても留学生は加入できない国に留学すると、現地での治療費が高額になるため、留学保険やワーホリ保険に加入して備えるというのが一般的です。韓国に3カ月以上長期滞在する場合は、現地の健康保険制度に加入できるので不要?と思われるかもしれません。しかし、健康保険制度に加入できるからといって安心はできません。なぜなら、日本と異なる特徴である「病院のグレードによって自己負担金が異なる」ことと、「混合診療が認められていること」「日本に医療搬送される場合の費用が高額」の3つにより、場合によっては、請求額が高額になりかねないからです。そこで活用したいのが留学保険やワーホリ保険にある以下のサービスです。
・キャッシュレスメディカルサービス
保険会社と提携している病院にて治療を受ければ、窓口で治療費を支払う必要がなくなり、病院から直接保険会社に請求してもらえるサービス。事前に保険会社に連絡をして提携病院を手配してもらう必要がありますが、キャッシュレスで治療を受けられれば、混合診療により高額になってしまっても安心ですね。
・通訳サービス
混合診療のことなど医療関係の難しい会話に苦労したときなどに、電話にて通訳サービスを受けられて安心です。
現地の健康保険制度に加入できたとしても、日本と異なり、一律3割負担で済むとはいえないのが韓国。こうした留学保険のサービスがあるとかなり心強いといえます。留学保険やワーホリ保険を選ぶ際にも、ぜひサービス内容についてチェックしてください。
韓国の医療保険制度についてまとめましたが、医療機関によって自己負担割合が異なることには驚きました。長い滞在期間中には何があるかわからないので、渡航前に現地の医療保険制度についてしっかり調べ、万一に備え対策をとっておくと安心ですね。
- 監修者 柳澤 美由紀 やなぎさわ みゆき
- CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
- 関西大学社会学部卒。大学時代に心理学を学び、リクルートグループに入社。求人広告制作業務に携わった後、1997年ファイナンシャルプランナー(FP)に転身する。
相談件数は800件以上。家計の見直し、保険相談、資産づくり(お金を増やす仕組みづくり)が得意で、ライフプランシミュレーションや実行支援も行っている。
家計アイデア工房 代表
- ※ この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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