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しゅんぺいた博士と学ぶ破壊的新規事業の起こし方

玉田 俊平太さんコラム - 第9回

破壊的イノベーターになるための7つのステップ(その6)

前回までのコラムで私たちは、イノベーションには、(1)ライバル企業にとって破壊的か持続的か、(2)自社にとって破壊的か持続的かで「2通り×2通り」の計4種類に分類することができることを学びました(下図参照)。

そのイノベーション誰にとって破壊的?
そのイノベーション誰にとって破壊的?

資料:執筆者作成

そして、他社にとって持続的なイノベーションが、自社にとっては破壊的な性質を持つ場合、自社が破壊されるのを防ぐには次の4つの異なるアプローチがあり、前回は(1)の「破壊的イノベーションを最優先する別組織を立ち上げる」やり方について学びました。

  • (1)破壊的イノベーションを最優先する別組織を立ち上げる、
  • (2)破壊的なビジネスモデルを持つ企業を買収する、
  • (3)顧客が十分満足している性能指標(価値軸)から、まだ満足していない新たな性能指標へと競争の軸を変える、
  • (4)上位市場へ移行する……

最終回となる今回は、(2)の「破壊的なビジネスモデルを持つ企業を買収する」やり方について学びましょう((3)の「顧客が十分満足している性能指標(価値軸)から、まだ満足していない新たな性能指標へと競争の軸を変える」と(4)の「上位市場へ移行する」については、多くの企業が得意とする「持続的イノベーション」のアプローチですので、ここで詳しく触れることはいたしません)。

買収は会社を買ってからが始まりです

少し前のローランド・ベルガーの調査(勝岡隆史「M&Aを真の成功に導く企業統合マネジメント」『THINK ACT 視点』vol. 59, 2009.8.)によると、M&Aが失敗する要因のひとつが「統合マネジメント(買収先企業と自社をいかに統合するか)の失敗」でした。

ところが、日本CFO協会が行ったアンケートによれば、M&Aにおいて「買収後」の経営戦略・統合計画策定に最も力を入れたと答えた経営者はわずか2%に過ぎませんでした。これに対し「買収後の経営戦略・統合計画策定」にもっと力を入れておけば良かったと答えた経営者は55%にものぼります。つまり、M&A失敗の大きな要因のひとつである「統合マネジメントの失敗」が起きる原因は、経営者が企業買収をした後の経営に、十分な力を注がなかったことにあると考えられます。

たとえば、ある日本のエレクトロニクスメーカーでは、アメリカのプリンタメーカーを買収するまでは役員が率先して熱心に取り組んだのですが、買ってしまった後は部下に丸投げで、「お前らこの会社を買ったから、後はなんとかしろ」と言ったきり放ったらかしだそうです。

しかし、当然ながら経営者の仕事は買収して終わりではなく、買収効果がきちんと現れるまでのはずです。そのエレクトロニクスメーカーの役員には、私が子供の頃に先生からよく言われた「家に帰るまでが遠足です」という言葉を贈りたいと思います。

破壊的買収には「統合しないマネジメント」が求められる

自社にとって破壊的なビジネスモデルを持つ企業を買収する場合には、「戦略を整合させるマネジメント」ではなく「戦略オプションを増やすマネジメント」が、そして、「買収先企業と自社をいかに統合させるか(統合マネジメント)」ではなく「買収した企業をできるだけ自律させる(統合しない)マネジメント」が求められます。

破壊的買収のマネジメントを確実に行うための前提条件は、自社にとってそれが「持続的買収」なのか、それとも「破壊的買収」なのかを明確に峻別することです。破壊的企業を買収した後、安易な統合を進めてしまえば、せっかく手に入れた金の卵を産むガチョウ(破壊的事業)の力の源泉である「価値基準」や「プロセス」を殺してしまうことになるでしょう。破壊的ビジネスモデルからの収益で自社の事業が破壊的イノベーターに打ち負かされるリスクをヘッジするためには、買収後も買収先企業の独立性・自律性を確保して破壊的企業として引き続き存続させなくてはならないのです。

クリステンセン教授が『イノベーションのジレンマ』の中で述べているように、「買収した企業のプロセスや価値基準が、本当に成功の源であるなら、買収する側の経営者は、その企業を親会社に統合しようとするべきではない。買収された企業が、そのプロセスや価値基準によって過去の成功を築いてきたのなら、子会社の独立性を保ち、そのプロセスと価値基準を活かしつつ、資源を投入する戦略を採ったほうが良い。このような戦略こそ、本当の意味での新しい能力の獲得と言える」のです。

いかがでしたか?

全9回にわたる連載で、読者の皆さんは破壊的イノベーターになるための基本的な理論武装をすることができたことと思います。

さらに勉強を深めたい方は、拙著『日本のイノベーションのジレンマ 第2版 破壊的イノベーターになるための7つのステップ』を書店等で手に取っていただくか、関西学院大学ビジネススクールの門を叩いてみてください。皆さんと教室でお目にかかれる日を、心より楽しみにしております。

PROFILE

玉田 俊平太

玉田 俊平太(タマダ シュンペイタ)

関西学院大学 経営戦略研究科 研究科長、博士(学術)(東京大学)

1966年東京都生まれ。東京大学卒業後、通商産業省(現:経済産業省)に入省。ハーバード大学大学院にてマイケル・ポーター教授のゼミに所属、競争力と戦略との関係について研究するとともに、クレイトン・クリステンセン教授から破壊的イノベーションのマネジメントについて指導を受ける。筑波大学専任講師、経済産業研究所フェローを経て現職。著書に『日本のイノベーションのジレンマ 第2版 破壊的イノベーターになるための7つのステップ』(翔泳社)、『産学連携イノベーション―日本特許データによる実証分析』(関西学院大学出版会)など、監訳にロングセラーの『イノベーションのジレンマ』(翔泳社)、『イノベーションへの解』(翔泳社)などがある。

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