20代30代の若い方にはしっくりこないかもしれませんが、「エンディングノート」についてお話しさせていただきます。エンディングノートとは自分に万一のことがあったときのために、家族や大切な方に伝えたいことをまとめたものです。最近では、自分の最期を安心して迎える準備として「終活」という言葉をよく耳にします。エンディングノートはこの一環として活用することができます。
大切な家族に想いを伝える手段として、また、残された家族が困らないように少しずつあなたの人生をまとめてみてはいかがでしょうか。
今の想いはどのように伝えますか?
- (1)偶然がなければ知ることがなかった保険の存在
- 平成18年に亡くなった筆者の父は、勤務先に出入りしている保険代理店と生命保険の契約をしていました。父が母のためにしていたことでしょうが、父が亡くなった後しばらくして勤務先から連絡があるまで、家族は誰も知らなかったのです。もし生命保険の存在を知らないままだったら、保険金の請求権が時効にかかり、せっかくの父の想いが報われなかったかもしれません。
- (2)エンディングノートを手にしたきっかけ
- 筆者がエンディングノートを手にしたのは、大切な方を亡くした友人と接したことがきっかけです。友人は「もっと話し合うことがあったのではないか」と、やり場のない後悔に似た切なさを感じていました。筆者も父を看取りましたので痛いほど気持ちがわかります。残された家族は亡くなった方の気持ちを知るすべがないのが辛いのです。
もし、自分に万一のことがあったら、家族や大切な方には同じ切ない想いをさせたくありません。特に、子どもたちには、それぞれの将来に目を向けて欲しい、そんな今の「想い」や「願い」を知ってもらいたいと思いました。
エンディングノートの中身をみてみましょう
エンディングノートは、書く内容や外観などさまざまあり、サイトからひな形がダウンロードできたり、冊子状になっているものが販売されていたりしますが、内容は大きく分けて「自分のこと」「資産や借入など」「希望やメッセージ」を記入するかたちが一般的です。自分に合った書きやすいエンディングノートを探してみましょう。
資料:執筆者作成
このエンディングノートは遺言書とは違い、法的な拘束力はありません。いつでも内容を書き換えることが可能です。もちろん1日で全てを記入する必要もありません。
- ・自分のこと
- 運転免許証や健康保険証などは交付機関へ返還しなくてはならない場合があります。
SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)のアカウントは、そのまま情報が残ることに抵抗があるようなら、削除してもらえるようにまとめておきましょう。
- ・資産や借入など
- 「インターネット銀行」 や「インターネット証券」 など気づきにくい情報はまとめておくことが大事です。普段は大切にしまいこんでいる年金手帳や保険証券などの保管場所も記しておきましょう。
- ・希望やメッセージ
- 家系図は、相続なども考慮し、ご自身の3親等(甥姪)まで記入すると良いでしょう。
病名の告知や延命措置など、ご家族にとってはとても悩ましい問題です。ご家族の心の負担を軽くするためにも、今の時点で明確な希望があるようなら残しましょう。
このように貴重な個人情報を記入しますので、保管は慎重に行ってください。しかし万一のときに見つからないことがないように、家族や信頼できる方には存在を伝えておきましょう。
大切な方に想いを届けましょう
- (1)個人情報を整理整頓
- いざ書き始めると、残しておいた方が良い情報の量に驚きました。何かを参照しながら記入する情報は比較的進みますが、その書類が見つからなかったり、有効期限が切れていたりと四苦八苦しました。保険などの情報を整理する過程で保障が重なっているものや、必要以上に保障をつけているものに気付きました。また使っていない銀行口座も数個ありました。こういった本人しかわからない情報について、まとめて記しておくことは残される方のためにも必要だと感じます。
- (2)最後には必ず伝えたいことを記す
- 希望やメッセージを記入するところでは少し手が止まってしまいました。なかなか整理できず、特に告知や延命などの項目記入は一番あとになりました。
大切な方へのメッセージは主に感謝の気持ちを、子どもたちには大人になってから読んでもらいたいと考えながら書きました。
筆者はこのエンディングノートを1週間ほどかけて記入しました。手間はかかりますが、父を亡くしたときの気持ちに立ち返ったとき、やはり想いや願い・希望を伝えることはとても大事だと切に感じましたので「今」の自分の願いを書き留めました。
これを機に、「大切な方へ想いを届ける」ために、エンディングノートを手に取ってみてはいかがでしょうか。