パートで働く主婦です。これまで夫の社会保険の扶養から外れないよう130万円未満で働いてきました。しかし、勤務先は501人以上の会社で、秋からは「106万円の壁」に該当しそうです。パート収入を現状より増やすべきか、106万円未満に抑えるべきか悩んでいます。仕事がハードな面もあり、収入制限を外してしまうと、残業の候補などになりやすく体力的、精神的についていけるか心配です。現在と同等の収入、勤務時間を希望しているのですが、やはり106万円未満に抑えるべきでしょうか?
妻のパート収入が「106万円の壁」に該当しそう!収入は106万円未満に抑えるべき?
掲載日:2016年7月19日
東京都在住 佐藤 由恵さん (仮名)
(家計状況)
家族構成 | 夫 | 39歳会社員 |
---|---|---|
妻(相談者) | 40歳パート | |
長女 | 11歳小学5年生 | |
次女 | 8歳小学2年生 | |
長男 | 6歳保育園年長 | |
実母 | 74歳無職 |
毎月の収入 (手取り) |
夫 | 230,000円 |
---|---|---|
妻 | 100,000円 | |
その他収入 | 35,000円 | |
収入合計 | 365,000円 | |
毎月の支出 | 住居関連費 | 44,000円 |
食費 | 40,000円 | |
水道光熱費 | 18,000円 | |
通信費 | 16,000円 | |
医療費 | 2,000円 | |
雑貨・被服・ 理美容費 |
5,000円 | |
娯楽・交際費 | 10,000円 | |
小遣い(夫) | 5,000円 | |
小遣い(妻) | 10,000円 | |
小遣い(子ども) | 1,000円 | |
自動車関連費 | 32,000円 | |
保険料 | 31,000円 | |
教育費(学校) | 13,000円 | |
教育費(塾・ おけいこ他) |
36,000円 | |
保育料 | 24,000円 | |
支出合計 | 287,000円 | |
収支金額 | 78,000円 |
年間収入 (手取り) |
賞与(夫) | 1,100,000円 |
---|---|---|
賞与(妻) | 20,000円 | |
その他収入 | 30,000円 | |
収入合計 | 1,150,000円 | |
ボーナス払い | 自動車ローン | 160,000円 |
現在の貯蓄額 | 300万円 |
---|
【リフォームローン】
- 借入残高
- :250万円
- 固定金利
- :2.65%
- 返済額
- :30,000円/月
- 返済期間
- :7年
【保険の加入状況】
- 夫:
- 生命保険(収入保障型 60歳まで・月額給付金10万円)
- 月額保険料3,000円(60歳まで)
- 医療保険
- 月額保険料3,000円(終身)
- がん保険
- 月額保険料2,200円(終身)
- 学資保険
- 月額保険料7,000円、7,000円、5,000円
- (3人分 子ども18歳まで)
【夫の勤務先からの家族手当】
- 妻:
- 19,000円
(妻の収入に関係なく支給) - 子ども:
- 3,000円/人
社会保険加入による手取り収入の変化を確認。「現在」の視点と「未来」の視点で、働き方を柔軟に考えましょう。
(ファイナンシャルプランナー 小林 美智子からのアドバイス)
パートで働く奥さまの収入が、「106万円の壁」に該当しそうとのこと。佐藤さまと同じように、働き方と得られる収入との間で悩む方は少なくないと思います。社会保険加入によって収入はどれくらい減るのか、今の収入を維持するにはどんな働き方をすればよいのか、ご自身が選択できる働き方について考えてみましょう。
■「106万円の壁」とは、どんな壁?
まず、いわゆる「106万円の壁」について確認しておきましょう。平成28年10月から「短時間労働者の厚生年金保険・健康保険の適用拡大」が始まります。佐藤さまのように、これまで社会保険料の自己負担がなかった方も、勤め先や働き方によっては、年間の収入が130万円未満でも夫の社会保険の扶養から外れ、自ら厚生年金や健康保険の保険料を負担するようになります。適用対象となる要件は、【表1】のとおりです。
要件(3)に「賃金の月額が8.8万円以上」とありますが、これを12倍すると1,056,000円以上になります。ここから「106万円の壁」といわれるようになったようです。実際に適用拡大の対象となるかどうかは、年収ではなく月額賃金で判定します。
■社会保険加入で手取りは減少、カバーするには?
佐藤さまの月収は手取りで10万円とのこと。残業代や通勤手当などを含まずに賃金の月額が8.8万円以上で、その他の要件もすべて該当するなら、10月からは社会保険加入の対象になります。では、社会保険加入によって、手取りはどのくらい減るのでしょうか?
