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2015年02月03日

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「子ども・子育て支援新制度」で、子育て世代の暮らしはどう変わる?

小さいお子さまを持つ保護者にとって、今最も関心が高いことの一つ、それが平成27年4月に本格スタートする「子ども・子育て支援新制度」ではないでしょうか。

この制度は、少子化問題を解消するため子育てしやすい国を目指し、平成24年8月に成立した「子ども・子育て支援法」と、それに関連する子ども・子育て関連3法に基づく制度のことをいいます。

子ども・子育て支援新制度が目指すもの

この制度において国は、「量」と「質」の両面から、もっと効果的な子育て支援を目指しています。

①支援の「量」を拡充

お子さまの年齢・親の就労状況に応じて、受けられる保育・教育の選択肢を増やします。そのための主な施策として、2006年に始まったものの、普及が伸び悩んでいる「認定こども園」を改善して、普及を図ります。

また、待機児童問題の解消に向けて、平成29年度までに新たに約40万人分の保育の受け皿を確保するとしています。具体的には、待機児童が多い0~2歳のお子さまを対象にした「地域型保育」を新設し、市町村の認可事業とすることや、認可を目指す認可外保育施設への支援などの取り組みが行われています。

②支援の「質」を向上

子どもたちにより目が行き届くように、幼稚園や保育所、認定こども園等の職員を子どもの人数に対して増やす、また、放課後児童クラブ(学童保育)の対象年齢を小学校6年生までに引き上げ、保育時間も遅くして、いわゆる「小1の壁」「小4の壁」(※)の解消を図ります。

※「小1の壁」とは、保育所では延長保育ができていたが、小学校に入学すると、保育所に比べて保育時間が短くなり、保護者の就労に影響することを指します。全国の約5割の自治体で、学童保育の保育時間は「18時まで」となっています。そのため、小学校入学により、お子さまが自宅で留守番をする時間が生じることに、不安を持つ保護者がとても多いのです。

また、「小4の壁」とは、学童保育の対象年齢を「小3まで」としている自治体が約5割もあり、小学4年生になると、下校後の習い事を入れたり、別の預け先を探したりなど、対策が必要になっていることを指します。

新制度で増える教育・保育の場

それでは、新制度がスタートして、保護者が選ぶことができる教育・保育の場には、どのようなものがあるのでしょうか。特徴をまとめます。

表1 新制度スタート後の教育・保育の場

表1 新制度スタート後の教育・保育の場
施設名 対象年齢 どんなところ?
幼稚園 3~5歳 小学校以降の教育の基礎をつくるための幼児期の教育を行う学校
保育所 0~5歳 就労などのため、家庭で保育のできない保護者に代わって保育する施設
認定
こども園
0~5歳 教育と保育を一体的に行う施設
  • 保護者の働いている状況に関わりなく、3~5歳の子どもであれば、教育・保育を一緒に受けられる
  • 保護者が仕事を始めたり辞めたりしても、転園しないで済む
  • 子育て支援の場が用意されていて、園に通っていない子どもの家庭も、子育て相談や親子の交流の場などに参加できる
地域型
保育
(新設)
0~2歳 20人未満の少人数の単位で、きめ細やかな保育を行う施設で、4つのタイプがある
  1. ①家庭的保育(保育ママ)…定員5人以下を対象に、きめ細やかな保育
  2. ②小規模保育…定員6~19人を対象に、家庭的保育に近い雰囲気のもと、きめ細やかな保育
  3. ③事業所内保育…会社の事業所の保育施設などで、従業員の子どもと地域の子どもを一緒に保育
  4. ④居宅訪問型保育…保護者の自宅で1対1で行う保育(障害・疾患などで個別のケアが必要な場合や、保育施設がない地域など)

資料:子ども・子育て支援新制度「なるほどBOOK」(平成26年9月改訂版)/
内閣府・文部科学省・厚生労働省をもとに執筆者作成

新制度が子育て世代の暮らしに与える影響は?

