自動車保険
2018.05.29
2018年から導入「自動ブレーキ割引」
2018年1月より自動車保険の新たな割引制度である「ASV割引」、いわゆる「自動ブレーキ割引」が導入されました。ASVとは何なのか、自動ブレーキとはどのような機能なのか、自動ブレーキ割引導入の背景から、対象車、対象期間、割引率を解説致します。
自動ブレーキってどんな機能?ASVって何ですか?
自動ブレーキとは衝突被害軽減ブレーキのことです。
レーダーが前方の状況を監視します。前方の車両や人など障害物に気づかず衝突する危険性が高まった場合は警報を鳴らし、ドライバーにブレーキ操作を行うよう促します。それでもドライバーが回避操作を行わず、衝突が避けられないと判断した場合は自動的にブレーキが作動します。
この衝突被害軽減ブレーキのようなドライバーの安全運転を支援するシステムを搭載した自動車を「先進安全自動車(Advanced Safety Vehicle)」といいます。
ASV割引のASVはこのAdvanced Safety Vehicleの頭文字をとっています。
ASVに関する技術の開発・実用化・普及を促進するプロジェクトは平成3年度から進められてきました。衝突被害軽減ブレーキ以外にすでに実用化されたものとしては、
- ・レーンキープアシスト:走行車線の中央付近を維持する装置
- ・ACC:一定速で走行する機能および車間距離を制御する機能を持った装置
- ・ふらつき警報:ドライバーの低覚醒状態を注意喚起する装置
- ・ESC:車両の横滑りの状況に応じて制動力や駆動力を制御する装置
- ・駐車支援システム:後退駐車時、ハンドルを自動制御して後退駐車を補助する装置
などがあります。
ASVのリスク軽減効果が実証され、自動ブレーキ割引の導入が決定!
ASV技術の中で特に普及が進んでいるのが衝突被害軽減ブレーキです。自動車生産台数に対する衝突被害軽減ブレーキの装着率は2014年以降4割まで拡大しています。
自動車保険料は、損害保険料率算出機構が算出した参考純率をもとに決定されます。参考純率では用途・車種による保険料の区分の他、自動車ごとのリスクの違いについても評価し、保険料に反映させることになっています。リスク実態は保険実績に基づいて調査し、判断されます。
衝突被害軽減ブレーキについても損害保険料率算出機構による調査が行われ、保険実績において搭載車の方が非搭載車に比べ、交通事故リスクが軽減しているということが確認されました。これにより、参考純率が引き下げられ、保険料に反映させる仕組みとしてASV割引が導入されることになったのです。
このASV割引は衝突被害軽減ブレーキに限定した割引であることから、自動ブレーキ割引ともいわれています。
自動ブレーキ割引の対象となる車は?割引期間、割引率を教えてください!
対象となる車(型式)は、衝突被害軽減ブレーキを搭載した自家用普通・小型乗用車の発売後3年以内の型式と、衝突被害軽減ブレーキを搭載した自家用軽四輪乗用車の全型式です。
割引期間は、自家用普通・小型乗用車は発売後3年間に限られますが、自家用軽四輪乗用車には期間制限はありません。
割引率は、一律9%となっています。
図2:自動ブレーキ割引の内容
※スクロールで表がスライドします。
資料:執筆者作成
普通車・小型自動車の割引は3年間で終了!?軽四輪乗用車とで割引期間が違うのはなぜ!?
現在、自家用普通・小型乗用車と自家用軽四輪乗用車とで保険料の決め方が異なります。
自家用普通・小型乗用車は、自動車の型式ごとの事故の実績に基づいてリスクを評価する「型式別料率クラス」に基づいて保険料を決定しています。
リスクが高いクラスは保険料が高く、リスクが低いクラスは保険料が安くなります。
発売開始後3年以内の型式の場合は、事故の実績データが十分でないため、新車価格および排気量等によって最初のクラスが決められます。そのため、この期間はASVの事故発生リスク軽減効果が実証されているにもかかわらず、保険料に反映されません。
発売開始後3年を経過した型式の場合は事故実績データが蓄積され、型式別料率クラスの決定においてASVによるリスク軽減効果が反映された保険料となります。
そこで、ASVによるリスク軽減効果が反映されない3年に限定して、自動ブレーキ割引が適用されることになったのです。
一方、自家用軽四輪乗用車については、型式別料率クラスでの評価は行っていません。そのため、全期間においてASVによるリスク軽減効果を保険料率に反映することができません。よって、型式の発売時期にかかわらず、自動ブレーキ割引の対象となるのです。
ただし、自家用軽四輪乗用車も2020年1月1日までに型式料率クラスを導入する見通しとなっています。
自動ブレーキ割引が適用されるには
自動ブレーキ割引の導入は2018年1月1日からスタートしていますが、全ての保険会社で導入されているわけではありません。また、各自動車メーカーによって自動ブレーキの呼び名が異なります。また、同じ車名でも発売年やグレードなどにより型式が異なる場合もあります。割引の適用漏れを防ぐため、車両1台ごとの衝突被害軽減ブレーキの装着の有無を確認する必要がありますので、ご自身の車が対象かどうか、自動ブレーキ割引があるかどうか、加入している自動車保険会社に一度問い合わせてみましょう。
現在進行形で自動運転の実現にむけたASV推進計画が進められています。ASV技術がさらに向上し、事故率低下に対する効果が実証されれば、また保険料にも影響が出てくるかもしれません。交通事故の減少につながるASV技術の進歩については今後も注目しておきたいところですね。
- 監修者 柳澤 美由紀 やなぎさわ みゆき
- CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
- 関西大学社会学部卒。大学時代に心理学を学び、リクルートグループに入社。求人広告制作業務に携わった後、1997年ファイナンシャルプランナー(FP)に転身する。
相談件数は800件以上。家計の見直し、保険相談、資産づくり(お金を増やす仕組みづくり)が得意で、ライフプランシミュレーションや実行支援も行っている。
家計アイデア工房 代表
- ※ この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
- ※ 掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。