保険料節約5つのコツ その③「社会保険の知識を身につける」
- 社会保険は国民の暮らしを守るためにできたものなのに、どんな保障が受けられるのかを知っている人は意外に少ないと感じます。社会保険の中身を知らないために、必要以上に保険に入りすぎているケースは少なくありません。今回は死亡保障タイプの生命保険料に大きく影響する“遺族年金”を中心に、社会保険を知ることでどれだけ保険料を節約できるかについてお話します(健康保険については第3回コラムで詳しく説明していますので、そちらをどうぞ!)。
【1】あなたは遺族年金をいくらもらえる?いくら遺せる?
遺族年金は死亡したときに、残された妻や子に支払われる年金です。チェックポイントは次の5つです
- 亡くなった人が加入していた「公的年金の種類」
- 亡くなった人の「年収」(厚生年金、共済年金加入者のみ)
- 受け取る人の「性別」
- 受け取る人の「年齢」
- 受け取る人の「年収」
亡くなった人が死亡時に加入していた公的年金の種類が「国民年金」なのか「厚生年金」「共済年金」なのかによって、対象となる遺族年金の種類が異なります(A)(図表1)。亡くなった人が会社員や公務員の場合、個人事業主(国民年金第1号被保険者)に比べて、遺族年金を多くもらえる可能性があります。
<図表1:公的年金の種類と遺族年金>
死亡時に加入していた公的年金種類 | 万一のときにもらえる遺族年金種類 |
---|---|
国民年金(個人事業主など) | 遺族基礎年金(または寡婦年金か死亡一時金) |
厚生年金(会社員) | 遺族基礎年金+遺族厚生年金 |
共済年金(公務員) | 遺族基礎年金+遺族共済年金 |
遺族基礎年金は公的年金の種類にかかわらず、「18歳到達年度の末日までにある子(障害者は20歳未満)のいる妻」と「子」に支給されるものです。年金額は子の人数に応じて設定されています(図表2)。
<図表2:遺族基礎年金早見表(平成24年度)>
残された家族 | |||||
---|---|---|---|---|---|
妻のみ | 妻子 | ||||
子1人 | 子2人 | 子3人 | 子4人 | ||
遺族基礎年金(年額) | 0円 | 1,012,800円 | 1,239,100円 | 1,314,500円 | 1,389,900円 |
一方、遺族厚生年金は死亡した人のそれまでの年収(平成15年4月以前の平均標準報酬月額と、平成15年4月以後の平均標準報酬額)と加入期間によって年金額が決まります(B)(図表3)。遺族共済年金※は遺族厚生年金相当部分に加えて、職域加算と妻加算(589,000円)があります。
- ※ 共済年金制度について
http://www.kkr.or.jp/nenkin/index.html
<図表3:遺族厚生年金早見表(平成24年度)>
平均標準報酬額(厚生年金の加入期間中の賞与を含めた平均月収) | ||||
---|---|---|---|---|
200,000円 | 300,000円 | 400,000円 | 500,000円 | |
遺族厚生年金(年額) | 246,645円 | 369,968円 | 493,290円 | 616,613円 |
- ※厚生年金の加入期間は300月(25年)以下として計算しています。
- ※実際の遺族厚生年金計算においては、平成15年3月までの加入期間の計算の基礎となる各月の標準報酬月額の総額を平成15年3月までの加入期間の月数で除して得た「平均標準報酬月額」と、平成15年4月以後の加入期間の計算の基礎となる各月の標準報酬月額と、標準賞与額の総額を平成15年4月以後の加入期間の月数で除して得た「平均標準報酬額」(賞与を含めた平均月収)を用いて計算します。本表は「平均標準報酬額」だけを用いて計算しています。
- ※本計算では、平成15年3月までの加入期間に対する計算式を用いず、すべての期間において平成15年4月以降の加入期間に対する計算式(上記の計算式)で計算しています。
- ※実際の計算では、過去の標準報酬月額と標準賞与額に最近の賃金水準や物価水準で再評価するために「再評価率」を乗じますが、本計算では考慮していません。
遺族年金は「男性が外で働き、女性が家庭を守る」ことが主流だった時代に作られた制度です。つまり「大黒柱である男性が亡くなったときに、妻と子が最低限の生活ができるように」というのが創設の主な目的であるため、残された家族が母子で子が「18歳到達年度の末日までにある子(障害者は20歳未満)」なら遺族年金は支給されますが、父子である場合は一部の例外を除いて支給されません(C)。