新制度がスタートしても、施設によっては新制度に移行しない場合もあります。新制度に移行する施設に子どもを預ける場合、これまでと変わる主なことをみていきましょう。

保育利用のための認定を受ければ、原則全員が利用できる

現行制度では、たとえば保育所の場合、希望の施設について自治体に申し込むと、自治体が「当否」を決めるのが一般的です。新制度ではこの点が大きく変わり、利用したい人が「保育の必要性」の認定を受け、認定されれば、原則全員が利用できます。

表2 「保育の必要性」の3つの認定区分

表2 「保育の必要性」の3つの認定区分
認定区分 対象者 利用先
1号認定 教育標準
時間認定
子どもが満3歳以上で、幼稚園などでの教育を希望する場合 幼稚園、認定こども園
2号認定 満3歳以上・
保育認定
子どもが満3歳以上で、「保育を必要とする事由」(表3参照)に該当し、保育所などでの保育を希望する場合 保育所、認定こども園
3号認定 満3歳未満・
保育認定
子どもが満3歳未満で、「保育を必要とする事由」(表3参照)に該当し、保育所などでの保育を希望する場合 保育所、認定こども園、地域型保育(家庭的保育・小規模保育など)

資料:子ども・子育て支援新制度「なるほどBOOK」(平成26年9月改訂版)/
内閣府・文部科学省・厚生労働省をもとに執筆者作成

新制度に移行しない幼稚園や保育所を利用する場合は、認定を受ける必要はありません。

これまで公的保育が受けられなかった、「夜間労働」「短時間就労」「求職活動中」などの場合でも、公的保育が受けられる

保育所に預けることができる2号認定・3号認定を受けるための条件「保育を必要とする事由」が、現行の条件であった「保育に欠ける事由」から大きく変わります。

表3 保育の必要性の認定に係る「事由」について

表3 保育の必要性の認定に係る「事由」について
現行制度
<保育に欠ける事由>
○以下のいずれかの事由に該当し、かつ、同居の親族その他の者が当該児童を保育することができないと認められること
  • 昼間労働することを常態としていること(就労)
  • 妊娠中であるか又は出産後間がないこと(妊娠、出産)
  • 疾病にかかり、若しくは負傷し、又は精神若しくは身体に障害を有していること(保護者の疾病、障害)
  • 同居の親族を常時介護していること(同居親族の介護)
  • 震災、風水害、火災その他の災害の復旧に当たっていること(災害復旧)
  • 前各号に類する状態にあること(その他)

資料:児童福祉法施行令をもとに執筆者作成

新制度<保育を必要とする事由>
○以下のいずれかの事由に該当すること
  • 就労(フルタイム・パートタイム・夜間・自宅業務など、すべての就労を含む)
  • 妊娠、出産
  • 保護者の疾病、障害
  • 同居又は長期入院等している親族の介護・看護
  • 災害復旧
  • 求職活動(起業準備を含む)
  • 就学(職業訓練校等における職業訓練を含む)
  • 虐待やDVのおそれがあること
  • 育児休業取得中に、既に保育を利用している子どもがいて継続利用が必要であること
  • その他、上記に類する状態として市町村が認める場合
※同居の親族が当該児童を保育することができる場合、利用の優先度を調整される場合がある

資料:子ども・子育て支援新制度「なるほどBOOK」(平成26年9月改訂版)/
内閣府・文部科学省・厚生労働省をもとに執筆者作成

新制度では、保護者の多様な働き方に対応して、公的保育を受けられるようになります。また、現行制度では各市町村によって対応が異なっていた、「求職活動」「就学」「虐待やDVのおそれ」などについても、どの地域でも保育を必要とする事由とされました。

また、新制度では保育所などでの保育を希望する場合の2号認定・3号認定を受けるための考慮される項目に、「保育の必要量の認定」が導入されます。

これによって、これまでは保育に欠ける事由に当てはまらなかった、短時間就労のパートタイマーの方も認定を受けることができ、公的保育を受けられるようになります。

私立幼稚園(新制度に移行する施設の場合)などの補助金がなくなる!?

