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出産前後の住宅購入、住宅ローンで注意すべき点は?
掲載日:2017.10.16
結婚、出産を機に住宅購入を考えるご夫婦も多いのではないでしょうか。結婚しても働き続ける女性が増えるなか、出産前後に一時的に収入が減ったり、保育園に子どもを預けられず職場復帰がかなわなかったりと、出産というライフイベントは少なからず家計に影響を与えます。今回は、「出産後に夫婦のペアローンで住宅を購入」しようとした筆者の経験と「住宅ローンを借りて住宅購入する際の税金メリット」のお話と、「出産前後の住宅購入で気をつけたい点」についてお伝えします。
共働きのペアローンとは?
住宅ローンのペアローンとは、1戸の家に夫婦2人がそれぞれの名義で別々にローンを借りる方法です。共働き夫婦の世帯数が増え続けているなか、ペアローンで住宅ローンを借りた方が「理想の家を購入できる」「諸費用を考えても住宅ローン減税の面でお得」と考える共働き世帯も多いのではないでしょうか。理想の家を少しでもお得な方法で購入したい共働き夫婦の目線で、住宅ローン減税の節税メリットを検証してみます。
住宅ローンを借りて家を買うと、節税メリットがあります!
住宅購入時に銀行などから住宅ローンを借りる場合、一般に「住宅ローン減税」といわれる「住宅借入金等特別控除」を利用することで、節税が可能になります。一定の要件を満たせば、住宅ローンの年末残高に応じた控除を最大10年間にわたって受けることができます。会社員の場合は1年目に確定申告を行えば、残りの9年間は年末調整のときに手続きを行ってもらえます。
住宅ローン減税の効果は?
平成26年1月1日から平成33年12月31日までに居住開始した場合、住宅ローンの年末残高の1%(最大40万円)が所得税から控除されます。所得税から控除しきれない場合には、一部住民税からも控除できることがあります。また、「認定長期優良住宅」や「認定低炭素住宅」に該当する場合には、毎年の控除限度額が50万円まで引き上げられますので、10年間で最大500万円の節税メリットを受けることができます。
ペアローンならば、夫婦2人分、この控除枠を使うことができます。具体例で見ていきましょう。
(例)夫:年収500万円、借入額2,500万円、妻:年収300万円、借入額1,000万円
夫婦ともに給与所得者で、利率を1%とした場合の節税効果です。
単位:円(概算)
資料:執筆者作成
単位:円(概算)
資料:執筆者作成
今回、夫と妻のそれぞれが借り入れを行うペアローンを組んだという前提で試算を行いました。仮に夫のみで3,500万円全額の借り入れをした場合、一般住宅の住宅借入金等特別控除の限度額は40万円であるとともに、住民税から控除できる額にも上限が定められており(前年課税総所得金額等の7%と、136,500円のうち、いずれか少ない方)、このケースの場合、税額控除額は所得税と住民税あわせても274,900円となってしまいます。最初の数年間は税額控除の対象とならない借入残高が生じることになりますが、ペアローンを組むことで妻も住宅借入金等特別控除を受けられます。
上記の例では、妻の住宅ローン諸費用がかかることを考慮すると、ペアローンの効果はあまりないと感じるかもしれませんが、住宅ローンの借入額が4,000万円(夫:借入額2,500万円、妻:借入額1,500万円)として計算すると、妻が受けられる住宅借入金等特別控除の10年間合計額は約127万円となるため、節税額の違いは約68万円になります。夫のみの収入では予算オーバーとなりそうな物件でも、ペアローンを活用することで節税メリットを受けることができるでしょう。
住宅購入時に出産が重なってしまった場合
- (1)出産前後の収入減について
- 共働き世帯で夫と妻それぞれが住宅ローンを組むときに注意しなければならないのが、妻の出産タイミングです。産前産後休業や育児休業中は妻の年収が減るため、住宅ローンの返済資金も減ることになります。
妻が会社員の場合、申請をすることで産前産後休暇中は出産手当金が支給されますが、その支給額は、支給開始日の以前12カ月間の各標準報酬月額を平均した額の約2/3となります。また、申請をすることで育児休業期間中についても育児休業給付金が支給されますが、休業開始から半年間は休業前給与の約67%、その後は原則として子どもが1歳になるまで休業前給与の約50%の支給となります。復帰後に時短勤務を選択することになれば、収入減となる期間はさらに長引きます。 - (2)出産後に復職できない場合について
- 私自身、出産後に子どもを保育園になかなか預けることができませんでした。結婚後に夫の単独名義で1LDKのマンションを購入済みでしたので、住宅ローンの返済自体に支障はありませんでしたが、子どものためにより広い家に引っ越したいと思っても、夫1人の収入では予算が足りません。私の収入を合算したくても当時勤めていた職場に復帰できる見込みがなかったため借り入れは行えず、泣く泣く引越しをあきらめることになりました。
出産後の住宅購入を考えている場合には、妻名義での住宅ローン契約が難しくなるため、住宅購入の予算を見直す必要が出てくるでしょう。
将来の働き方の変化も視野にいれる
既にペアローンで住宅を購入した後、妻が出産育児の休暇を取ることで収入が減ってしまうため、そもそも納める所得税・住民税がない場合、住宅ローン控除の節税メリットが受けられないことになります。
また、子どもを保育園に預けられず、妻の働き方が変わり、収入減が続くと見込まれる場合でも、ローンの返済は続きますから、すでに住宅ローンを借りているなら今後のローン返済も含め、家計を見直す必要があります。ペアローンを組む場合には、将来の働き方の変化も十分に考えておきましょう。
女性向けに出産時期の金利を引き下げてくれる金融機関もあります。出産だけでなく時短勤務や転職、子どもの入園入学など、さまざまなライフイベントの発生に応じて返済額の減額を受けることができるサービスもあります。ご家庭のライフプランにあった借り入れをして、無理なく、無駄なく、節税メリットも最大限に受けられるといいですね。
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ナカムラ アイ
- 公認会計士/税理士/AFP
- 第二子出産後に会計士・税理士として独立。個人事業主から年商数億円の会社までクライアントの幅は広く、確定申告以外にも事業計画作成、助成金や融資の相談、経理サポートなども行っている。起業初期の女性向け勉強会や、メール、Skypeでのわかりやすい会計、税務相談が好評。
中村会計事務所代表
- ※ この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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