病気やケガへの備えは保険も現金も必要
病気やケガへの備えは医療保険や傷害保険に加入しているから大丈夫と思っていませんか?確かに医療保険・傷害保険に加入していると安心ですが、現金で備えておく必要はないのでしょうか?
保険金・給付金を受け取るまでの流れ
はじめに、保険に加入している方が実際に保険金・給付金を受け取るまでの流れをみておきましょう。
(1)契約内容の確認と保険会社への連絡
保険証券や約款などを確認して、保険金・給付金の請求先のサービスセンター、コールセンターへ連絡します。その際、保険金・給付金の請求は受取人本人が行うことになりますが、「指定代理請求人」などの代理人を指定しているときは代理人が請求することが可能です。
(2)請求書類の準備・提出
保険会社から送付される保険金・給付金請求書などに記入し、病院の診断書など必要書類をそろえ、保険会社へ提出します。
(3)保険会社による請求書類の受け付け・支払いの判断
保険会社は受け付けた書類に基づき、保険金・給付金の支払事由に該当するかどうか判断します。
(4)支払事由に該当した場合、保険会社から保険金・給付金が支払われる
保険金・給付金を受け取ります。
以上が基本的な保険金・給付金の受け取りの流れですが、郵送ではなくオンラインで請求ができる保険会社もあります。保険金・給付金は請求書類が保険会社に到着後、5営業日以内に支払うとする保険会社が多いようです。
入院時にかかる費用と支払い
次に、病気やケガで医療機関に入院した場合の医療費や支払うタイミング、支払方法についてみてみましょう。
(1)入院時にかかる費用
(公財)生命保険文化センターの「平成28年度生活保障に関する調査」によると、入院時の1日当たりの自己負担費用の平均は約2万円、直近の入院時の自己負担費用の平均は約22万円です。これらの金額には治療そのものにかかる費用の他に食事代・差額ベッド代・交通費(見舞いに来る家族の交通費も含む)・衣類・日用品費などが含まれています。また、高額療養費制度を利用した場合は利用後の金額で計算されています。
(2)入院医療費の支払日は
入院医療費の支払日は病院により異なりますが、おおむね月1回や2回で、多くの場合退院時にも支払います。支払いは病院によりクレジットカードやデビットカードなどが使えることもあります。クレジットカードが利用できる場合には、支払いのタイミングを遅らせることができます。クレジットカード会社の利用料金の口座引き落としのスケジュールにもよりますが、タイミングが合えば保険会社から受け取る給付金を支払いにあてることが可能な場合もあります。クレジットカードの利用ができない場合には、病院から請求された時点でまとまった現金が必要になる可能性があります。
高額な医療費がかかったときの公的制度
多くの治療については公的医療保険が適用され、かかった医療費の原則3割分の支払いで済みますが、それでも高額な医療費がかかった場合には、高額療養費制度といわれる医療費の家計負担を抑える国の制度を利用することができます。具体的には医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1カ月(1日~末日まで)で上限額を超えた場合、その超えた額が支給されます。事前に加入する健康保険などに申請をして認定証(限度額適用認定証)を交付してもらい、医療機関の窓口で提示すれば上限額の支払いで済ませることができます。
認定証の申請については加入する健康保険などに確認をしましょう。
なお、高額療養費の上限額は年齢や所得によって異なりますが、平成30年8月診療分からの69歳以下の方の高額療養費上限額は下表になります。
高額療養費<69歳以下の方の上限額>
※スクロールで表がスライドします。
資料:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)」をもとに執筆者作成
例えば、年収400万円の方の場合、1カ月に100万円の医療費がかかったとしても87,430円の自己負担で済みます。ご自身の年収適用区分を確認して1カ月の上限額がどのぐらいになるか目安をつけて医療費を備えておきましょう。高額療養費制度を利用するには申請が必要ですので、忘れないようにしたいところです。なお、公的医療保険が使えない先進医療にかかる費用や差額ベッド代などについては高額療養費制度の適用はなく、全額自己負担となるところも注意が必要です。先進医療はがんの重粒子線治療や陽子線治療など高額の費用がかかる可能性もありますが、医療保険に加入している場合は保障が受けられることがありますので確認しておきましょう。保障がなく不安な場合には先進医療の保障のある医療保険を検討してみるのもよいでしょう。
現金で備える必要は?
病気やケガで治療を受けた場合にかかる費用についてみてきました。医療保険や傷害保険の給付金は請求後問題なければ5営業日程度で受け取れることがありますが、請求に必要な診断書の発行には病院によっては2、3週間など時間がかかることもあります。また、基本的に本人が請求する必要があるため、入院中や退院後も体調によっては迅速に手続きを行うことが難しいかもしれません(※)。高額療養費の認定証があらかじめ交付されていれば、病院窓口での支払いは高額療養費の上限額で済みますが、認定証をもらう間もなく急に入院することもあり得るでしょうし、例えば一家の主婦が入院した場合、ベビーシッターや家事代行などのサービスが必要となるなど、医療費以外の費用がかかることもあります。医療保険や傷害保険に加入していても、ある程度の現金を備えておく必要があるといえます。
人によって事情は異なり必要となる金額もさまざまです。健康なうちに自分や自分の家族が入院した場合を想定しておきましょう。
※本人以外が診断書を請求する場合は一般的に委任状などが必要です。
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コラム執筆者プロフィール
加藤 葉子 (カトウ ヨウコ) - 女性とシングルマザーのお金の専門家
- 離婚を機にお金の勉強を始め、3年間で子どもの教育費を貯める。自身のブログ「女性とシングルマザーのお金の話」に全国の女性から切実なお金の相談が寄せられ、NHKのWEBコラム執筆を機に独立。3年間で1,500件以上の相談を受けている。現在は、女性ファイナンシャルプランナーのための実務講座やオンライン講座を配信中。
マイライフエフピー代表
ファイナンシャルプランナー 加藤 葉子
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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