しかし近い将来、制度内容が変更される予定です。平成26年4月1日からは社会保障と税の一体改革により、父子家庭にも遺族基礎年金(亡くなったとき、その人によって生計を維持されていた「18歳到達年度の末日までにある子(障害者は20歳未満)のいる妻」又は「子」に給付される年金)を支給することが決まっています。「イクメンパパ」には朗報ですね。
遺族年金については、注意点がさらに以下の3点。
一点目は、遺族厚生年金は子のない妻でも年金を受け取ることができますが、妻が30歳未満の場合は5年経過した時点で年金給付は打ち切りになる点です。若いし、子どももいないから仕事が見つかりやすいだろう、再婚もしやすいだろう、というのが理由のようです(D)。
二点目は、子どもの成長により、「18歳到達年度の末日までにある子」に該当する子がいなくなった場合は、遺族基礎年金の給付が打ち切られる点です。亡くなった人が厚生年金及び共済年金被保険者であれば、遺族基礎年金に代わって「中高齢寡婦加算(平成24年度年金額589,900円)」が妻自身の老齢年金が支給されるまで支払われますが(期間は40歳から65歳になるまでが対象)、亡くなった人が国民年金第1号被保険者であれば打ち切られて終了です。
そして最後に気を付けてほしいのが、妻の年収です(E)。遺族年金を受ける条件をすべて満たしていたとしても、年金を受け取る妻の年収が将来(5年程度)にわたって850万円以上となると見込まれる場合、遺族年金は支給されません。それだけ稼げるのであれば、国が支援しなくてもいいでしょう、という理由のようです。
【2】遺族年金などの制度を理解し、バランスの良い保障を考えよう!
ここで少しでもイメージが沸くように、ケーススタディをご紹介します。
AさんとBさんはどちらも「28歳男性、会社員、平均標準報酬額30万円(年収360万円)、妻=25歳・専業主婦、子=0歳と2歳」という設定です。
Aさん:遺族年金については知らない。生命保険で死亡保障を備えようと検討中。
Bさん:遺族年金について理解しているので、今のところ生命保険の検討はしていない。
ちなみに、Aさんが検討中の生命保険は、保険比較サイト「保険市場」に掲載されている、「10年更新型定期保険」でシミュレーションしています。
Aさん、Bさんに万が一のことがあった場合、遺族年金の推移は下図のようになります。
<図表4:Aさん、Bさんの遺族年金の推移>
<図表4>において、遺族に支給される遺族年金の総額は概算で3,480万9,200円になることがわかりますね。例えば、Aさんがこの約3,500万円を死亡保障として生命保険で備えようとした場合、月々の保険料は約5,500円程度になります。もちろん、その分家族に遺すことのできる保障は手厚くなるので単純比較はできませんが、それでも今回のケースでは、遺族年金を見込んでいたBさんの方が保険料の負担を抑えられているといえなくもありません。
必要となる死亡保障の計算式は別の機会にご紹介しますが、遺族年金などの制度の保障を加味することで生命保険の保障額をスリムにできます。保険を検討するときは、必ず遺族年金などの制度についてもしっかり押さえておきましょう。もしものときの遺族年金、いくらくらいになりそうですか?
コラム執筆者プロフィール
柳澤 美由紀(やなぎさわ みゆき)
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コラム執筆者プロフィール
柳澤 美由紀(やなぎさわ みゆき ) -
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
関西大学社会学部卒。大学時代に心理学を学び、リクルートグループに入社。求人広告制作業務に携わった後、1997年ファイナンシャルプランナー(FP)に転身する。
相談件数は800件以上。家計の見直し、保険相談、資産づくり(お金を増やす仕組みづくり)が得意で、ライフプランシミュレーションや実行支援も行っている。
家計アイデア工房 代表
※この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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