おおよその目安をみてみましょう。
ここでは、年収が127万円の方を例にして試算してみます。年収が127万円の方が社会保険に加入すると、表2のように、手取りの減少は年間で約16万円。今までと同じくらいの手取りを維持するには、年収150万円くらいまで増やす必要がありそうです。仮に時給1,000円なら、今より月に約19時間多く働くことになりそうです。
佐藤さまは、現在と同等の手取り収入、勤務時間をご希望とのこと。時給などの条件によっては、この両方を維持するのは、難しい場合もあるかもしれませんね。3人のお子さまの子育てと家事、そしてお仕事。勤務時間を増やしても続けていけるのか、実際にご自身の働き方をイメージしたうえで、無理のない選択をしてください。
■今のままでは「働き損」に?
勤務時間を増やさず、現状の働き方のまま社会保険に加入すれば、手取りは減ってしまい、いわゆる「働き損」の状態に。手取りが減ってしまうなら働き方をセーブして、社会保険に加入しないという選択肢も出てくるでしょう。
表3のように、例えば、年収を127万円から105万円に減らしても、社会保険に加入しなければ、同じくらいの手取りは維持できそうです。また、妻の年収が減ることで、夫が受けている配偶者特別控除の額は、逆に増えることになります。その分、所得税や住民税などの税負担が軽くなり、結果として世帯全体の手取りが増える可能性もあります。
では、佐藤さまもお悩みのように、「106万円の壁」が発生した場合、「働き損」になるなら、収入を下げることが正解なのでしょうか?
確かに、働く時間と得られる収入とを比較すれば、収入を下げた方が効率はよいのかもしれません。ただ、社会保険加入のメリットも忘れてはいけません。
■目先の損得だけではない「壁」の考え方
社会保険に加入すると、健康保険からは、病気やケガで働けないときに「傷病手当金」を受け取ることができます。また、厚生年金に加入することで、老後の年金を上乗せすることができます。
例えば、月収10万円の方が厚生年金に40歳から20年間加入するとしましょう。厚生年金保険料の自己負担は約215万円。これに対し、老後の年金額は約13万円増えます。仮に、65歳から85歳まで20年間年金を受給するとしたら、約258万円になります。女性の2人に1人は90歳まで生きるという時代ですから、長期的な視野で考えると、またちょっと違った見方ができるのではないでしょうか。
■「現在」と「未来」の視点で、働き方を考えましょう
佐藤さまの家計は現在、毎月78,000円の黒字。ボーナスなど年単位の収支も加えると、年間で192万円の黒字となっています。住宅にかかるコストも比較的少なく堅実な家計のため、「106万円の壁」以降、佐藤さまの手取り収入が減っても、現在の家計なら当面は心配ないと思われます。
ただ、3人のお子さまが成長するにつれ、食費やお小遣い、部活動や塾などの学校外の費用も増えていくでしょうし、お子さまの進路によっては、教育費が想定した以上にかかることもあるかもしれません。
佐藤さまは現在40歳、仮に60歳まで働くとすれば、まだ20年あります。まずは、無理なく家庭と仕事を両立できる範囲でお仕事を続け、お子さまの成長や進路に合わせて、働き方を柔軟に見直していきましょう。お子さまの進路、佐藤さまご自身のキャリアプラン、そしてご夫婦の老後などキャッシュフロー表を作成して未来の家計簿を「見える化」するのもおすすめです。ファイナンシャルプランナーに相談すると、さまざまなプランでキャッシュフロー表を作成してもらうことができますよ。ぜひ、試してみてくださいね。
なお、実際の社会保険料は、残業手当や通勤手当なども含んだ賃金で計算されます。また、税額は各種控除などによっても変わります。今回の試算は一例であり、実際の金額とは異なる場合がありますのでご了承ください。
コラム執筆者プロフィール
小林 美智子(こばやし みちこ)
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/住宅ローンアドバイザー
大手電機メーカーの経理部、会計事務所で通算20年のキャリアを経て独立。
長年の実務経験と家計を預かる主婦の視点をいかして、お金に振り回されないこころ豊かな人生の実現をサポートしている。2016年日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員担当、2017年日本FP協会「FP広報センター」スタッフ担当。
こころFP事務所 代表
コラム監修者プロフィール
柳澤 美由紀(やなぎさわ みゆき)
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
関西大学社会学部卒。大学時代に心理学を学び、リクルートグループに入社。求人広告制作業務に携わった後、1997年ファイナンシャルプランナー(FP)に転身する。
相談件数は800件以上。家計の見直し、保険相談、資産づくり(お金を増やす仕組みづくり)が得意で、ライフプランシミュレーションや実行支援も行っている。
家計アイデア工房 代表
- ※ この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
- ※ 掲載されている情報は、最新の商品・法律・税制等とは異なる場合がありますのでご注意ください。
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