現行制度では、私立幼稚園に通う場合、所得に応じて「幼稚園就園奨励費補助金」の支給を受けられますが、新制度においてはこの補助金の適用がなくなります。

しかし、私立幼稚園の保育料額の全国平均額から、利用者の所得に応じた幼稚園就園奨励費補助金額を差し引いて保育料を設定することになります。つまり、一旦保育料を払ってキャッシュバックを受けている現行制度に対して、新制度では利用者の一時負担が軽減され、入園当初から保育料が安く抑えられるようになるということです。

保育料は所得に応じて変わる

保育所だけでなく、新制度に移行した場合の幼稚園や認定こども園も含めて、保育料の上限額は、所得の階層ごとに設定されます。保育所、認定こども園、小規模保育の場合は、保育が必要な時間の長さによって、上限金額も異なります(「保育標準時間(11時間)」と「保育短時間(8時間)」の2つの区分に分けられます)。

また、お子さまが2人以上いる場合、2人目以降の保育料が減額されます。

表4 多子世帯の保育料の軽減

表4 多子世帯の保育料の軽減
施設 軽減措置を受けられる範囲 第1子 第2子 第3子以降
幼稚園・認定こども園(1号認定) 3歳から小学校3年までの範囲内に、2人以上いる場合 全額負担 半額負担 無料
保育所・小規模保育・認定こども園
(2・3号認定)
小学校就学前の範囲内に、2人以上いる場合

資料:子ども・子育て支援新制度「なるほどBOOK」(平成26年9月改訂版)/
内閣府・文部科学省・厚生労働省をもとに執筆者作成

子育て家庭のためのサポートが充実!

保護者が働いていない場合でも、お子さまを預けられる場所が増えるように「一時預かり」事業が拡充されます。また、子育てに関する不安を払拭できるように、親子の交流や相談ができる場所も増やしていく方針です。

前述しましたが、放課後児童クラブの質も向上し、預けられる年齢も小学3年生から小学6年生までに引き上げられる予定です。

その他、病児保育なども利用しやすくなるよう、各市町村が中心となって進めます。

消費税増税が先送りとなり、新制度のスタートは?

平成27年4月スタートのこの新制度の実施のために、消費税増税の増収分から毎年7,000億円程度が充てられる予定でした。

すでに昨秋から今年の保育所申し込みは始まっており、新しい制度のスタートを前にして、増税先送りや解散総選挙があり、該当される保護者の皆さんはさぞかしやきもきされたのではないでしょうか。

しかし、自治体でも既に準備は始まっており、予定通り制度はスタートするはずです。

待機児童がなくなり、誰もが柔軟に働き方・生き方を選択できる世の中になるべく、この制度が形式的なものにならず、活気あるままスムーズに施行されることを願います。

鈴木 さや子の写真 鈴木 さや子の写真

コラム執筆者プロフィール

鈴木 さや子(すずき さやこ)
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/DCプランナー1級/キャリアコンサルタント(国家資格)

家族が笑顔になれるための生活に役立つお金の知識を、主に女性向けに、セミナーやコラム記事などを通じて情報発信。保険などの商品を一切販売しないファイナンシャルプランナーとして活動中。専門は教育費・ライフプラン・保険・マネー&キャリア教育・確定拠出年金。企業講演の他、小・中学校や地域コミュニティなどでの講演やワークショップなど、保護者や親子向けイベントも行っている。中学生・高校生の母。
(株)ライフヴェーラ代表取締役/mamaTanoマネーサロン代表

柳澤 美由紀の写真 柳澤 美由紀の写真

コラム監修者プロフィール

柳澤 美由紀(やなぎさわ みゆき)
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

関西大学社会学部卒。大学時代に心理学を学び、リクルートグループに入社。求人広告制作業務に携わった後、1997年ファイナンシャルプランナー(FP)に転身する。
相談件数は800件以上。家計の見直し、保険相談、資産づくり(お金を増やす仕組みづくり)が得意で、ライフプランシミュレーションや実行支援も行っている。

家計アイデア工房 代表

  • この記載内容は、当社とは直接関係のない独立したファイナンシャルプランナーの見解です。
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