子どもが大学に行きたいと希望したとき、その気持ちを尊重したいと思うのが親心だと思います。一方で、大学生の学費や生活費は家計にとって大きな悩みになりえます。
我が家の子どもは兄妹2人とも私立大学で自宅外通学でしたので、経済的負担感はやはり大きなものでした。そこで我が家では、平成24年度、平成28年度の日本学生支援機構(JASSO)の奨学金を検討しました。なお、申し込みにあたっては、下記記載の内容だけでなく必ず最新の情報をご確認ください。
<今回お伝えしたいポイント>
- ・進学後の学費と生活費は想定よりもかかることがある
- ・授業料減免制度、自治体や企業の給付型奨学金を調べよう
「学費くらい親が出すべき」?
実は、筆者自身が大学生のときには奨学金を利用しておらず、親が学費と生活費の全てを出してくれていました。そうした自身の経験から、筆者は「学費くらい親が出すべき」という意識が残っていました。「奨学金に頼る=子どもに借金をさせる」というイメージが強く、長男の進学費用が必要になったとき、奨学金の利用をためらう気持ちがありました。しかし、筆者が大学生であった30年前と現在とではそもそも学費の金額がまったく違います。日本政策金融公庫の資料によると、大学4年間でかかる費用は次の表のとおりです。
※入学費用には、受験費用・学校納付金・入学しなかった学校への納付金、在学費用には授業料・通学費・教科書代を含み、自宅外通学者の費用は、自宅外通学を始めるための費用(アパートの敷金や家財道具の購入費など)と年間の仕送り額を上乗せして計算しています。
資料:日本政策金融公庫「教育費負担の実態調査結果(平成29年度)」をもとに執筆者作成
また、子どもの大学進学に備えて貯蓄をしていても、進路は親の想定どおりにはいきません。どんな進路でも全額援助できるというご家庭は多くはないでしょう。兄弟姉妹がいれば、その人数分の用意が必要になります。将来、返済が必要な奨学金だとしても「子どもの選択肢を広げてやれるなら」と、割り切って利用することにしました。
資料:執筆者作成
直前で進路変更した長男の場合
長男は進学直前に国立から私立理系に進路変更をし、当初の見込みを大きくオーバーしてしまいました。改めて学費と生活費を計算してみると初年度だけで思った以上の金額です。本人がアルバイトしたとしても、長男のための貯蓄と家計のやりくりでは足りず、長女のための貯蓄まで使い込んでしまいそうです。長男と話し合い、大学に進学してから日本学生支援機構の奨学金を申し込むことになりました。このように進学後に申し込む方法を「在学採用」といいます。
予約採用を申し込んだ長女の場合
長女が大学進学を希望したときは、「予約採用」を申し込むことにしました。予約採用とは、進学する前の年に奨学金の予約を申し込むことです。長女の高校の場合、高校3年生の5月中旬に機構の案内冊子が配布され、6月中旬までに申込確認用紙と必要書類を高校に提出するよう指示されました。
なお、各学校によって申込期限が違いますので、うっかり忘れることのないよう注意しましょう。秋の追加募集は、長女の高校では取り扱い自体がされていませんでした。
図 予約採用の流れ(長女の学校の場合)
資料:日本学生支援機構のホームページをもとに執筆者作成
予約採用の申込手続き
まずは配布されたガイダンスDVDと案内冊子に目を通しました。それから同封された「スカラネット入力下書き用紙」に必要事項を記入して担当の先生のチェックを受けました。スカラネットとは日本学生支援機構の奨学金申込手続きに使われるインターネットサイトのことです。いきなりパソコンで入力することは難しいので、事前準備として下書きをするのです。
子どもだけで記入するのではなく、親も一緒に行いましょう。もっとも悩むところである貸与額と返済額の判断については、同機構ホームページの返還シミュレーションを利用してもよいかと思います。
「予約採用」で申し込むメリット
我が家では予約採用と在学採用の両方を経験することになりましたが、予約採用ならば以下のようなメリットがあります。
- ・高校在学中に採用の可否が決まり、進学後には確実に奨学金を受け取ることができるので安心
- ・申込時にそばで親や高校の先生がサポートでき、子どもにとって心強い
- ・万一不採用の場合でも、進学後の在学採用に再度申し込みすることができる
進路が決まっていなくても良い
申し込み後に進路変更などで奨学金の月額が足りないことがわかったときには、最終的手続きである「進学届」の提出時に貸与額を変更することも可能です。進学せず就職するなどして奨学金が必要なくなれば、進学届を出さず奨学金を辞退することもできます。就職も考えている場合は迷うかもしれませんが、少しでも進学の希望があり、かつ経済的な不安がある場合は、予約採用で申し込んでおくと安心ですね。
借りるだけじゃない、ほかの方法も検討を
貸与型奨学金の場合は、子ども本人が卒業後に返済することが必要です。まずは進学先に授業料減免制度や、学内奨学金がないか調べ、返済不要の給付型奨学金が利用できないかも検討してみましょう。奨学金は日本学生支援機構のみならず、大学や企業、自治体などで独自に設置しているところがあります。日本学生支援機構のホームページからも検索できますので、条件が合うものがないか、ぜひ検討してみましょう。