入る前に知りたい!火災保険の選び方
住宅の火災保険は、以前に比べると補償範囲が広くなってきています。補償範囲を十分に把握しないまま加入すると、契約者にとって必要性の低い補償内容が含まれていて、保険料を必要以上に支払うことになりかねません。
火災保険を契約する前に、
- 補償内容をしっかり把握する
- ご自身に必要な補償内容を明確にする
- 必要な補償内容に合った保険会社とプランを選ぶ
この3つのステップで、ご自身に合った火災保険を選びましょう。
火災保険の補償内容
現在の主な火災保険では、風災・ひょう災・雪災、水災といった自然災害のほか、漏水などによる水濡れや、盗難による損害、破損・汚損等(誤って家具をぶつけてテレビなどを壊した場合など不測かつ突発的な事故による損害)も補償する、オールリスクタイプのプランが主流となっています。
通常、そのほかに補償内容のプランは数種類用意されていて、破損・汚損等への補償は自由に選択できる保険会社も多く、補償内容にある程度のバリエーションが与えられています。しかし、ある保険会社の補償プラン例を図表1で見ると、6つの補償内容に対しプランは5つだけで、補償内容の組み合わせには制約もあることがわかります。
図表1 ある保険会社の補償プラン例
補償内容 | 補償プランA | 補償プランB | 補償プランC※1 | 補償プランD | 補償プランE |
---|---|---|---|---|---|
火災 落雷 破裂・爆発 |
○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
風災・ひょう災・雪災 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
水災 | ○ | ○ | × | × | × |
(漏水などによる) 水漏れ |
○ | ○ | ○ | ○ | × |
盗難 | ○ | ○ | ○ | ○ | × |
破損・汚損等 | ○※2 | × | ○※2 | × | × |
- ※1 マンション等の共同住宅専用のプラン
- ※2 保険期間6年以上の契約では、家財に破損・汚損等の補償を適用できない
資料:保険会社の火災保険パンフレットを基に執筆者作成
保険会社によっても制約の内容は異なるため、必要な補償内容に合った保険会社とプランを選ぶことが大切です。
必要な補償内容を明確にする
補償内容を選ぶ前に、リスクへの金銭的備えとして大きく2つの方法があることを知っておきましょう。発生頻度がある程度明確で、損害額も一定の範囲内に収まるようなリスクには、金銭的損害を自分で負担する方法、つまり貯蓄での備えが適しています。一方、発生頻度は少ないのですが金銭的損害が大きいリスクに対しては、保険で備えるのが有効です。
この考え方に基づくと、補償範囲の広い保険に加入するより、損害が大きなリスクに絞って保険で備え、ほかは貯蓄で備えるのが合理的ということになります。
そこで、火災保険の補償内容ごとの支払件数と平均支払額のランキングを図表2で確認してみましょう。
図表2 事故件数・平均支払額ランキング
(平成24年度個人用火災総合保険 保険金支払実績より)
順位 | 事故件数 | 平均支払額 |
---|---|---|
第1位 | 水災・風災・雪災など | 火災 |
第2位 | 漏水などによる水濡れ | 漏水などによる水濡れ |
第3位 | 不測かつ突発的な事故(破損・汚損など) | 水災・風災・雪災など |
第4位 | 落雷 | 盗難による盗取・損傷・汚損 |
第5位 | 建物外部からの物体の落下・飛来・衝突 | 落雷 |
第6位 | 盗難による盗取・損傷・汚損 | 建物外部からの物体の落下・飛来・衝突 |
第7位 | 火災 | 不測かつ突発的な事故(破損・汚損など) |
- (注)平均支払額とは、24年度に個人用火災保険でお支払いした保険金額の平均額
- (注)ランキングには地震保険の保険金支払実績(事故件数、平均支払額)は含まれない
資料:損害保険ジャパン日本興亜株式会社「THE すまいの保険」パンフレット(平成26年9月改定)を基に執筆者作成
やはり、火災、水災・風災・雪災は支払額が高く、水濡れも意外に高いことがわかります。従って、これらの補償の優先順位は高いと考えるべきでしょう。
一方、災害によって損害を受ける可能性は、お住まいの地域や立地条件、建物の種類によって大きく異なるため、それらを考慮してご自身にとっての必要性を判断することになります。例えば、水災については、マンションの2階以上や戸建でも高台にある場合は必要性が低くなりますし、それ以外の場所でも、市区町村が地域での浸水や土砂災害の予測をまとめた洪水ハザードマップ、および土砂災害ハザードマップを見て判断に役立てるとよいでしょう。
火災保険の保険会社とプランの選択
ご自身に必要な補償内容が明確になったら、いよいよ保険会社とプランの選択です。各保険会社のプランの補償内容を見て、希望に合っているものを複数選び、保険料を試算してもらい比較します。希望の補償内容にぴったり合うプランがなければ、自由設計タイプの火災保険も検討するとよいでしょう。ご自身に必要なものに絞って補償をカスタマイズできるのがメリットですが、取り扱っている保険会社がやや少ないのが難点です。
ご自身の希望の補償内容にぴったり合うプランが見つかったとしても、それを最善と決めつけないで、必ず他社の火災保険のプランとも比較を行いましょう。同様の補償内容であっても保険会社により保険料はかなり異なるため、補償範囲を多少広くしても保険料はむしろ安くなることもあるのです。
補償範囲が広いため、わかりにくい印象がある火災保険ですが、ご自身に合ったプランを賢く選び、安心感と抑えた保険料の両立を目指しましょう!
-
コラム執筆者プロフィール
平野 雅章 (ヒラノ マサアキ) マイアドバイザー.jp®登録 - CFP認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、住宅ローンアドバイザー。
住宅ローンや生命保険を中心に1,000件を超える個人相談実績がある相談専門ファイナンシャルプランナー。
豊富な相談経験に基づいた執筆や講演も多数。
横浜FP事務所代表の他、(社)全国ファイナンシャルプランナー相談協会の代表理事を務めている。
ファイナンシャルプランナー 平野 雅章
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
※掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。