2015年04月14日
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先進医療にかかる費用はこれだ! 最先端治療と医療費の備え方
公的医療保険では、保険の対象の診療と対象外の診療を併用することを原則として禁止しています。併用した場合は、公的医療保険の対象分も含めて、初診にさかのぼって医療費の全額を自己負担しなければなりません。しかし、対象外の診療であっても、例外的に併用が認められている診療があり、その1つが先進医療です。先進医療とは何か、そして先進医療にかかる費用、その備え方を考えてみました。
先進医療の費用(技術料)は全額が自己負担!
特定の大学病院などで研究・開発された新しい治療法や手術法などのうち、実績を積んだものが厚生労働省によって「先進医療」と認定されます。先進医療は、公的医療保険の対象にするかどうかを評価する段階にある治療法・手術法などです。評価の結果、公的医療保険の対象に移ったり、評価対象から外れたりします。従って、先進医療と認定される技術は時とともに変わります。2021年5月1日現在の先進医療は84種類です。
先進医療に係る費用は全額を自己負担しなければなりませんが、公的医療保険との併用が認められています。先進医療以外の診察・検査・投薬・入院など一般の治療と共通する部分は、公的医療保険の対象の診療とされるので、通常の診療と同様、自己負担割合に応じた医療費負担で済みます。また、公的医療保険対象の医療費は、1カ月の自己負担額が高額になると高額療養費制度が適用され、一定以上の負担とならない仕組みになっています。
公的医療保険対象の診療と先進医療を受けた場合の費用負担について、一例を紹介します。70歳未満で標準報酬月額30万円の方が先進医療を受けたと仮定し、公的医療保険対象の診療費が100万円、別途かかる先進医療の技術料が30万円の場合の試算です。
- 公的医療保険対象の診療費 100万円
- 自己負担額(3割) 30万円
- 高額療養費制度適用後の自己負担額 9万円弱……①
(80,100円+(1,000,000円-267,000円)×1%=87,430円)※ - 先進医療の技術料 30万円……②
このように、実際の負担額は、①+②で、39万円弱となります。
高額療養費は年齢・所得により自己負担限度額が変わります。
先進医療の技術料は、種類と実施する病院などで異なります。同じ技術でも、病院ごとに技術料が違うわけです。下表は、厚生労働省の「令和2年6月30日時点における先進医療Aに係る費用」の中から、7技術をピックアップして1件当たりの平均額(各技術の先進医療費用の総額÷件数)を計算したものです。技術料は、数百万円のものもあれば、数万円のものもあります。
技術名 | 技術料 (1件当たりの平均額) |
平均入院期間 | 年間実施件数 |
---|---|---|---|
重粒子線治療 | 3,123,756円 | 8.2日 | 703件 |
陽子線治療 | 2,714,943円 | 19.1日 | 1,196件 |
腹腔鏡下スリーブ状胃切除術及び 十二指腸空腸バイパス術 |
715,657円 | 13.8日 | 9件 |
高周波切除器を用いた子宮腺筋症核出術 | 302,859円 | 10.0日 | 118件 |
MRI撮影及び超音波検査融合画像に 基づく前立腺針生検法 |
107,640円 | 2.6日 | 1,114件 |
多項目迅速ウイルスPCR法による ウイルス感染症の早期診断 |
47,423円 | 104.8日 | 61件 |
ウイルスに起因する難治性の 眼感染疾患に対する迅速診断(PCR法) |
28,239円 | 3.5日 | 483件 |
1円未満は切り捨て
資料:厚生労働省「令和2年6月30日時点における先進医療Aに係る費用」をもとに作成
先進医療の費用は先進医療特約で備えて
もし、皆さまが先進医療による治療を受けたいと思ったけれど、その費用が何百万円もかかるとしたらどうしますか?お金が用意できないことで先進医療を断念するのは、皆さま自身もご家族もつらいでしょうし、悔いを残すことになるかもしれません。そんなときの備えに適しているのが「先進医療特約」です。
先進医療特約は、その名の通り、先進医療による治療を受けたときにその技術料を保障する特約です。医療保険やがん保険は、この特約が選べるのがスタンダードです。ただ、保障内容は各社で微妙に異なります。最近の先進医療特約の傾向と選び方のポイントは下記の4つです。
1.通算限度額
先進医療特約の保険金額が技術料の実費であることは多くの会社で共通ですが、通算限度額は1,000万円、2,000万円などがあります。最近の医療保険、がん保険は2,000万円が多いようです。ご加入中の保険の先進医療特約が1,000万円でも、2,000万円の特約の方が安心だからと保険に入り直す必要はないかもしれません。必要な保障額をよく検討しましょう。
2.技術料以外の保障
技術料の実費以外に、先進医療を受ける医療機関への交通費や宿泊代などに使える一時金の保障がついている商品もあります。先進医療は特定の医療機関で行われており、その医療機関が遠方の場合は交通費もかかりますし、宿泊が必要になる場合もあるので、一時金は役に立つでしょう。ただ、全ての特約にこの保障がついているとは限らず、また、保障があってもそれほど高額ではない可能性もあるので、かかった費用の全てを必ず賄えるとは考えない方がよいでしょう。
3.保障期間
終身保障と10年などの一定期間ごとに更新していく商品があります。前者は特約保険料はずっと変わりませんが、後者は更新ごとに変わる可能性があります。
4.特約保険金の支払われ方
先進医療技術料の請求書で支払われる場合と、領収書で支払われる場合があります。前者は、技術料の立て替えの必要がなく、何百万円もかかる高額な治療を受けるときには助かります。後者はいったん立て替えが必要になります。
先進医療特約は、あくまで特約なので、契約する際は主契約の保障内容を優先してください。
なお、先進医療特約のついた医療保険に加入しているのであれば、ほかのがん保険に加入する際、先進医療特約をつける必要はないでしょう。医療保険の先進医療特約は、先進医療全般をカバーしているので、がん治療で受ける先進医療も保障の対象です。
- 柳澤 美由紀(やなぎさわ みゆき)
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CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
関西大学社会学部卒。大学時代に心理学を学び、リクルートグループに入社。求人広告制作業務に携わった後、1997年ファイナンシャルプランナー(FP)に転身する。
相談件数は800件以上。家計の見直し、保険相談、資産づくり(お金を増やす仕組みづくり)が得意で、ライフプランシミュレーションや実行支援も行っている。
家計アイデア工房 代表
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