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2018.06.19

病院でまさかの門前払い!?海外の病院事情

海外で医師の治療を受ける際は、日本での医療システムと現地の医療システムの違いを理解しておかないと、思いがけないトラブルに遭う可能性が高くなります。なかでも「医療費の支払い」に関しては、日本のシステムと根本的に異なる点が多いため、現地でケガや病気をしたときに治療を受けることができなかったり、予想外に高額の医療費を請求されて困ってしまったりということがあり得ます。海外の基本的な医療事情について確認してみましょう。

日本人にとっての日本と海外の「医療保険」の違い

医療保険は、日本も海外もともに「医療費負担を軽くする制度」という共通点はあるものの、海外で治療を受ける場合、大きな違いがあります。現在の日本の医療保険制度は、すべての国民が何らかの公的医療保険に加入し、お互いの医療費を支え合う「国民皆保険制度」です。国民誰もが保険証1枚で、どの医療機関にもかかれます。
一方、海外で日本人が治療を受ける場合、多くは自由診療で、医療費は病院や医師によって異なります。外国人が受診する病院は料金が割高なケースも多いそうです。つまり、医療費を病院や医師が自由に決められるということです。日本でも、保険がきかない美容整形や歯列矯正治療をすると高額になることがありますが、それと似ていますね。

海外の医療費は高額であることが多い

日本の医療機関で医療保険を使用して治療を受ける場合、診療報酬制度(医療行為ごとに点数が決められていて、1点あたり単価10円を乗じて医療費の額が計算される)が採用されているため、同じような治療を受けた場合の医療費は基本的にどの医療機関でも同レベルの金額です。患者はそのうちの一部(基本的には3割)を自己負担していることになります。
日本人が海外で治療を受ける際は、前述のとおり自由診療が基本なので、医療費は「全額自己負担」となり、金額は医療機関がそれぞれ決めますから、同じ病気やケガでも病院や医師によって金額が異なり、非常に高額となることも考えられます。
では「高額」とは、どのくらいなのでしょうか。具体的な例を挙げてみましょう。
医療費が非常に高額なことで有名な米国では、例えばニューヨークで受診した場合、一般の初診料は150ドルから300ドル、専門医を受診すると200ドルから500ドル、入院した場合は室料だけで1日数千ドルの請求を受けます。具体的な事例では、急性虫垂炎で入院し手術後腹膜炎を併発したケース(8日入院)は7万ドル、貧血による入院(2日入院、保存療法施行)で2万ドル、上腕骨骨折で入院・手術(1日入院)は1万5千ドル(2018年5月24日現在の米ドル相場(約110円)で換算してみると、1日の入院でなんと165万円です!)、などの請求が実際にされています。ハワイでは、急なケガや病気でICU(集中治療室)を利用した場合で総額1,000万円を超えることも珍しくなく、数千万円に達したケースが報告されたこともあるそうです。
また、ジェイアイ傷害火災保険によると、同社が実際に保険金を支払った事故例として、▽フランスで腸閉塞を起こして44日間入院・手術。家族が駆けつけ、医師が付き添い医療搬送されたケースで約1,500万円、▽オーストラリアでスノーボードのジャンプで着地に失敗しヘリコプターで搬送。腰椎骨折・脊髄損傷と診断され16日間入院・手術。家族が駆けつけ、看護師が付き添い医療搬送されたケースで約1,400万円、▽イギリスで胸の痛みのため受診、気胸と診断され83日間入院・手術。家族が駆けつけ、医師・看護師が付き添い医療搬送され800万円(保険金額(補償の支払限度額)が不足し自己負担が発生)、などのケースが実際に起こっています。
ですので、海外の医療機関では、医療費を受け取れないという事態を避けるために、受診手続きの段階で、「患者が医療費を支払うことができるかどうか」をまず確認することがあります。ここで、有効な医療保険の保険証などを提示しなかった場合、前払いを要求されたり、クレジットカード決済が認められても高額の支払いができないカードの場合は現金での前払いを要求されたりすることがあります。場合によっては受診を拒否される場合もあります。

海外旅行保険に入るときに必ず確認しておくべきこと

海外旅行保険への加入時には、以下の点を事前に確認しておきましょう。

(1)補償は十分か

上記のように高額な費用がかかることもあることから、まずは「カバーされている補償が十分なものなのか」を、納得いくまで確認しましょう。保険会社や商品、保険金額によって、補償の対象やその上限金額が異なりますし、歯科治療が補償の対象になっているかなども検討材料となります。また、1疾患についての支払いの限度(金額や期間)についても留意する必要があります。

(2)保険金の支払方法はどうなっているか

大きく分けて「立て替え払い」と「キャッシュレス(保険会社が直接病院に治療費を支払う方法)」の2つの支払方法があります。
立て替え払いは、いったん自分で費用を全額支払って領収書を保管しておき、後日保険会社に請求の手続きを行う方法です。
契約する保険会社のホームページなどで、いざというときの請求手続きの方法・必要書類などを確認しておくとよいでしょう。
キャッシュレスによる支払いの場合は、まず加入している保険会社に連絡した方がよいでしょう。事前に連絡がなかった場合、サービスを受けられないとしている保険会社もあります。保険会社と提携のある医療機関であれば、保険契約証などを提示し、保険会社所定の手続きをすれば医療費は保険会社に請求されます(パスポートなどが必要になることがあります)。多くの保険会社がキャッシュレスの仕組みを採用していますが、すべての病院が対応しているわけではありませんので、渡航先での提携病院などは事前に確認しておくと安心です。また、提携医療機関が他の医療機関を紹介した場合など、キャッシュレスサービスが利用できないケースなどもありますので、条件などは事前にきちんと把握しておきましょう。
ただし、このサービスは、実際に行われていない手術費などが医療機関から保険会社に請求されるなど悪用される場合があります。知らない間に海外旅行保険の限度額を超えていたということがないように、保険を使用した場合は、保険会社にその都度、治療内容と請求額をご自身で確認しましょう。

(3)現地でのサポート体制

いざというとき、特に、現地の言葉に慣れていないと、不安は大きいものです。電話で日本語のサポートを受けることができれば心強いですね。
例えば、24時間365日、日本語スタッフによる相談受付対応サービスを行っている保険会社も多く、日本語対応の病院の紹介などの緊急時の相談にのってもらうことが可能です。現地でのサポート体制についても加入の際に確認しておきましょう。

どんなに健康に自信のある方でも、慣れない海外での生活で、予期せぬ事故にあったり、ケガ、急病をしたりする可能性はあります。現地の医療事情を把握した上で、海外旅行保険への加入を前向きに検討し、「まさかの門前払い」にならないよう備えることが大切です。

岡田 のりかの写真
執筆者 岡田 のりか おかだ のりか
AFP/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/米国公認会計士
会計事務所勤務・フリーの翻訳者(金融分野)を経て、2016年ファイナンシャルプランナーとして独立。コラム執筆や個人相談を中心に活動中。
FPオフィス ナチュール代表
柳澤 美由紀の写真
監修者 柳澤 美由紀 やなぎさわ みゆき
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
関西大学社会学部卒。大学時代に心理学を学び、リクルートグループに入社。求人広告制作業務に携わった後、1997年ファイナンシャルプランナー(FP)に転身する。
相談件数は800件以上。家計の見直し、保険相談、資産づくり(お金を増やす仕組みづくり)が得意で、ライフプランシミュレーションや実行支援も行っている。

家計アイデア工房 代表
  • ※ この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
  • ※ 掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。

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