妊娠や出産で多くの医療費を支払った場合、「医療費控除」を利用することで税金の負担を軽くできることはご存じでしょうか?医療費控除を確定申告するときの必要書類が、平成29年に簡略化され、出産後の忙しい時期でも申告をしやすくなりました。
このコラムでは、医療費控除制度の仕組みや利用方法について、筆者の体験談と併せて紹介します。医療費控除を活用して家計の負担を抑え、育児用品や教育費の準備などにお金を回しましょう!
まずは基本!医療費控除の仕組みとは?
毎年1月1日~12月31日までの間に、自身や同一生計である配偶者、その他の親族のために医療費を支払った場合において、その支払った医療費が一定額を超えるときは、その医療費の額をもとに計算される医療費控除額の所得控除を受けることができます(下図参照)。
図 医療費控除額の計算式
資料:執筆者作成
医療費控除は、医療費控除額の全額が所得税や住民税から減額されるのではなく、申告をすることで税率に応じた一部の金額が還付される制度です。一般的には、所得税率が高い方ほど還付される金額も高くなると期待できるため、世帯の中で一番所得の高い方が申告をすると良いでしょう。
医療費控除の申告に備えた準備と工夫
医療費控除を申告するためには、支払った医療費や通院費から補てんされる金額(生命保険契約などから支払われる入院給付金や、健康保険から支給される高額療養費や出産育児一時金など)を差し引き、実際の自己負担額が一定金額を超える必要があります。医療費控除の対象となる医療費を漏れなく申告できるよう、早めに準備をしておくと良いでしょう。
筆者の場合、専用のクリアファイルを用意して、自分の妊婦検診や入院費、夫の医療費、薬局での薬代などの領収証をまとめて保管しておきました。通院費も忘れないように、経路と金額を家計簿にメモしておきました。また、歯の治療など、気になっていた体の不調は、できるだけ出産した年のうちに通院して完治させました。
妊娠から出産で想定外のトラブルが発生したこともあって、筆者の医療費控除額はそれなりの金額となりました。下記の表に、筆者が子どもたちを出産した年に実際に支払った医療費や、補てんされた金額の一部をご紹介しています。
※妊婦検診の公費助成や、出産一時金(直接支払制度)を利用したため、窓口で支払った医療費の自己負担金額は抑えられています。
資料:執筆者作成
医療費控除の対象となるのは、妊娠と診断されてからの定期検診や検査などの費用や通院のための交通費などです。自己都合で入院時に個室を選んだ場合の差額ベッド代や、入院の際に自費で購入した寝間着代、洗面用品代などは、医療費控除の対象外なので注意しましょう。
意外と簡単!医療費控除の申告方法
医療費控除を利用するためには、確定申告をする必要があります。平成29年分の確定申告から医療費控除を受ける場合の手続きが改正され、医療費の領収書の提出や提示が不要となり、加入している健康保険組合が発行する「医療費通知」や、「医療費控除の明細書」を添付して確定申告書を提出する方法となりました。
提出期間 | 翌年1月1日~5年間(※還付申告のみの場合) |
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提出書類 |
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提出先 | 提出時の納税地を所轄する税務署長 |
資料:執筆者作成
健康保険の対象とならない妊娠や出産に関する医療費は、保管していた領収書などをもとに医療費控除の明細書を記入する必要がありますが、健康保険の対象となる医療費は、医療費通知を添付することで、記入する手間を省くことができます。加入している健康保険組合によって、医療費通知の名称や発送時期などは異なりますので、確認してみましょう。なお、医療費の領収書(医療費通知を添付したものを除く)は、医療費控除の明細書の記載内容を確認するために提示または提出を求められる場合があり、確定申告期限の翌日から起算して5年を経過する日までは大事に保管しておきましょう。
筆者が医療費控除を申告したときは、4~5時間ほどでできました。子どもがお昼寝をしている時間に何日かに分けて確定申告書類を作成し、最寄りの税務署へ提出しました。妊娠から出産時は、働いて収入を増やすことが難しい時期だったこともあり、「家計に役立った!」という満足感がありました。
これから妊娠を予定されている方、または最近出産された方は、ぜひ医療費控除を活用して、家計の負担を軽くしてください。