転勤や住み替え、相続などで住まなくなった持ち家ができた場合、「家を貸そう!」と考える方もいるのではないでしょうか。とはいうものの、実際に家を貸す前には、「何をすればいいの?」「家賃収入の申告は必要?」「住宅ローン控除や、扶養はどうなるの?」といった疑問を解決しておきたいものです。
そこで今回は、家を貸すときに知っておきたい基礎知識や注意点について、筆者の体験談を交えてご紹介します。

特別な知識がなくてもできた!筆者の体験談
約6年前、筆者は投資目的で不動産を購入し、家を賃貸に出しました。家を貸すことは、多少の手間はかかりますが、必ずしも特別な勉強や、多大な労力が必要となるわけではありません。筆者の体験談から、家を賃貸に出すことの大まかなイメージをつかんでください。
- (1)まずは収支を試算しよう
- 家には、貸す以外にも、売却や保管といった選択肢もあります。家を賃貸に出す前に、家賃収入と支出の金額を予測し、家を賃貸に出すメリットがあるかどうかを検討してみましょう。特に、住宅ローンがある方は、ローンの支払いができそうか、試算しておくと安心ですね。
- 家賃は、賃貸情報を調べることで予測しやすくなります。インターネットなどで、賃貸に出す予定の家と似ている物件の賃貸情報を見てみましょう。
また、家を賃貸に出すときには支出も発生します。下記のように、管理費や固定資産税などのほかに、リフォーム費用や修繕費用が発生することもありますので、しっかりと確認しておきましょう。
<家を貸すときの支出の例(筆者の場合)>
- ・管理費
- ・修繕積立金
- ・固定資産税
- ・火災保険料
- ・リフォーム費用
- ・室内設備の設置や修繕費用
- ・集金代行等の業務委託費
経費の負担を少しでも減らしたい方は、自分でリフォームや修繕などを行うと良いでしょう。筆者も、初めての入居者募集時には、エアコン設置の手配や温水洗浄便座の設置、戸棚の壁紙の張り替えなどを自分で行い、リフォーム費用を抑えました。
- (2)重要ポイント!不動産会社選び
- 入居者の募集や賃貸借契約の締結については、専門知識がある不動産会社に委託するのがおすすめです。筆者が、不動産会社を選ぶときに特に重視した点は2つです。
1つ目は、入居者の募集に熱心であることです。理由は、空室期間は短い方が家賃を受け取れる期間が長くなるからです。
2つ目は、入居者の審査をしっかりと行ってくれることです。なぜなら、家賃滞納などの入居者トラブルを避けたかったからです。 - 不動産会社を選ぶときには、入居者の募集方法や審査基準について複数の会社で話を聞き、比較して決めると良いでしょう。対応が良くないと感じたら、委託する不動産会社を変える勇気を持つことも大切です。
- (3)手間なし賃貸管理
- 賃貸に出す予定の家の近所に住んでいない方や、仕事や育児で忙しい方は、入居者の募集や契約の締結だけでなく、賃貸管理も不動産会社に委託すると良いでしょう。不動産会社では、物件の紹介や契約の締結など、募集に関する部分を委託するプランだけでなく、家賃の徴収や建物の設備管理、契約更新などの賃貸管理を委託するプランを用意していることがあります。
- 筆者は、入居者の募集から賃貸管理全般までをまとめて不動産会社に委託しているため、普段やるべきことはほとんどありません。入居者募集時には、家賃設定や室内の清掃について、不動産会社の担当者と相談して決めました。その後は、入退去時や更新時に不動産会社からの報告を受けるくらいです。そのため、ほとんど手間はかかっていないと感じています。
自分でできる!家賃収入の確定申告
賃貸管理のほかにも、家賃収入を得ることで、納税や確定申告の義務が発生することがありますので注意が必要です。確定申告や納税が必要となるのは、家賃収入のほかに、会社からの給与がある方や、専業主婦で年間38万円を超える所得がある方など、家賃収入に対して所得税が発生する方です。
確定申告は、確定申告書を作成し、提出期間内に税務署へ提出する必要があります(下記表参照)。
確定申告の方法
資料:執筆者作成
確定申告は税理士に依頼することもできますが、不動産経費の負担を減らすためにも、自分で行うことをおすすめします。筆者も、毎年確定申告書を作成しています。簡易な白色申告であれば、慣れれば1~2時間で作成できます。分からないことがあれば、最寄りの税務署の窓口や電話相談センター(確定申告期は確定申告電話相談センターで相談可能)で聞くと良いでしょう。
なお、確定申告の義務がない方でも、住民税の申告が必要となる場合がありますので、お住いの市区町村に確認しましょう。
ケース別!家を貸し出すときの注意点
マイホームを貸す場合や、配偶者の扶養に入っている専業主婦(主夫)が、相続などで手に入れた家を貸す場合には、家賃収入を得ることで、予想外の問題が発生してしまうことがあります。下記の点について、よく確認しておきましょう。
- (1)マイホームは、貸す前の確認が必須!
- 住宅ローン借入先の金融機関によっては、無断でマイホームを賃貸に出すことは契約違反に該当することもあります。マイホームを貸す手続きを始める前に、金融機関に相談することをおすすめします。
- また、本人や家族がマイホームに居住していない期間は、住宅ローン控除が利用できなくなります。ただし、再びマイホームに戻ったときに住宅ローン控除の適用可能期間が残っていれば、再度適用することができます。そのためには、転居前に所定の届出書を税務署に提出しておく必要がありますので、忘れずに手続きしておきましょう。
- (2)家賃収入は扶養の判定に影響する!
- 家賃収入は扶養の判定に影響するため、扶養に入っている方は気を付ける必要があるでしょう。例えば、家賃収入から経費を引いた所得金額が年間38万円を超えた場合、配偶者の税金負担が軽くなる「配偶者控除」が適応されなくなります。
- また、一般的に家賃収入とパートタイマーなどによる収入の合計金額が年間130万円以上となる場合、扶養から外れることになり、会社で雇用されて働いているのであれば、自分で社会保険料を支払うことになります。詳しい扶養の条件は、加入している健康保険組合によって異なりますので、確認してみましょう。