岩朝 しのぶさんコラム - 第3回
語らざれば愁いなきに似たり~ありのままに
皆さん、こんにちは。
日本こども支援協会の岩朝しのぶです。
皆さんは、普段どんな日々をお過ごしですか?
楽しい事、辛い事、色々ありますよね。
生きているからこそ、起こる出来事を皆さんはどう捉え、どうやって乗り越えますか?
悲しみの種類
「悲しみには種類があるんですよ」。
昨年、『致知』(致知出版社)という雑誌で対談させていただいた髙木慶子先生が、対談の中で話してくださった“悲しみの種類”。
上智大学グリーフケア研究所の名誉所長である髙木先生。グリーフケアとは、大切な人と死別して悲嘆に暮れる人を、その悲しみから立ち直れるようそばにいて支援するケアの事をいいます。
先生に、「具体的にどんなケアをされるのですか?」と尋ねると、「大切な人を失う……失い方でケアが違います。災害や病気などの天災や自分の力が及ばない事で大切な方を失うと、それはもう深い悲しみの底に生きています。しかし、事故や殺人など、誰かの手によって大切な人を奪われると、その心は恨みや憎しみに支配されます。それは、加害者がこの世にいなくなっても続きます」と仰っていました。
天災と人災。深い悲しみと強い憎しみ。
すぐに東日本大震災で支援した子ども達の事を思い出しました。
天災は年月と共にその悲しみは深さを増していく。最初はショック状態で悲しみを感じられないのだけれど、感情が戻ってくると同時に悲しみが押し寄せる。なかなか“日日薬(ひにちぐすり)”とはいかない。もっと長い年月をかけて悲しみがぼやけるまで必死に過ごす。ところが、人災はというと失ったその時から、その先の人生のほとんどを激しい怒りや恨みに支配されてしまうという。
「だからケアの仕方が違うのです」と仰っていました。
なるほど、大切な人をそんな形で失うのならそうなってしまうかもしれない。その気持ちは察するに余りあるものです。
生きている中で一番深い悲しみは「大切な人がこの世からいなくなる」事かもしれない。
生まれた時から、必ず誰にでも訪れる最後。
変わらない風景の中で、大切な人だけがいない。
二度と会えないと思うとドッと沸き上がる悲しみ。
ふとした時に思い出す、大切な人の笑顔。その笑顔に涙が溢れる。
その、繰り返しの日々。
ある日、こんな事がありました。いつものように最寄りの駅の改札を出た時に、すれ違った人が亡くなった祖母に似ていて、思わず振り向いて姿を追った事がありました。
祖母というよりも、まるで母のように私を愛し、いつも案じてくれた祖母。最期は咽頭がんで入院していて、私がお見舞いに行くと「関西からわざわざありがとう。身体の調子はどう?」と、ふくよかだった面影もない姿でお見舞いにきた私を案じていた祖母。
数年前に亡くなっているのに、元気だった頃のふくよかな祖母に似ていた人を振り向いて目で追った自分に気が付いて、その場で泣き崩れてしまった事があります。
「こんな所にいるわけないのに」と。
語らざれば愁いなきに似たり
誰にでも悲しい出来事や辛い出来事、たくさんありますね。でも、みんなそれを乗り越えて、生きていく。愁いを抱きしめながら生きている。たとえいつも笑っている人でも。その笑顔の中にある愁いは誰にも計りしれない。人生においても、仕事でも、同じ。良い時もあれば悪い時もある。ずっと同じような時なんてない。いや、もしかしたら捉え方次第では「ずっと悪い事ばかり」と思うかもしれないし「ずっと良い事ばかり」と思っているかもしれない。
現に私は先天性の病を持ち、幼少期はずっと病院にいたけれど、それを悪い時期とは思っていない。むしろ、今の私をつくっているのは過去の自分なのだから、この価値観を持って生きている事に感謝しています。
生きている事はあたりまえじゃない。
毎日を大切に生きていく。
諦める事は簡単。けれど敢えて簡単な道を通らない。
何かを選択したのなら、その結果を後悔しない。
何が起きても受け止める。
一度きりの人生を貪欲に。楽しむ事に躊躇しない。
こんな風に欲張って生きています。
幸せのカタチ
きっと、人それぞれに幸せを感じる事が違うと思います。皆さんは、どんな事に幸せを感じますか?
自分が幸せに感じるものを知っていますか?自分で、もう気が付いていますか?
物質的なものに幸せを感じる?
楽しく感じる事は何?
美味しいと感じるものは?
綺麗と思うものは?
好きな音楽は何?
喜びを感じる時はどんな時?
素敵だと感じる時はどんな時?
感動するのはどんな時?
あなたに合う人はどんな人?
合わない人は、どんな人?
尊敬するのは、どんな人?
大切な人は、誰?
きっと、全てが人それぞれ。感じ方も価値観も多種多様。そして、自分の成長と共に視野が広がり、知識も広がり、仲間も変わり、時代時代で、趣味も関心事も移りゆくものだと思います。
人によって幸せのカタチが違う。その時々によってもカタチが変わる。
「人の数だけ幸せのカタチがあって、夫婦の数だけ夫婦のカタチがあって、それで幸せなら、それでいいのだ」と思います。
迷惑行為や犯罪にならない範囲で、他人と共存するマナーを守りながら。
ありのままのあなたで。思うがままに。
大切な人を失った悲しみを胸に思い出を抱きしめながら、その人に恥じない人生を歩みたい。
そして、いつかあなたも誰かにとっての大切な人となり、その人の思い出の中に生きていくかもしれない。
その時、その人の胸の中に笑顔を残してあげたいですね。その人が時々思い出して元気づけられるように。
幸運を受け取る準備
「幸せだなぁ」「ありがたいなぁ」と、感じる力があれば、きっと人生は豊かに思えるはず。
ネガティブな言葉を発していると本当に不幸せを引き寄せる。
ポジティブな言葉を発していると、ちゃんと良い事が引き寄せられてくる。
眉間にしわを寄せていると幸せが降りてこない。
私を長年支援してくださっている女神のような経営者がいます。その尊敬する方が、先日、こんな事を仰っていました。
「幸運は“受け取る準備”をしている人にしか降りてこない」。
私の琴線に触れるひと言でした。本当にそうですよね。準備、というのは人としてのベースの事。知識や健康、といった1日では築く事が出来ないもの。
その幸運を投げられた時に、活かせる力を付けていないといけない。
受け取る準備をしていないと、放たれても、それを“幸運”に出来ない。
もしかしたら気が付かないかもしれない。
すでにいくつか見過ごしたのかもしれない。
その日、そんな事を考えながら帰路に就きました。
皆さんは“幸運を受け取る準備”出来ていますか?
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PROFILE
岩朝 しのぶ(イワサ シノブ)
特定非営利活動法人 日本こども支援協会 代表理事
1973年宮城県生まれ。先天性内臓障害児として生を受け、16度の手術を経験。虐待防止活動、里親・社会的養護にあった子どもの自立支援、震災で親を失った子ども達や里親の支援活動を行う。主にアドボカシー活動に力を入れており、2018年には31回の講演を行い、2019年までの9年間で14,551名に伝えてきた。日本こども支援協会の代表的な活動として「“10月4日里親の日”One Love全国一斉里親制度啓発キャンペーン」を2016年から開始。2019年には67自治体、一般団体37団体、全国104カ所にて約800人規模で実施。自身も養育里親として12歳女児と暮らし、2017年NHK奈良放送局「なら この人」として特集される。
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